熱戦延長11回!共栄学園、大西の粘りの投球で都大会へ

延長11回を投げきった大西(共栄学園)

 第4ブロックAの代表決定戦は、大森工業時代に東東京大会の決勝戦に進出した実績のある大森学園と、女子バレーボールの強豪で、共学化後、野球部も徐々に力を付けてきている共栄学園の対戦になった。

 多摩川の河川敷にある日体大荏原のグラウンドは午前中、川上(ライト側)から川下(レフト側)に向けて、強い風が吹いていた。1回裏、大森学園の3番・成澤 篤哉は、左翼に大きな飛球を放つと、打球は強い風にも乗りオーバーフェンス。大森学園は1点を先制した。大森学園の先発・浪岡 将史は力のある球を投げていたが、イニングによって、投球にムラがあった。3回表は一死から共栄学園の8番・山家 聖冬が死球で出ると、先発投手でもある9番の大西 亨和が送り、1番・菊地 奏汰の左前安打で山家が還り共栄学園が同点に追いついた。

 共栄学園の先発、身長168センチの大西は、「あまり球は走っていませんでしたが、気持ちで投げました」と語るように、球威はそれほどでもなかったが、気持ちを前面に出しつつ、変化球を駆使した丁寧な投球をする。しかし、唯一乱れたのが、3回裏だった。この回、大森学園の8番・米川 優暢、9番・植田 航汰に連続四球などで二、三塁とし、1番・細川 琉悟の遊ゴロで、米川が生還。さらに3番・成澤の左前安打で1点を追加した。

 大森学園がペースをつかみかけたが、5回表に浪岡が突如乱れる。共栄学園の7番・佐藤 慎哉がセンターオーバーの二塁打を放つと、9番・大西、1番・菊地に四球を出して満塁。さらに2番・佐久間 涼太にも四球を出して押し出しで1点差。さらに6回表は、共栄学園の4番・石川 青竜の左前安打を、大森学園の左翼手が後逸し、石川は二塁に進む。その後、5番・竹村 啓斗の犠打、6番、鈴木 隼人の犠飛で石川が還り、共栄学園が同点に追いつく。

 ここからは、大森学園の浪岡、共栄学園の大西の辛抱の投球が続き、試合は延長戦へ。10回表共栄学園は、この回先頭の1番・菊地がセンターオーバーの三塁打を放つ。続く2人は四球で歩き、無死満塁。ここで浪岡は、4番・石川への2球目が暴投になり、共栄学園が1点を勝ち越す。それでも、なおも続く無死二、三塁のピンチは追加点を許さない。

二塁打を放った浪岡(大森学園)

 その裏大森学園は、この回先頭の7番・守屋 友葵がお返しとばかり、右中間を破る二塁打を放つ。続く途中出場の岩穴口 秀作の犠打で三塁に進み、同じく途中出場の吉野 大空の一ゴロが野選となり、同点に追いつく。

 追いつかれた共栄学園の大西は、「負けたくない」という思いが強く、気持ちが切れない。11回表は、大西自らが二塁打を放ち、敵失と浪岡の暴投で、共栄学園が再度決勝点を挙げる。12回表大森学園は、先頭の2番・阿部 陽向太が遊撃手と中堅手の間に落ちる安打で打つと、一気に二塁を突くが、これはアウト。大森学園の反撃のチャンスはついえたかに思えたが、大西と投げ合った浪岡も、意地の二塁打を放ち、試合を諦めない。しかしながら、続く田邊 啓佑が中飛に終わって試合終了。粘りの投球を続けた大西は、思わず両手を挙げて、勝利を喜んだ。

 試合後共栄学園の原田 健輔監督は、「胃に良くない試合でした。相手チームのライナーが正面だったりして、運もあったと思います」と語る。それでも、大西投手を中心とした粘りの野球がもたらした勝利だった。粘りの野球の基となっているのは、秋季大会の1次予選で、錦城にサヨナラ負け喫した悔しさだった。

 都大会に話を向けると、「本大会のことを考える余裕はありませんでした」と、原田監督は語る。それでも、エースで主将でもある大西は、「1試合1試合全力で戦います」と言った上で、4回戦に勝ち進むと、順当なら早稲田実業と当たる。「早実と同じブロックなので、そこに引けを取らないよう、頑張ります」と語った。

 一方敗れた大森学園も、実力はあるチームだ。一歩の押し、あるいは一つのミスを減らすことで、勝利は近づいてくるはずだ。秋春の都大会出場を逃したが、あなどれないチームであることは確かだ。

(取材・写真=大島 裕史)

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