ブログツールMTの最新バージョン7、開発者向けプレビュー版のダウンロードが始まる:ブログからコンテンツパブリッシングサービスへ
バージョン7の正式リリースに先駆け開発者向けプレビュー版のダウンロードが始まり、イベントではその新バージョンの目玉機能や今後の開発スケジュールなどが紹介された。
Webの世界は、2000年頃に登場したブログによって、つながりを個別の記事単位ごとに持たせることができるようになった。
個別の記事に付与されたパーマネントリンクを用いて、参照先を示したり、トラックバックを用いて言及したことを先方に通知したり、と容易かつ迅速に個々がつながれるようになった。この流れはWeb2.0と呼ばれ、のちにソーシャルメディアの誕生につながっている。
ブログツールの先駆としてMovable Type(以下、MT)が登場したのは2001年。
2009年リリースのMT5までは純粋なブログツールとして、
・豊富なプラグインモジュールを利用することにより(プログラミング不要で)機能拡張が容易なこと
が最大の特色だった。
2013年のバージョン6からブログ内のデータに外部プログラムからアクセスするためのData APIが導入され、Webアプリケーションの流れに対応した。
そして、次のバージョン7では、従来のブログを越える概念を取り入れている。
それが、「記事」よりも細かい単位でとらえるための新たな「コンテンツタイプ」という考え方だ。1つの記事を構成するそれぞれの要素をコンテンツタイプとして定義し、それらを組み合わせて記事を作成・更新できるというもの。
たとえば、イベント告知の場合、
たいていは
・開催日時
・会場
・説明文
・講師
などの情報が必要になる。
それぞれをコンテンツタイプとして定義することで再利用性は向上する。
講師情報の更新はイベント立案者が、開催日時・会場・説明文などは管理部門が更新というように、作業の分離も可能だ。

コンテンツタイプ設計の例(プレスリリースより)
さらに、「ワークフロー」機能を搭載する予定だ。これは複数人でも編集管理(更新)しやすい環境を提供するもの。
たとえば、
・ライターが原稿を書く
・編集が校正する
・関係部門への確認のためにプレビューを共有する
・修正を確認する
・承認者が記事をパブリッシュする
といった具合に、複数人での運用をよりスムーズに行うことができる。
修正箇所の差分を取れるので、ほぼ、MTの中だけで一連の流れが完結する。
個人ユーザーが用いるブログツールというだけではなく、コンテンツパブリッシングサービス向けのツールとして大きく舵を切った印象だ。
実際、現在のMTのメインターゲットは、趣味のユーザーというより、Web制作のプロだ。
デザイナー、エンジニアなど、自社あるいは他社のサイト制作を受注するクリエイター層になる。
では、個人ユーザーは切り捨てなのかというと、そうではなく、Webサービス型CMSとしてすでに展開されている「MovableType.net」(2015年2月リリース)が請け負うという形になる。
こちらは、サーバ領域と同時にMTを利用できるもので、面倒なサーバ管理業務やバージョンアップ作業なしですぐにMTでブログを始めることができる。
このMovableType.netはときに実験場的な役割も果たす。
実際、ワークフロー機能はMovableType.netに先に導入される(近日中の搭載を予定。MTでは、2018年4月の正式リリース後のバージョンアップ時に搭載されるという)。
なお、販売形態も従来の「パッケージ+サポート料」から「ライセンス販売」へと大きく改訂される。
正式リリースは2018年4月(ソフトウェア版とクラウド版同時)、2018年1月にベータ版が公開される予定だ。
デベロッパープレビューの詳細と利用方法については以下のページにある。
・ Movable Type 7 デベロッパープレビュー提供ページ
またMTを開発販売するシックス・アパート社は、テレワークという働き方でも、今、注目されている。
シックス・アパート社が「SAWS」というテレワークのシステムを導入したのは2016年8月、行政が大きく「働きやすさ改革」に乗り出す前のことだ。
テレビ東京の番組「WBS」でも大きく取り上げられたが、その特徴は、
・全社員が対象であること
テレワークのような自由な働き方は開発、クリエイティブ部門といった見なしの裁量労働が適用される部署を対象にすることが多い。しかし、シックス・アパート社では総務などの管理部門も含め、全社員が対象となる。
出社しなければならないと決められているわけではないが、多くの社員が月に1回程度は何らかの要件で出社するという状態だ。これは、社員がどこに住もうと就業が可能というレベルだ。
限られたリソースで少しでも早く開発を進めるためという理由であったというが、結果的に分業ワークフローへの意識が高まったともいえるのではないだろうか。
大内孝子