町をダイナマイトで破壊! ドラマ『大草原の小さな家』の衝撃的な最終回とは
アメリカ西部開拓時代を生きた家族の愛を描いた『大草原の小さな家』。農家の主婦だったアメリカ人作家、ローラ・インガルス・ワイルダーの自叙伝的小説をドラマ化したもので、1974年から1983年までに9シーズンにわたって製作された。ドラマは世界中で大ヒット、今なお“どこかで必ず再放送されている”と言われているほどの人気を誇っている。
本作の中心となるインガルス家の大黒柱、知的で優しく頼もしい父親のチャールズを演じたのはマイケル・ランドン。出演だけでなく、企画から制作総指揮、脚本、監督まで務めた、文字通りこのドラマの大黒柱だ。
1959年から1973年まで続いた大ヒットドラマ『ボナンザ』でスターとなったマイケルは、同作で脚本や演出も担当。ドラマ製作の経験を積み、『ボナンザ』終了後には、次回作の構想について「人間関係にまつわる問題や、人が積み上げていく経験を描く作品をつくりたい」と語っていた。
そんなある日、マイケルが帰宅すると娘がローラ・インガルス・ワイルダーの『小さな家』シリーズを読みふけっていた。さらに当時の妻が「この本は少女時代からの愛読書だった」と語りかけてきた。マイケルがテレビ局のNBCに『大草原の小さな家』の企画書を持って行ったのは、この直後のことだ。
物語の舞台はミネソタ州のウォルナット・グローブという小さな町。8シーズンで終了する予定だったが、ファンからの要望に応える形でインガルス家のその後を描いた『新・大草原の小さな家』を製作する。ただし、このドラマはシーズン1のみで打ち切られ、その後、シーズン9として扱われるようになった。
シリーズの実質的な最終回となったのは、1984年にテレビスペシャルとして製作された『最後の別れ』。脚本・監督をマイケル・ランドンが務めているのだが、なんとウォルナット・グローブの町をダイナマイトで木っ端微塵に爆破するというショッキングなものだった。
有給休暇を取り、久しぶりにウォルナット・グローブを訪ねたチャールズ夫妻。ところが、不動産会社社長のラシターは、日曜礼拝に集った人々に、町のすべての土地の所有権は自分の会社にあると告げる。
対立する町の人々とラシター一味。ラシターは軍隊まで動員して立ち退きを迫る。陽気なエドワーズおじさん(ヴィクター・フレンチ)が最後に言う。「よし決めた。ラシターが足で踏みにじる前に、せめてわしたちで町を葬ろう!」。人々は町の建物にダイナマイトを仕掛け、本当に爆破! 次々と吹っ飛ばされる町の建物。すさまじい迫力だ。
「私たちの土地や建物を盗むなんて許せない!」
『大草原の小さな家』の撮影セットが設けられていたカリフォルニア州の牧場は、とある企業の所有地であり、番組終了後は元の状態に戻して返却するという契約だった。NBCはいつもどおりの方法で解体する予定だったが、マイケルは「その作業と同等の予算で、建物を破壊するシナリオを書く」と提案、これをNBCが了承した。
マイケルには、番組を打ち切ったNBCへの報復と、勝手に建物をほかのドラマやCMに使われたくないという思いがあったと言われている。打ち切りは低視聴率が理由だったが、実際には同シーズンのNBC全ドラマの中での視聴率は3位だった。マイケルの親友だったヴィクター・フレンチは視聴者にNBCへ抗議の手紙を送るように呼びかけている。
「私たちの土地や建物を盗むなんて許せない! ラシターたちがこの家を使うなんて許せない! あたしたちの家よ! もう悔しくて、考えるほど腹がたつ!」。このローラのセリフは、マイケルの胸の内をそのまま表しているようだ。
撮影の最終日、スタッフ・キャスト総勢200人の前で爆破が行われた。親しんだ建物が木っ端微塵になるのを目の当たりにした関係者全員が涙を流したという。なかでもローラ役のメリッサ・ギルバートはマイケルにしがみつながら「わからない、わからないわ! だってこれがわたしの人生のすべてだったのよ!」と号泣。取り乱すメリッサにマイケルは「怖がることはないよ。君にとってこれが終わりじゃないのだから。これは始まりに過ぎないのだよ」と優しく語りかけた。
マイケルは1991年、54歳のときにガンのため死去。マイケルの葬儀にはアメリカ元大統領のロナルド・レーガン夫妻ら500人が参列した。衝撃的な最終回を含め、マイケルの思い入れが詰まった『大草原の小さな家』を、この機会に観直してみてはどうだろうか?
