すごーい! 「けものフレンズ」は全肯定してくれる人類史SF。絶滅危惧種のヒトが火を使う
Twitterを中心に飛び交う、「すごーい!」「たーのしー!」という「フレンズ語」。
『けものフレンズ』の人気はパンデミック状態。
BD付き書籍はAmazonで1位になり即予約品切れ、重版。OPはiTunes総合3位に。
ニコニコ動画の1話再生数は、ダブルミリオン突破。
ローポリゴンで作られた、ゆるーいノリの動物擬人化アニメ。
作っているスタッフは10人くらい。
突然の人気に、たつき監督も驚きを隠せない様子。
ちなみにアプリゲームとコミックが先に出ているが、人気が出る前に終了している(世界観は別)。
間の悪かった『けものフレンズ』コミック版、再開してください -アオシマ書店-
記憶を失った「かばん(カバンを持っているので)」が、自分の種族を知るため、サーバル、ロボットのBOSS(LuckyBeast)と共にバスで旅をする、ロードムービー。
ヒト化した動物=「フレンズ」は、基本過去の習性のまま暮らしている。プレーリードッグは穴を掘るし、ビーバーは木を切り、コツメカワウソは好奇心旺盛。
それぞれ「できない」ことはとても多い。同時に「得意なこと」もなにかしらある。
サーバルは絶対に、個々を否定しない。
必ず誰もが、何かできると信じている。それぞれのフレンズに価値が対等にあると考えている。
だからいつも心から、「すごーい!」と感嘆する。
仕事や作業を「めんどうくさい」「つらい」と言わない。「楽しい」「面白い」と捉える。
完全肯定世界。
かばんは頑張って頭をひねってアイデアを出す度に、ほぼ毎回サーバルや他のフレンズに「すごーい!」と言われる。
疲れた脳に染みる。すごーい!って誰かに言いたい。言われたい。
プロデューサーの福原慶匡は、大人も子どもも楽しめる作品、深夜帯に仕事で疲れた大人が癒される作品を目指していた、と語っている。
「正直、困惑しています」けものフレンズ、プロデューサーが心境を語る BUZZ FEED
しかしよく見ると、癒やしだけではない何かがあることに、気付かされる。
かばんとサーバルが旅をする「ジャパリパーク」は廃墟だ。
朽ち果てたたくさんの施設。放置されたままのアトラクション。文字の見えない看板。
2話から入ったエンディングでは、廃墟化した実在の遊園地と思われる写真が、次々と映し出される。
ファンの解析では、ハリケーンで廃園になったニューオーリンズのシックスフラッグス、93年閉鎖したカナダのボブロ島遊園地のダンスホールなどではないかと言われている。
終末感が漂う。
物語は、かばんが人類文化史を追うスタイルで描かれている。
1話:投擲、地図
2話:道具の使用、船、橋
3話:絵文字、音楽、店の概念
4話:通貨、ピクトグラム
5話:土木、建築
6話:集団行動、武器、戦争、スポーツ
7話:文字、調理、火の利用
毎回入る「アライさんとフェネックさん」のパート。
かばんたちの冒険を2週遅れで追っているという設定。
本編で語りきらなかった情報が、ここで後日補完されるという周到っぷり。
背景にこっそり観覧車が隠されていたり、絶滅した動物&絶滅危惧種の目にハイライトがなかったり、「動物を食べる」という発想がかばんにしかなかったり。
『けものフレンズ』に関わるスタッフは、細かいところにまだまだ謎を潜ませている。
なにかが終わったあとの世界のSFだ。
正直1話だけ見ると、この構造が全然わからないくらい、ゆるい。
続けて見ていった時にはじめて、1話に張り巡らされた設定に気づかされる。
人のいない入場ゲート。動物のサーバルを模した動き。使われないバス停。「狩りごっこ」の意味。
回を重ねるごとに、モリモリ伏線が回収されていく。
新事実が出る度に、過去回を見直して、見落としてないかチェックしたくてしょうがなくなる。
7話は「自分がなんなのか」を知るかばんの旅の折り返し地点。
正体が「ヒト」だとはっきりわかった上に、「ヒト」が絶滅していることが判明する回だ。
かばんが看板に書かれた文字を読んだ時のサーバルのセリフ。
「えっ、かばんちゃん急に何言い出すの?」
読めないのではなく、文字という概念がそもそもフレンズにはない。
3話では絵文字を作成し、4話では非常口のマークを理解できた、かばん。
7話では図書館で本を読み、書かれたことを実践するまでに至った。
次の段階として、記録する可能性も出てきた。
フレンズは「料理」を知らない。
ジャパリパークでは、動物(フレンズになる前)の個体に合わせた、栄養のある「ジャパリまん」が作られており、それを食べることで肉食獣は草食獣を、草食獣は草を食べずに済んでいる。
ミミズクたちが要求したのは、複数の食品を使った料理。
かばんは虫眼鏡で火をつける方法を、本で調べて知った。
ところが、ミミズクたちとサーバルは、小さな炎に近寄ることすらできない。
