深川麻衣が踏み出す、女優としての第一歩「アイドルとは違う場所で頑張る私を見てほしい」
白のワンピースで現れた深川麻衣。暖かな日差しのもと、柔らかな笑みを見せる姿から、今日ばかりは「聖母」というより、「天使」と呼ぶにふさわしい…。昨年、乃木坂46を卒業し、女優としてスタートをきる覚悟や決意は、その雰囲気からは想像できないくらい、強くて固い。舞台『スキップ』では、どんな姿を見せてくれるのだろうか。舞台に懸ける思いから、“ぬか漬け女子”な一面まで見せてくれたインタビューをお届けする。
撮影/川野結李歌 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.
ヘアメイク/脇坂美穂
――舞台『スキップ』は、深川さんが乃木坂46を卒業し、現在の事務所に所属してはじめての主演舞台になりますね。
乃木坂46のときに、『16人のプリンシパル』という舞台を経験しているんですけど、ひとりでいろんな役者さんと一緒に舞台を作るのははじめてなので…今回の出演が決まったときは、舞台に出演できるうれしさもありつつ、不安もありました。
――どんな不安があったんでしょうか?
出演する方々は、みなさんキャリアがある方ばかりなんです。だからこそ、「迷惑をかけてしまわないだろうか」という不安が…。でも、こんなスゴい方々と一緒に、舞台に立たせていただく機会もなかなかないと思うので、ポジティブに、お稽古や本番期間中を通して、みなさんからいろいろ勉強させていただきたいです。
――舞台『スキップ』は、1995年に出版された北村 薫さんの小説が原作で、2004年には、演劇集団キャラメルボックス主催で舞台化もされています。原作をお読みになった印象はいいかがでしたか?
小説を読んで、言葉がすごくキレイだなと感じました。それに、出てくる登場人物の全員がとてもまっすぐなんです。私が演じる一ノ瀬真理子も、まっすぐでいつも前向き。ホントに一生懸命な女の子だなと思いました。
――物語は、17歳の真理子がうたた寝をしているあいだに25年の歳月が流れて、目を覚ますと42歳になっていた…というお話ですね。
心は17歳なのに、突然42歳になって、しかも、旦那さんがいて、子どもがいて、高校教師の仕事をしていて…普通ならパニックになる状況下でも、真理子は常に前向きなんです。もちろん、動揺はするし、心のなかではいろんな葛藤をしているんですけど…。今の自分で、その環境に頑張って馴染もうとする前向きさや行動力は、そう簡単にできることじゃないなと思うんですよね。
――もし、深川さんが真理子と同じ状況になってしまったら…?
もう、何がなんだかわからなくて、絶対パニックになると思います! しかも17歳で、高校教師の仕事をやろうとなんて思えない!
――たしかに、真理子は高校2年生ですし、仕事をする感覚って、きっとまだないですよね。そういう意味で、まったく知らない世界に挑んでいかないといけない。
42歳の自分が高校教師をやっているという状況がわかったとしても、17歳の心で、「じゃあ、自分もできるはず」って簡単には思えないですよね。とてもガッツのある女の子です。
――そんな真理子と、深川さん自身が似ている部分はありましたか?
ん〜、そうですねー。負けず嫌いなところは似ているかもしれないです。
――深川さんも負けず嫌いなんですね。
隠れ負けず嫌いです(笑)。
――隠れ、なんですか?
そんなに表立って出ていないかなって思うんですけど、やっぱり、自分が全然できていないのを実感するとすごく悔しくて。「もっと頑張らなきゃ!!」って。
――メラメラ燃えてくるというか。
そうですね。今は、意識的にそうしている部分もあるかもしれないです。もともと、悩みごとは引きずらないタイプではあるんですけど、今はできないことが多すぎて、やっぱり考え込んでしまうこともあって。
――なるほど。
でも、そういうときにずっとクヨクヨ考えている時間って、じつはすごくもったいないんですよね。1回1回、反省することは大事だけど、「今日はできなかったな」ってクヨクヨする時間をもっとエネルギーにして、「じゃあ今日はココを頑張ってみよう」っていう前向きなパワーにつなげていくのは、とても大事だなと思っています。
――実際に稽古に参加して、どういう感触ですか?