参考:『大草原の小さな家』DVDコレクション Vol.1 Vol.6 Vol.71
Writer:大山くまお
(提供:ヨムミル!Online)
ドラマの大黒柱、マイケル・ランドン
本作の中心となるインガルス家の大黒柱、知的で優しく頼もしい父親のチャールズを演じたのはマイケル・ランドン。出演だけでなく、企画から制作総指揮、脚本、監督まで務めた、文字通りこのドラマの大黒柱だ。
そんなある日、マイケルが帰宅すると娘がローラ・インガルス・ワイルダーの『小さな家』シリーズを読みふけっていた。さらに当時の妻が「この本は少女時代からの愛読書だった」と語りかけてきた。マイケルがテレビ局のNBCに『大草原の小さな家』の企画書を持って行ったのは、この直後のことだ。
不動産屋に乗っ取られたウォルナット・グローブ
物語の舞台はミネソタ州のウォルナット・グローブという小さな町。8シーズンで終了する予定だったが、ファンからの要望に応える形でインガルス家のその後を描いた『新・大草原の小さな家』を製作する。ただし、このドラマはシーズン1のみで打ち切られ、その後、シーズン9として扱われるようになった。
シリーズの実質的な最終回となったのは、1984年にテレビスペシャルとして製作された『最後の別れ』。脚本・監督をマイケル・ランドンが務めているのだが、なんとウォルナット・グローブの町をダイナマイトで木っ端微塵に爆破するというショッキングなものだった。
有給休暇を取り、久しぶりにウォルナット・グローブを訪ねたチャールズ夫妻。ところが、不動産会社社長のラシターは、日曜礼拝に集った人々に、町のすべての土地の所有権は自分の会社にあると告げる。
対立する町の人々とラシター一味。ラシターは軍隊まで動員して立ち退きを迫る。陽気なエドワーズおじさん(ヴィクター・フレンチ)が最後に言う。「よし決めた。ラシターが足で踏みにじる前に、せめてわしたちで町を葬ろう!」。人々は町の建物にダイナマイトを仕掛け、本当に爆破! 次々と吹っ飛ばされる町の建物。すさまじい迫力だ。
「私たちの土地や建物を盗むなんて許せない!」
『大草原の小さな家』の撮影セットが設けられていたカリフォルニア州の牧場は、とある企業の所有地であり、番組終了後は元の状態に戻して返却するという契約だった。NBCはいつもどおりの方法で解体する予定だったが、マイケルは「その作業と同等の予算で、建物を破壊するシナリオを書く」と提案、これをNBCが了承した。
マイケルには、番組を打ち切ったNBCへの報復と、勝手に建物をほかのドラマやCMに使われたくないという思いがあったと言われている。打ち切りは低視聴率が理由だったが、実際には同シーズンのNBC全ドラマの中での視聴率は3位だった。マイケルの親友だったヴィクター・フレンチは視聴者にNBCへ抗議の手紙を送るように呼びかけている。
「私たちの土地や建物を盗むなんて許せない! ラシターたちがこの家を使うなんて許せない! あたしたちの家よ! もう悔しくて、考えるほど腹がたつ!」。このローラのセリフは、マイケルの胸の内をそのまま表しているようだ。
撮影の最終日、スタッフ・キャスト総勢200人の前で爆破が行われた。親しんだ建物が木っ端微塵になるのを目の当たりにした関係者全員が涙を流したという。なかでもローラ役のメリッサ・ギルバートはマイケルにしがみつながら「わからない、わからないわ! だってこれがわたしの人生のすべてだったのよ!」と号泣。取り乱すメリッサにマイケルは「怖がることはないよ。君にとってこれが終わりじゃないのだから。これは始まりに過ぎないのだよ」と優しく語りかけた。
マイケルは1991年、54歳のときにガンのため死去。マイケルの葬儀にはアメリカ元大統領のロナルド・レーガン夫妻ら500人が参列した。衝撃的な最終回を含め、マイケルの思い入れが詰まった『大草原の小さな家』を、この機会に観直してみてはどうだろうか?
参考:『大草原の小さな家』DVDコレクション Vol.1 Vol.6 Vol.71
Writer:大山くまお
(提供:ヨムミル!Online)