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●続編への思いと新キャストの力
あの"愛知佐一郎"が帰ってくる! 第二次世界大戦後の日本で、国産自動車の開発に人生をかけた人間たちの物語を描いたTBS系スペシャルドラマ『LEADERS』(2014年)の続編『LEADERSII』が、3月26日(21:00〜23:24)に放送される。前作同様、監督は『半沢直樹』、『ルーズヴェルト・ゲーム』、『流星ワゴン』、『下町ロケット』の福澤克雄が務める。

今作でフィーチャーされるのは、自動車製造が進む一方で、その"販売"に奔走した人々の物語。自動車製造に邁進するアイチ自動車工業の社長・愛知佐一郎(佐藤浩市)を中心に、その躍進を支えたディーラーやライバル会社などの、知られざるストーリーが前作と同じ時間軸で展開される。撮影時間以外でも「社長!」と呼ばれていたという佐藤浩市。内野聖陽や東出昌大、自身初のヒール役に挑戦した郷ひろみといった新キャストの話や、総移動距離が地球半周分!?に及ぶ壮大な撮影ロケ、そして自らが演じた愛知佐一郎という男の魅力について語ってくれた。

――続編の制作が決まったのを聞いた時は、どんな気持ちでしたか?

前作のラストで僕(愛知佐一郎)は死んでいるからね(笑)。「佐一郎が会社を辞めてからのストーリーになるのかな?」など、いろいろと想像を巡らせました。

――また佐一郎を演じることになって、うれしかったですか?

役者って舞台でもない限り、一度終わった役は墓場に埋めちゃうんですよ。だからまた掘り返す作業をしました。前回苦労して一緒にやった仲間たちとまた再会できるのはうれしかったですね。

――今回は国産自動車の「販売」にスポットが当たっていますが、そのストーリーについてどう思いましたか?

販売の部分は前作でも少し触れていたのですが、今作でより深く掘り下げることで、まるで自動車の両輪がそろうような形になりました。“製造”と“販売”の間にあった軋轢みたいなものも強く出てきますし、アイチ自動車とディーラー、日本車にまったく期待していないライバルたちなど、さまざまな人の立場や考え方が、今作を通してより鮮明に伝わるのではないかと思います。

――内野聖陽さん、東出昌大さんなど、新キャストの方々が豪華ですね。

内野くんや山崎さん、東出くん、大泉くん、郷さんといったキャストが参加することで、作品にどんな新しい風が吹くのかというところが楽しみでしたね。内野くんはアイチ自動車の最初の取り扱い販売店になった日の出モータースの支配人役。日本より50年も先をいっている外国車が主流の世の中で、国産車を売っていかなくてはいけないのだから、彼ぐらいパワーのある人じゃないとこの役は成立しなかったと思います。声のボリュームも含めてね(笑)。東出くんはクールな印象もあったけれど、現場の空気や周りの役者の影響を受けて、だんだん熱くなっていった部分もあったんじゃないかな。

――郷ひろみさんは初のヒール役に挑戦されました。相当な気合で挑まれたようですが、郷さんの演技はいかがでしたか?

僕も楽しみにしていたんですが、思った通りにいやらしいですよ(笑)。ネチネチっとした感じでやられていて。いつもの郷さんのイメージとは、全く違う所でやられていました。ただ郷さんが演じる酒田には酒田のポリシーがあったわけで、漠然と悪者ではないんですよね。そういうところも含めて見てもらえたらと思いますね。良いスパイスになっていますよ。

――ほとんどの撮影がロケだったそうですが、印象に残っている共演者とのエピソードはありますか?

1934年の設定なので、古い建物や風景を求めて、愛知や京都、上海などを回る日々でした。ロケが多いと、必然的に夜は共演者と一緒に「どこ行く? なにする?」という機会が多くなって。上海ロケの時は内野くんと1回、東出くんと2回飲んだかな? 2人は今作が初めてだったので、仕事の話や、今回の作品の話をしていました。

――久しぶりに再会した"社員"たちとは、どのようなことを話しましたか?

