「正直、ほかの課と比べて激務でした。早期解決のため昼も夜もない。会社が休みで聞き込みできない、と報告したら、『会社に聞くのではない。会社の人に聞くんだ』と一喝されたものです」

 捜査一課OBの元警部・Aさん(60代)が語る。捜査一課に入るには、上司の推薦が必要な専務試験を突破しなければならない。同じく元警部のBさん(60代)はどうだったのか。

「某署に所属していたとき、直属の上司として転勤してきたのが、ロス疑惑事件の取調べを担当した捜査一課の有名な刑事でした。その人の強いすすめで、専務試験を受けました」

 専務試験は刑法、刑事訴訟法が中心で、通常の昇任試験は警察業務全般から出題される。「不得意分野もあり、昇任試験のほうが難しい」(Bさん)そうだ。

 晴れて配属された捜査一課。やっぱりクセのある刑事ばかりなのか。

「他部署や県警に対して、優越感や縄張り意識は、課内にはなかった。ほかの管轄で発生した事件に、『自分たちならこうするのに』と仲間内で話すことはありましたが。一匹狼で事件を解決するような刑事もいない。情報を共有できない刑事は資質が問われます」(Aさん)

 2004年〜2006年まで第62代捜査一課長を務めた久保正行氏にも話を聞いた。

「夜間大学に通いながら、交番勤務、パトロールカー勤務、看守勤務を経て、3年で玉川署の刑事になりました。先輩の推薦で捜査一課員となり、管理官の運転担当になったんです。当時、葛飾で殺人事件があって、捜査のあと管理官を町田までお送りするんです。家に帰れず、車の中でよく寝ましたよ」

 刑事ドラマでは、将来を嘱望される若手が幹部の運転担当を務めることが多いが、久保氏もそうだったのか。

「いやいや、『一課長になれるかも』と意識したのは理事官になってからですよ。ドラマには、本部と所轄、キャリアとノンキャリアの対立など、現実にはありえないシーンもありますから。

 でも、たとえば「黒い餡=犯人を白い餅で包む」縁起物として、大福を食べる人がいます。私も、迷宮入りしないようにお宮参りはせず、ホシ(犯人)を取り込むために『★』のビールを飲んでいました。事件が解決したらなんでも飲むんだけどね(笑)」

(週刊FLASH 2017年5月23日号)