いったい誰が言い出したのか定かではありませんが、日本人バックパッカーのあいだで「世界三大ウザい国」と呼ばれている国のひとつがモロッコです。ちなみにあとの2ヵ国はインドとエジプト。

北はタンジェから南はエッサウィラまで、モロッコ10都市を周遊した筆者が、本当にモロッコはそれほどウザい国なのか検証してみました。

・そもそもモロッコってどんな国?

モロッコ(正式にはモロッコ王国)は北アフリカに位置する国で、面積は44万6000平方キロメートル(日本の約1.2倍)、人口は約3400万人。チュニジア・アルジェリアと合わせて「マグレブ三国」と呼ばれます。

アフリカ大陸に位置するとはいっても、民族構成はアラブ人が65パーセント、ベルベル人が30パーセント、その他5パーセントで、国民のほとんどがイスラム教を信仰しています。

サブサハラ(サハラ砂漠以南)の国々とは、文化的にも民族的にも大きく異なっていて、広い意味での中東に含めて語られることが少なくありません。

地中海に面したリゾート地から、4000メートル級の峰が連なるオート・アトラスに黄金色の砂漠、迷路のようなメディナ(旧市街)など多種多様な風景が魅力で、アフリカ大陸ではもっとも旅行がしやすい国のひとつです。

モロッコが「ウザい」と言われるわけ

モロッコが日本人バックパッカーのあいだで「ウザい国」呼ばわりされるおもな理由は、過剰なまでになれなれしい、何かとお金(チップ)を要求される、客引きが強引など。

「自分の家族が大阪に住んでいる」などと言って親日家を装ったモロッコ人があちこち案内してくれたと思ったら最後に法外なガイド料を請求された、あるいは絨毯などの高額品の購入を強引に勧められたなどといった体験談は後を絶ちません。

・「ウザい」と思う瞬間があるのは否めない

モロッコで特に外国人観光客慣れした人が多いのが、マラケシュとフェズ。マラケシュ名物のフナ広場の屋台の客引きはかなり強引ですし、フェズのメディナ(旧市街)を歩いていると、「タンネリ、タンネリ(なめし革加工場のこと)」と何度も声がかかります。そして「無料だから」と言われてタンネリが見渡せるお店のテラスに上がったら最後、そのお店で何も買わなければ結局チップを要求されることに・・・

これといったトラブルがなくても、「ジャパン、チャイナ」「ニーハオ、こんにちは」「ありがとう」「ニホンジンデスカ」「ビンボープライス」など、四方八方から色々な声がかかるので、特に街歩きに疲れてしまったときなどは「ウザい」と感じてしまう瞬間があるのは否めません。

「ウザい」と感じるかどうかは、受け取る側の感じ方やコンディションにも大きく左右されますが、日本人がモロッコを旅すれば一度は「ウザい」と感じてしまう人が多数を占めることでしょう。

・超定番観光地以外では拍子抜けするほど穏やかなことも

とはいえ、どこに行っても同じ状況だというわけではありません。たとえば、南部の港町エッサウィラや首都ラバト、古都メクネス、青い町シャウエンなどでは、やはり色々な声かけや客引きはあるものの、マラケシュに比べるとずっとマイルドです。

「ハロー、こんにちは、ニーハオ」「ルック」などと言われるくらいで、「ノーサンキュー」などと返せば、それ以上しつこく何かを見たり買ったりすることを勧められるようなことはあまりありません。油断は禁物とはいえ、これらの街ではガイド料やチップを目当てに外国人観光客に近づこうとする人も少ない印象。

マラケシュを後にしてエッサウィラに到着したとき、そのあまりの穏やかさに拍子抜けせずにはいられませんでした。

・総合的に見れば純粋に親切な人が多い

道に迷ったりした場合、筆者は基本的にはお店のスタッフや道行く人などに自分から声をかけて尋ねるようにしていました。目的地やその近くまで実際に連れて行ってもらったことも何度かありますが、一度たりともチップを要求されるようなことはありませんでした。

キョロキョロしながら街を歩いていると、たいてい誰かが「迷ったのか」「どこへ行きたいんだ」と声をかけてくれます。

マラケシュやフェズのメディナなど、観光客ずれした人が多い場所では自分から声をかけてくる人には気を付ける必要がありますが、実際のところは単なる親切心で声をかけてくれる人が多数。モロッコには、困っている旅行者を放っておけない人が多いのです。

・「興味をもってもらえる」という嬉しさ

日本人にとっては、時に過剰なほどにフレンドリーに感じられることもあるモロッコの人々ですが、声をかけられるということは、自分の存在を受け止めてくれているということ。

慣れない異国の地を旅するうえで、まったく無関心でいられたり歓迎されなかったりすることに比べたら、外国人である自分に興味を持って声をかけてきてくれることは喜ばしいことだと思いませんか。

・結局、モロッコはウザい国なのか?

日本人から見ると「他人と適度な距離を保つ」という文化があまりないように見えるモロッコでは、私たちの想像を超えた言動をとる人が大勢います。

また、モロッコでは基本的に外国人旅行者は「お金持ち」と見られているので、予想外の形でお金を請求されて驚いたり不快な思いをしたりする場面もあるかもしれません。

しかし、超定番の観光地から日本人があまり訪れないような街まで、モロッコを周遊した筆者の結論は、「モロッコにはウザい人よりも純粋に親切でフレンドリーな人のほうがずっとが多い」です。実際、イラッとするような瞬間もなくはなかったのですが、旅を終えてみて印象に残っているのは、モロッコの人々の優しさや人懐っこさ。

「世界三大ウザい国」という評価が、ネガティブな意味をもつものだとしたら、筆者は「モロッコはウザい国ではない」と言いたいところです。

ただし、モロッコを「ウザい国」と言う人のなかには、実は「ウザいけどそこが面白い」「ウザさがむしろクセになる」という人も少なくないのです。

「世界三大ウザい国」というのは必ずしも不名誉な称号というわけではなく、それだけ旅行者に強烈なインパクトを残す個性的な国である証とも言えそうです。

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