希望の党結党で笑顔をみせる小池氏ら=9月27日、都内で

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「しがらみのない政治、そして大胆な改革を築いていく新しい政治、まさにニッポンをリセットするためにこの希望の党を立ち上げます。リセットするからこそしがらみがない。いえ、しがらみがないからリセットできる。

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 いまニッポンをリセットしなければ、国際間競争、安全保障など十分守りきれないのではないか。そんな危機感を共有する仲間が集まりました」

 東京都知事で希望の党代表を務める小池百合子氏(65)は9月27日、結党会見の冒頭で14人の国会議員同志に囲まれながらそう述べた。

小池氏と安倍首相の違い

 物理的には不可能な“ニッポンのリセット”という表現を使い、安倍政治を終わらせる決意を示した。自民党総裁の安倍晋三首相(63)は同28日、衆議院を解散。事実上の選挙戦に突入したが、もし希望の党が政権奪取した場合、どの政策をどのようにリセットするのかわかりにくい。

 ニュースは「小池氏出馬か」「民進党の合流議員は」に集中しすぎているからだ。

 全国紙記者は「政権交代となったら、下野した自民党から希望の党に転籍する議員が出てくるだろう」と話す。

「それくらい政治思想は似ているということ。小池氏は日本新党からスタートし、保守党などを経て2002年に自民党に移り、昨夏の都知事選出馬で自民党都連推薦を得られず進退伺いを提出した。

 知事就任後もその扱いは宙ぶらりんだったのに放置され、今年7月の都議選の直前に『都民ファーストの会』代表に就任するため、小池氏がようやく離党届を出して自民党籍を捨てたばかり。15年在籍して閣僚も党三役も務めたのだから、政治信条は自民党と同根といえる」(同記者)

 希望の党は綱領で「寛容な改革保守政党を目指す」としている。理念だけでは政策を読み解きにくいので、小池氏の発言などから安倍・自民党との違いをまとめた。

 ジャーナリストの大谷昭宏氏は「まず希望の党は消費税増税については凍結を示唆している」と話す。

「安倍政権は'19年10月に消費税を現行8%から10%に上げると法律で定めました。これ以上延期しないと約束しています。しかし、希望の党は“そもそも重税感が強い”として増税に懐疑的。

 増税しないのであれば、財政の健全度を示す『プライマリーバランス(PB=基礎的財政収支)』は一層赤字化する。'20年のPB黒字化は国際公約です。増税反対と言うだけでは信用できないので、選挙戦で財源の裏づけを明らかにする必要があります」(大谷氏)

 安倍首相は増税分の一部使途変更を選挙の争点として訴えており、いずれにせよPB黒字化は難しくなりそう。国の借金返済は先送りされ、次世代にツケが回るのか。

 小池氏はアベノミクスの成果にも否定的。29日の会見では「アメリカの法人税は大幅に下げられる流れ。これまでのようなまったりした政治でいいのか」と述べ、この道しかないと言い続ける安倍首相との違いを鮮明にした。

 エネルギー政策でも違いはくっきり。希望の党は小泉元首相の応援もあって原発ゼロを目指しており、原発を順次再稼働させてきた自民党とはスタンスが異なる。'30年までに原発ゼロを実現するための行程を検討するという。

 前出の大谷氏は、「原発ゼロはわかりやすい争点ではある。民進党は'30年原発ゼロ方針を支持母体の連合の猛反発で断念した経緯があり、希望の党も選挙で連合の支援を受ければ同じ。

 連合と間違いなくぶつかります。電力総連などの労働者を抱えていますから。希望の党は稼働中の原発をいつ止めるのかなどの行程を有権者に示さないといけません。大向こうをうならす政策を掲げるだけではダメです」と話す。

 森友・加計学園をめぐる疑惑解明はどうなるのか。安倍首相は「丁寧に説明する」と口では言いながら、野党の臨時国会召集に約3か月も応じず、開会したかと思えばすぐ衆院解散だからひどい。

「安倍首相のウイークポイントはモリ・カケ疑惑です。小池氏は国家戦略特区について“お友達でやっている”と批判し、しがらみ政治からの脱却や情報公開の徹底を訴えています。インチキ、ウソつき、汚いなどとガンガン突き上げれば相当ダメージを受けるでしょう」と前出の大谷氏。

 疑惑払拭のためには安倍昭恵夫人や加計学園理事長の証言はもとより、詳細な証拠提示は避けられない。

 タバコについても両党のスタンスは異なる。東京都は国に先行し、飲食店など屋内原則禁煙とする受動喫煙防止条例の'20年五輪開催前の施行を目指している。国政では通常国会中に厚労省が厳しい受動喫煙対策を盛り込んだ健康増進法改正案の成立を目指したが、自民党の反発で頓挫した。都内だけの話ではなくなってくる。

 前出の大谷氏は、

「小規模の居酒屋やバー、スナックなどは全国でみれば何百万軒とある。店舗面積などで線引きするにしても、喫煙客を持つ店を納得させるのは難しいでしょう。法律をつくるだけでなく違反店のチェックなど実務的なところを詰めないといけない」と話す。

 どんなに聞こえのいい政策でも、実現性が低くては意味がない。問題の急所に目をつぶらず、選挙戦で実現に向けた具体的なシナリオを説明できるかが注目される。

憲法改正と安全保障は同じ方向性

 一方、両党の方向性がほぼ同じなのが憲法改正と安全保障・外交政策だ。小池氏は憲法改正について「九条の1点だけに絞って議論するのがいいのか」と安倍首相の手法に疑問を投げかけている。

 名古屋学院大学の飯島滋明教授(憲法学・平和学)は「小池氏は“安倍首相と一緒ではない”と言いたいだけ」として次のように話す。

「憲法のどこをどう変えたいのか詳細な説明がない。新党だから違いを打ち出しただけで、いずれ九条改正にも切り込んでくるのではないか。選挙は国民のさまざまな声を拾う役割もある。憲法改正反対の声はどこが拾ってくれるのか心配だ」

 希望の党が掲げる「現実的な外交・安全保障政策」にも危険な匂いをかぎとっている。

「小池氏は防衛相のとき、沖縄の米軍普天間飛行場の辺野古移設を乱暴なやり方で推進した。安保法制にせよ、北朝鮮対応にせよ、小池氏の言う“現実的”とは強硬的な行動を示すのではないか」

 と飯島教授。

 希望の党が指し示す「希望」とは何か。それが私たちの「希望」とどのくらい合致するのか。

 しっかりチェックしたい。