明大明治vs都立篠崎
柳澤 憲人(明大明治)
2年前の夏は東東京大会で準決勝に進出したが、昨年はチーム作りに苦しんだ都立篠崎。それでも秋季大会の1次予選で、本大会で日大三を苦しめた創価と延長13回の熱戦を繰り広げている。一方の明大明治は、旧チームからエースとして実績を残している柳澤 憲人を擁しているが、昨秋は1次予選の代表決定戦で日大桜丘に、9回裏に4点を入れられ逆転サヨナラ負けを喫している。
ともに秋は惜敗しているとはいえ実力のあるチーム同士の対戦だけに、前半は引き締まった好ゲームになった。明大明治の柳澤は立ち上がり、力のある球が低めに決まり、都立篠崎の1,2番を連続三振で仕留め三者凡退。一方都立篠崎の先発、身長157センチと小柄な藤本 一等は1回裏、走者を出しながらも無失点に抑える。
都立篠崎の牛久保 和哉監督はこの日の藤本について、「ストレートが来ていませんでした」と語る。しかしその分、変化球で緩急をつけて、明大明治打線を揺さぶる。明大明治の寺土 博昭監督が「緩い球を打てませんでした」と語るように、本調子でないなりの投球をする。
最初にチャンスを作ったのは、都立篠崎だった。2回表4番・石黒 翼の中前安打と5番・常泉 大の死球で無死一、二塁としたが、犠打失敗に続き、併殺で得点できない。すると明大明治は8番の金井 智哉が左中間柵越えの本塁打を放ち、1点を先制する。
明大明治の寺土監督が「あれは偶然です」と言う一発だったが、柳澤の球のキレが増しているだけに、都立篠崎にとっては重い1点になる。それでも都立篠崎の藤本も、5回裏の先頭打者を四球で出すものの牽制で刺すなど、ピンチは招いても追加点は許さない。次の1点をどちらが取るかで、勝敗が左右される感じになっていた7回裏、明大明治は思わぬ形で追加点を挙げる。
9回本塁打の石黒 翼(都立篠崎)
この回、1番の布施 佑馬、3番の留畑 賢太郎、4番の山内 俊瑛と3本の安打を集め一死満塁とし、5番・岡田 力樹は遊ゴロ。都立篠崎の遊撃手は併殺を焦ったのか、エラー。2人が還り、明大明治が勝負を決定付ける。都立篠崎は浮足立ったのか、その後も捕逸、遊撃手の再度のエラーと続き、さらに2点が追加された。「勝負どころで、内野にミスが出てしまいました。ショートが自信をなくしていました。普段の練習から、もっと実戦を想定していないといけないのですが」と都立篠崎の牛久保監督は語る。
それでも都立篠崎は粘りをみせる。9回表二死から3番・本間 諒広の左前安打に続き、4番の石黒はセンター柵越えの本塁打を放つ。実は石黒は東海大菅生から転入した選手。2年前の夏準決勝に進出した時も、帝京から転入した山本 紘平が活躍したように、石黒も、都立篠崎のカギになる選手になる可能性がある。石黒の本塁打に続き、常泉も敵失で出塁。明大明治は秋の1次予選の代表決定戦で9回に4点を入れられ、逆転サヨナラ負けを喫しているだけに、寺土監督も、「秋のことが頭をよぎりました」と心配したが、柳澤がしっかり抑えて、明大明治が都大会出場を決めた。
秋は創価、春は明大明治と対戦運に恵まれなかったこともあり、都立篠崎は秋春と、都大会に出場できないまま、夏を迎えることになる。牛久保監督は、「まだまだと思いました」と言うものの、昨夏の経験者も多く、力は相当ある。後はメンタル面も含め、どうチーム力を上げていくか、注目される。
秋は逆転負けして都大会出場を逃した明大明治は、「メンタルが弱いので、自信を付けさせる、精神力を強くすることを意識して来ました」と寺土監督は言う。プレッシャーのかかった状況で守備練習などをする一方で、体重を5キロ増やすことで、肉体的な強化も図ってきた。秋の口惜しさをベースにチームを作った明大明治は、都大会では初戦に、近年力を付けている都立豊多摩と対戦する。この試合に勝てば、秋の都大会4強の国士舘との対戦になる。「簡単ではありませんが、ベスト8を目標にしています」と寺土監督は語った。
(取材・写真=大島 裕史)
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