報徳学園vs多治見

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21得点でも飽きさせない!報徳学園の選手たちの能力の高さ

報徳学園vs多治見

 報徳学園が1回から機動力を駆使した攻撃で多治見を圧倒した。1死後、2番永山裕真(3年・中堅手)が強い打球でライト前ヒットを放ち、このときの一塁到達タイムが4.37秒。私は俊足の基準を4.2秒未満にしているが、ヒットのとき多くの選手は4.5秒以上で走るので、これは十分に俊足と言える速さだ。

 3番片岡 心の初球に二盗を成功。走るモーションを起こしたときから二塁ベースに到達するまでのタイムが3.28秒で、これも超高校級と言っていい。1死二塁で片岡がセンター前にタイムリーを放って先取点を挙げると、さらに一、二塁の局面から5番神頭 勇介(3年・一塁手)がセンター前にタイムリーを放って2点目を入れる。

 3回はビッグイニングになった。2番永山のヒットのあと片岡のゴロが多治見の三塁手の野選とエラーを誘い1点。さらに1死後、四球、3連打に相手エラーが重なり7点目が入り、1番小園 海斗(2年・遊撃手)の右中間を大きく破る三塁打で2点を追加すると、永山がこのイニング2度目の打席に立ちセンター前に弾き返して8点目の走者を迎え入れた。

勝負はこの3回まででほとんど決まったが、報徳学園の投打に注目選手が揃い、まったく試合に飽きることがなかった。野手では小園、永山の1、2番コンビに注目した。小園は各打者が逆方向のバッティングを心がける中、気持ちよさそうにバットを振ってライト方向に長打を打っていた。3回は前に書いたように右中間に2点タイムリー三塁打、9回にはライトポール際にソロホームランを放り込む。三塁打は技巧派のアンダーハンドが投じる半速球を捉えて右中間、ホームランは左腕の低めカーブを捉えてライトスタンドに放り込んだもの。

 ホームランの打球は打った瞬間、ファールだと思った。それがファールゾーンに逸れず、ポールの内側をまっすぐに通過してスタンドに達した。バットが内側から出て、さらにボールを内側から振り抜いているからできることで、小園の技術力の高さを物語っている。三塁打のときの三塁ベース到達タイムはプロでも上位の11.27秒。もちろん今大会ナンバーワンで、昨年私が見たプロ・アマ通算298試合の中でも15番目に速いタイムだった。

 打つ姿が似ているのは2年前、仙台育英の選手として甲子園を沸かした平沢 大河(ロッテ)がすぐ思い浮かぶ。細身ながら腰がねじ切れるようなフルスイングでライト方向に大きな打球を飛ばすという共通点がある。

 2番永山も逆方向ではなく、センター方向への打球が目立った。5安打のうち4本がセンター方向で、1本がライト方向だった。俊足は前にも紹介したが、6回には片岡の二塁打で一塁から長躯ホームイン、7回には1ストライク後の球を打ってセンター間にクリーンヒットを放ち、このときの一塁到達が俊足と評価できる4.36秒で、多治見野手陣がホーム返球している間に二塁を陥れる抜け目なさも発揮している。

 野手ばかり紹介したが、先発した西垣 雅矢(3年)のピッチングも光った。ストレートの最速は141キロと平凡だが、カーブ、スライダー、フォークボールを見事に低めに集め、連打を許さなかった。ステップする左足を突っ張って出すところ以外は気になるところはなく、専門誌が紹介する「球威不足」「安定感に欠ける」という負の前評判を一掃した。

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