今まで感じたことのないような空気を感じています。『16人のプリンシパル』のときは、16人の役を選抜式でやるというもので、16役を覚えて、毎日違う役を稽古で演じて、動きやセリフを体に覚えさせていくというのがメインだったんです。今回みたいに、1役をずっと突き詰めていくという稽古は、これまで経験したことがなかったですし、すごく新鮮です。
――稽古を通して見えてきた真理子の姿はありましたか?
稽古前に自分のなかで思い描いていた真理子像よりも、芯がしっかりしている子なんだなという発見はありました。今回はW主演で、霧矢大夢さんと同じ真理子を演じるので、最初からあまり真理子を固めすぎても、すり合わせが難しいかなと思って、ざっくりな感じで稽古に臨んだんです。でも、脚本・演出の成井(豊)さんは、「(霧矢さんと)お互い寄せようと思わなくていい」とおっしゃってくださって。
――同じ真理子なのに…?
はい。でも、ちゃんと意識はするようにしています。というのも、17歳の真理子(深川麻衣)と、42歳の真理子(霧矢大夢)は、同じシーンにふたりで出ていることが多いんです。17歳の真理子がしゃべっているときは、42歳の真理子が17歳の真理子の心情の動きを表現して。その逆もあって。42歳の姿で平然と話しているけれど、心はすごく動揺している…とか。そういう面白い表現があるので、霧矢さんのお芝居をよく見て、より気持ちを共有しないといけないなって思っています。
――霧矢さんから、何かアドバイスをいただいたりすることはありましたか?
マイクなしで、サンシャイン劇場の一番後ろのお客様まで声を届けるようにしないといけないという部分で、喉が心配で…。今も、声が若干ガサガサしちゃっているんですけど…(笑)、霧矢さんに「喉をからさないか心配なんです」とお話したときに、「まずは、声を大きく出すというのを目標にして、ほかは最初から一気にやろうと思わなくていいよ」というのは言ってくださいました。
――そう言っていただけるのはありがたいですね。
「徐々に慣れていけばいいよ」という温かい言葉をかけてくださって、ホントにありがたいなと思いました。キャラメルボックスの岡田(達也/42歳の真理子の夫・桜木役)さんも、見え方などいろいろアドバイスをくださいます。キャラメルボックスのお芝居って、ホントにみんなで作っていくものなんだなと感じていて。成井さんの「こうしたい」っていう意向はありつつ、役者みんなも意見を出し合える環境なんです。
――今回の舞台は女優としての第一歩目ということもあって、深川さん自身も、舞台にかける思いは強そうですね。
はい。今の自分はホントにまだまだなので、稽古の1回1回を「これが最後だ」っていうくらいの気持ちでやらないといけないなと、すごく思っています。一生懸命に取り組まないと、次につながらないっていう焦りや怖さもありますし…。
――どんな焦りや怖さですか?
ざっくり考えると、業界としては同じかもしれないけど、やっぱりアイドルの世界と演技の世界は全然違うんですよね。演技の経験を10代の頃からやられている方が多いなかで、私くらいの年齢で、イチから演技の勉強を始める方はあまりいなくて。キャラメルボックスに所属されている若手の方で、私より年齢が下の方でも、下積みがしっかりあるので、声の聞きとりやすさや筋力のつき方が全然違って、見ていてホントに勉強になるんです。
――経験則が違うからこその焦りや怖さ、ですね。
みなさん、努力を重ねてきたからこその結果で、今できていると思うんです。今の私が簡単に追いつけるとは思っていないですけど、同じ舞台に立つ身として、ホントに自分が頑張らないと悪目立ちしてしまうなと感じています。
――深川さんの、今後の目標は何ですか?
興味があることはいっぱいあるんです。時代劇もやりたいし、やりたいお仕事はたくさんあるんですけど、まず今は、舞台『スキップ』を成功させるというのが一番の目標です。目の前にあるひとつひとつのことと、きちんと向き合っていくことが2017年の目標ですね。それが翌年につながって、また一歩進んだ目標を立てられたらなと思います。
――乃木坂46時代から深川さんを応援している、ファンの方にはどんな姿を見てもらいたいですか?