勝手知ったるアイチ自動車工業の連中とも死ぬほど飲みましたが、仕事の話は一切しなかったです(笑)。みんな飲みの場でも「社長! 社長!」と呼んでくれて。橋爪さんも70いくつにして、よく我々にお付き合いくださいました。撮影以外でそういう時間を共有できたことが、作品の中でも良い方向に出たんじゃないかと思います。

(C)TBS

●演技白熱! 熱き撮影現場秘話
――福澤監督とのお仕事はこの作品(前作含め)が初めてだったんですか?

そうですね、初めてでした。最後には良いスクラムが組めたと思います。

――福澤監督の演出はいかがでしたか?

熱さだったり、もっとほしいんだろうなと感じるときがありましたよ(笑)

――熱い男たちの物語なので、現場の士気も高かったんじゃないかと思います。

この作品の中で生きている人たちは、"ないものを作ろう"としている人間たちですから、演技も自然とヒートアップしていましたね。時代背景も、普通の話し方じゃなくて、5割増のパワーと声量で話さないと相手に届かない時代というか。自分たちの生き方をどうしても曲げられない人たちがいる時代なんです。だからたとえお芝居であっても、相手に伝えようと思うと一つ一つのセリフが必要以上に熱を帯びていって。製造部門と販売部門がぶつかるシーンでは、えなり(かずき)くんは当たり前のようにおいおい泣いているし…。若い方は「そんなのカメラには映らないよ」とおっしゃるかもしれないけれど、映らないものが映る時もある。理屈じゃないところで、僕らは役者をやっているんです。

――佐藤さんの自然な感情の高ぶりが生かされたシーンも多いのでは?

名古屋の公会堂の撮影で、佐一郎が1,400人のエキストラの前で話すシーンは印象に残っています。1,400人の心に声を届かせるために佐一郎はどうするかと考えて。まずは舞台上に作ってあった壇を取り外してもらい、それからいろいろ動いてみて、あそこに動くかもしれない、幕に描いてあるアイチ自動車のロゴを使うかもしれないなどと、スタッフにいろいろバリエーションを見せてから撮影に入りました。たとえお芝居であっても発信者として、エキストラの方を飽きさせず、ちゃんと話を聞いてくれるように話したかったんです。

――菅野美穂さんも新キャストとして登場されます。物語の中で前に出ているのは男性ですが、それを支える存在として、“女性”の姿も大切に描かれているように思います。

男が表に出て、女は一歩下がるというのは当時としては当たり前なんだけれど、女性が男たちを支えたからこそ偉業を成し遂げられたんだというのは、この作品の中で見せないといけない部分だと思います。今作で言うと、菅野さん演じるキヨがいなければ、内野くん演じる山崎という男はあそこまで頑張れなかったし、意地を通せなかったでしょうから。

――最後に、佐藤さんが思う愛知佐一郎のかっこいいところってどんなところですか?

無理だと思うことでも挑戦してみること。そしてそれを続けるということ。戦前の時代に、国産車が切り開く日本の未来を信じることができていたこと自体が、本当に素晴らしいですよね。「日本映画なんてどうせハリウッドにかなわないんだから」なんて批判する人々がいる中で、一生懸命映画を作り続けるような人間。始めの一歩がなけりゃ、その次は誰もできないわけですから。

――そんな佐一郎たちの熱い思いが、再び感動を呼びそうですね。

やたらうるさいドラマです。声のボリュームが(笑)。たくさんの方に見ていただきたいと思います。

■プロフィール
佐藤浩市
1960年12月10日、東京都出身。1980年にドラマ『続・続事件/月の景色』(NHK)でデビュー。 翌年出演した映画『青春の門』でブルーリボン賞新人賞を受賞する。その後、数々の映画やドラマに出演し、『忠臣蔵外伝/四谷怪談』(94)、『64-ロクヨン-前編/後編』(16)で 日本アカデミー賞最優秀主演男優賞。2017年6月に公開予定の最新映画『花戦さ』では、 千利休を演じている。
撮影:宮川朋久 (C)TBS

(井上麻子)