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マツダの次世代ガソリンエンジン SKYACTIV-X搭載車を試乗する

先頃、発表されて大きな反響を呼んだ、マツダのSKYACTIV-Xエンジンを搭載した試作車に実際に試乗することが出来た。試乗したのは、マツダの美祢試験場である。

ここはかって美祢サーキットとして、各種レースを行っていた場所であり、私も20年ほど前に、フェラーリチャレンジ・レースなどで訪れており、当時、インフィールドのヘアピン・コーナーの攻略に苦労したことを懐かしく思い出した。

さて、マツダの新技術は、近年SKYACTIVという総称でまとめられ、2010年に新技術を初めて発表して以来、発表する度に、毎回、え、そんなことができるの? と思うような常識を覆す内容が多く、しかも、それが確実に実現されてしまうのだから、驚くと同時に、マツダの技術陣の物事を見極める確かさや、粘り強さ、などを強く感じるのだが、果たして今回はどうだったのだろうか。

一言で言えば、今回のSKYACTIV-Xのエンジンのお題目は、ディーゼル・エンジン並みの燃費の良さでありながら、通常のガソリンエンジン以上の瞬発性や走行フィールが実現できる、ということであるが、そんな夢のようなスペックを実現するカギは、リーンバーンである。

通常の理想の空燃比は、14.7であるが、その倍の30ぐらいまで引き上げて、圧縮着火すると、非常に効果的であることはこれまで実証されていたが、いざ、それを現実の状況で実現しようとすると難しく、それ以上の開発がなされていなかった。

しかし、マツダはそれにチャレンジし、スパークプラグを装着して点火を調整することにより、制御を可能にした、ということである。この辺りの詳細な説明は、佐野弘宗君が別稿で解説をしているので読んで頂きたいが、実際に試乗してみると、予想以上の完成度であった。

市販車のデミオにまず乗り、その後、試作車に乗る、という順番でテストドライブを行ったのだが、スタート時のピックアップも良く、高速域の伸びもとても良い。

なぜ、既存の内燃機関の熟成に注力するのか?

唯一、まだ詰め切れていない点としては、中速域の2500rpmあたりで、アクセル操作に対しややもたつきが感じられていたことであるが、これは2019年の発売時期までには当然解決できるだろう。実際の燃費がどの程度になるのかは、計測できなかったが、おそらくかなり良好になると思われる。

世界の潮流が、EVへと大きく舵を切っているように見える昨今、マツダが、なぜ、このような既存の内燃機関の更なる熟成へ力を注いているのだろうか。

それは、トータルのCO2削減を目指す場合、EVに必要な電気を作り出すことから始まる全ての排出量がEVよりも少なければ、内燃機関の存在はまだ有力であり、実際に利便性の点からも有利である。

実際、2035年時点でも、84%を内燃機関のクルマが占める、と予想されているのだ。マツダの目標は明確だ。あらゆる可能性は排除せず、既存の技術も極限まで磨いてゆきながら、EVなどの新技術にもチャレンジしてゆく、そして、その根底に常に流れるのは、あくまでも、クルマを愛し、楽しむ、人とクルマのかかわりを濃密にしてゆく、すなわち人馬一体という精神を実現してゆくということなのだ。

この技術と同時に、今年の東京モーターショーの発表内容も公表されたが、クルマのあらゆるところに、既存の常識を覆す技術を導入する姿勢は本当に頼もしい。

往年の名車、トヨタスポーツ800に乗る

これも先日、トヨタのスポーツグレードの新しいシリーズ、GRの発表があったが、それに先立つ8月の末、某サーキットで事前試乗会があった。驚いたことに、その際、何と、1966年の鈴鹿500kmレースで1、2フィニッシュを飾ったトヨタスポーツ800の内の1台を実際にレストアし、GRシリーズの象徴的なクルマとして展示してあった。そして、まさかとは思ったが、試乗もOKとのことで、私も久しぶりに、懐かしのヨタハチのステアリングを握ることができた。

トヨタスポーツ800は、当時の国民車、パブリカの空冷水平対向2気筒790ccエンジンを使用し、可能な限り軽く(580kg!)、しかも、空力をよくして、パフォーマンスを高めようとしたスポーツカーで、この思想は、むしろ、50年以上を経た今の方が、持て囃されている考え方だ。

丸くて、かわいいデザインは魅力的で、当時も人気があったが、私が出版社を始めた頃、豪華本の第2弾として、生産中止して数年たった1977年に、トヨタの2台のスポーツカー、という本を出版した。その時、何人かのオーナーの方のご厚意で、クルマをお借りし、取材をさせて頂いた。

その時ですら、クルマ自体はずいぶんとキャシャな出来だが、軽くて実に軽快に走り、このような考え方のスポーツカーもありだな、と感じたのを覚えている。

それから数えても40年ぶりだから、とても懐かしかった。無論、パフォーマンス的には、今のクルマと比較にはならず、ドラムのブレーキなどは、現代のクルマの倍ぐらいの距離を必要とするのだが、エンジンはよく回り、乗る楽しさという点では、秀でているなあ、と感じたのである。

願わくば、当時のレースのカラーリングに戻し、トヨタのブランドアイコンの一台としてぜひとも、しっかりと保存して欲しいものだ。