乃木坂46を卒業してから、ファンの方の前に出るのがはじめてなんです。だからとても緊張していて…。ファンのみなさんには、グループにいたときとは違う…今は、アイドルとは違う場所で頑張っている私の姿を見ていただけたらなと思っています。
撮影/川野結李歌 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.
ヘアメイク/脇坂美穂
悩んでクヨクヨしている時間はもったいない!
――舞台『スキップ』は、深川さんが乃木坂46を卒業し、現在の事務所に所属してはじめての主演舞台になりますね。
乃木坂46のときに、『16人のプリンシパル』という舞台を経験しているんですけど、ひとりでいろんな役者さんと一緒に舞台を作るのははじめてなので…今回の出演が決まったときは、舞台に出演できるうれしさもありつつ、不安もありました。
――どんな不安があったんでしょうか?
出演する方々は、みなさんキャリアがある方ばかりなんです。だからこそ、「迷惑をかけてしまわないだろうか」という不安が…。でも、こんなスゴい方々と一緒に、舞台に立たせていただく機会もなかなかないと思うので、ポジティブに、お稽古や本番期間中を通して、みなさんからいろいろ勉強させていただきたいです。
――舞台『スキップ』は、1995年に出版された北村 薫さんの小説が原作で、2004年には、演劇集団キャラメルボックス主催で舞台化もされています。原作をお読みになった印象はいいかがでしたか?
小説を読んで、言葉がすごくキレイだなと感じました。それに、出てくる登場人物の全員がとてもまっすぐなんです。私が演じる一ノ瀬真理子も、まっすぐでいつも前向き。ホントに一生懸命な女の子だなと思いました。
――物語は、17歳の真理子がうたた寝をしているあいだに25年の歳月が流れて、目を覚ますと42歳になっていた…というお話ですね。
心は17歳なのに、突然42歳になって、しかも、旦那さんがいて、子どもがいて、高校教師の仕事をしていて…普通ならパニックになる状況下でも、真理子は常に前向きなんです。もちろん、動揺はするし、心のなかではいろんな葛藤をしているんですけど…。今の自分で、その環境に頑張って馴染もうとする前向きさや行動力は、そう簡単にできることじゃないなと思うんですよね。
――もし、深川さんが真理子と同じ状況になってしまったら…?
もう、何がなんだかわからなくて、絶対パニックになると思います! しかも17歳で、高校教師の仕事をやろうとなんて思えない!
――たしかに、真理子は高校2年生ですし、仕事をする感覚って、きっとまだないですよね。そういう意味で、まったく知らない世界に挑んでいかないといけない。
42歳の自分が高校教師をやっているという状況がわかったとしても、17歳の心で、「じゃあ、自分もできるはず」って簡単には思えないですよね。とてもガッツのある女の子です。
――そんな真理子と、深川さん自身が似ている部分はありましたか?
ん〜、そうですねー。負けず嫌いなところは似ているかもしれないです。
――深川さんも負けず嫌いなんですね。
隠れ負けず嫌いです(笑)。
――隠れ、なんですか?
そんなに表立って出ていないかなって思うんですけど、やっぱり、自分が全然できていないのを実感するとすごく悔しくて。「もっと頑張らなきゃ!!」って。
――メラメラ燃えてくるというか。
そうですね。今は、意識的にそうしている部分もあるかもしれないです。もともと、悩みごとは引きずらないタイプではあるんですけど、今はできないことが多すぎて、やっぱり考え込んでしまうこともあって。
――なるほど。
でも、そういうときにずっとクヨクヨ考えている時間って、じつはすごくもったいないんですよね。1回1回、反省することは大事だけど、「今日はできなかったな」ってクヨクヨする時間をもっとエネルギーにして、「じゃあ今日はココを頑張ってみよう」っていう前向きなパワーにつなげていくのは、とても大事だなと思っています。
乃木坂46時代には感じたことのない、新鮮な空気感
――実際に稽古に参加して、どういう感触ですか?
今まで感じたことのないような空気を感じています。『16人のプリンシパル』のときは、16人の役を選抜式でやるというもので、16役を覚えて、毎日違う役を稽古で演じて、動きやセリフを体に覚えさせていくというのがメインだったんです。今回みたいに、1役をずっと突き詰めていくという稽古は、これまで経験したことがなかったですし、すごく新鮮です。
――稽古を通して見えてきた真理子の姿はありましたか?
稽古前に自分のなかで思い描いていた真理子像よりも、芯がしっかりしている子なんだなという発見はありました。今回はW主演で、霧矢大夢さんと同じ真理子を演じるので、最初からあまり真理子を固めすぎても、すり合わせが難しいかなと思って、ざっくりな感じで稽古に臨んだんです。でも、脚本・演出の成井(豊)さんは、「(霧矢さんと)お互い寄せようと思わなくていい」とおっしゃってくださって。
――同じ真理子なのに…?
はい。でも、ちゃんと意識はするようにしています。というのも、17歳の真理子(深川麻衣)と、42歳の真理子(霧矢大夢)は、同じシーンにふたりで出ていることが多いんです。17歳の真理子がしゃべっているときは、42歳の真理子が17歳の真理子の心情の動きを表現して。その逆もあって。42歳の姿で平然と話しているけれど、心はすごく動揺している…とか。そういう面白い表現があるので、霧矢さんのお芝居をよく見て、より気持ちを共有しないといけないなって思っています。
――霧矢さんから、何かアドバイスをいただいたりすることはありましたか?
マイクなしで、サンシャイン劇場の一番後ろのお客様まで声を届けるようにしないといけないという部分で、喉が心配で…。今も、声が若干ガサガサしちゃっているんですけど…(笑)、霧矢さんに「喉をからさないか心配なんです」とお話したときに、「まずは、声を大きく出すというのを目標にして、ほかは最初から一気にやろうと思わなくていいよ」というのは言ってくださいました。
――そう言っていただけるのはありがたいですね。
「徐々に慣れていけばいいよ」という温かい言葉をかけてくださって、ホントにありがたいなと思いました。キャラメルボックスの岡田(達也/42歳の真理子の夫・桜木役)さんも、見え方などいろいろアドバイスをくださいます。キャラメルボックスのお芝居って、ホントにみんなで作っていくものなんだなと感じていて。成井さんの「こうしたい」っていう意向はありつつ、役者みんなも意見を出し合える環境なんです。
目の前のことをクリアして、今後の目標につなげたい
――今回の舞台は女優としての第一歩目ということもあって、深川さん自身も、舞台にかける思いは強そうですね。
はい。今の自分はホントにまだまだなので、稽古の1回1回を「これが最後だ」っていうくらいの気持ちでやらないといけないなと、すごく思っています。一生懸命に取り組まないと、次につながらないっていう焦りや怖さもありますし…。
――どんな焦りや怖さですか?
ざっくり考えると、業界としては同じかもしれないけど、やっぱりアイドルの世界と演技の世界は全然違うんですよね。演技の経験を10代の頃からやられている方が多いなかで、私くらいの年齢で、イチから演技の勉強を始める方はあまりいなくて。キャラメルボックスに所属されている若手の方で、私より年齢が下の方でも、下積みがしっかりあるので、声の聞きとりやすさや筋力のつき方が全然違って、見ていてホントに勉強になるんです。
――経験則が違うからこその焦りや怖さ、ですね。
みなさん、努力を重ねてきたからこその結果で、今できていると思うんです。今の私が簡単に追いつけるとは思っていないですけど、同じ舞台に立つ身として、ホントに自分が頑張らないと悪目立ちしてしまうなと感じています。
――深川さんの、今後の目標は何ですか?
興味があることはいっぱいあるんです。時代劇もやりたいし、やりたいお仕事はたくさんあるんですけど、まず今は、舞台『スキップ』を成功させるというのが一番の目標です。目の前にあるひとつひとつのことと、きちんと向き合っていくことが2017年の目標ですね。それが翌年につながって、また一歩進んだ目標を立てられたらなと思います。
――乃木坂46時代から深川さんを応援している、ファンの方にはどんな姿を見てもらいたいですか?
乃木坂46を卒業してから、ファンの方の前に出るのがはじめてなんです。だからとても緊張していて…。ファンのみなさんには、グループにいたときとは違う…今は、アイドルとは違う場所で頑張っている私の姿を見ていただけたらなと思っています。