火を扱うことができるのは人間だけ。
ちなみに2人が乗っているバスは電気式。充電は太陽電池で行っており、3話のカフェもオール電化。作中では徹底して火に関わるものを使っていない。
オープニングでは「暗いところ」「寒いところ」が出て来る。
もしミミズクたちがかばんに渡した小さな箱が、火に関係するアレなら。
明るくて暖かい火を使える「ヒト」を描く、前段階かもしれない。
8話は、ペンギンアイドルPPP(ぺぱぷ)のライブ回。アイドルオタクのマーゲイが登場。
アイドル……芸術・芸能の話か。
あるいは宗教の話かも。
(たまごまご)
『けものフレンズ』の人気はパンデミック状態。
BD付き書籍はAmazonで1位になり即予約品切れ、重版。OPはiTunes総合3位に。
ニコニコ動画の1話再生数は、ダブルミリオン突破。
ローポリゴンで作られた、ゆるーいノリの動物擬人化アニメ。
作っているスタッフは10人くらい。
突然の人気に、たつき監督も驚きを隠せない様子。
ちなみにアプリゲームとコミックが先に出ているが、人気が出る前に終了している(世界観は別)。
間の悪かった『けものフレンズ』コミック版、再開してください -アオシマ書店-
全肯定される優しい世界
記憶を失った「かばん(カバンを持っているので)」が、自分の種族を知るため、サーバル、ロボットのBOSS(LuckyBeast)と共にバスで旅をする、ロードムービー。
ヒト化した動物=「フレンズ」は、基本過去の習性のまま暮らしている。プレーリードッグは穴を掘るし、ビーバーは木を切り、コツメカワウソは好奇心旺盛。
それぞれ「できない」ことはとても多い。同時に「得意なこと」もなにかしらある。
サーバルは絶対に、個々を否定しない。
必ず誰もが、何かできると信じている。それぞれのフレンズに価値が対等にあると考えている。
だからいつも心から、「すごーい!」と感嘆する。
仕事や作業を「めんどうくさい」「つらい」と言わない。「楽しい」「面白い」と捉える。
完全肯定世界。
かばんは頑張って頭をひねってアイデアを出す度に、ほぼ毎回サーバルや他のフレンズに「すごーい!」と言われる。
疲れた脳に染みる。すごーい!って誰かに言いたい。言われたい。
プロデューサーの福原慶匡は、大人も子どもも楽しめる作品、深夜帯に仕事で疲れた大人が癒される作品を目指していた、と語っている。
「正直、困惑しています」けものフレンズ、プロデューサーが心境を語る BUZZ FEED
しかしよく見ると、癒やしだけではない何かがあることに、気付かされる。
人類史をなぞる
かばんとサーバルが旅をする「ジャパリパーク」は廃墟だ。
朽ち果てたたくさんの施設。放置されたままのアトラクション。文字の見えない看板。
2話から入ったエンディングでは、廃墟化した実在の遊園地と思われる写真が、次々と映し出される。
ファンの解析では、ハリケーンで廃園になったニューオーリンズのシックスフラッグス、93年閉鎖したカナダのボブロ島遊園地のダンスホールなどではないかと言われている。
終末感が漂う。
物語は、かばんが人類文化史を追うスタイルで描かれている。
1話:投擲、地図
2話:道具の使用、船、橋
3話:絵文字、音楽、店の概念
4話:通貨、ピクトグラム
5話:土木、建築
6話:集団行動、武器、戦争、スポーツ
7話:文字、調理、火の利用
毎回入る「アライさんとフェネックさん」のパート。
かばんたちの冒険を2週遅れで追っているという設定。
本編で語りきらなかった情報が、ここで後日補完されるという周到っぷり。
背景にこっそり観覧車が隠されていたり、絶滅した動物&絶滅危惧種の目にハイライトがなかったり、「動物を食べる」という発想がかばんにしかなかったり。
『けものフレンズ』に関わるスタッフは、細かいところにまだまだ謎を潜ませている。
なにかが終わったあとの世界のSFだ。
正直1話だけ見ると、この構造が全然わからないくらい、ゆるい。
続けて見ていった時にはじめて、1話に張り巡らされた設定に気づかされる。
人のいない入場ゲート。動物のサーバルを模した動き。使われないバス停。「狩りごっこ」の意味。
回を重ねるごとに、モリモリ伏線が回収されていく。
新事実が出る度に、過去回を見直して、見落としてないかチェックしたくてしょうがなくなる。
図書館と文字
7話は「自分がなんなのか」を知るかばんの旅の折り返し地点。
正体が「ヒト」だとはっきりわかった上に、「ヒト」が絶滅していることが判明する回だ。
かばんが看板に書かれた文字を読んだ時のサーバルのセリフ。
「えっ、かばんちゃん急に何言い出すの?」
読めないのではなく、文字という概念がそもそもフレンズにはない。
3話では絵文字を作成し、4話では非常口のマークを理解できた、かばん。
7話では図書館で本を読み、書かれたことを実践するまでに至った。
次の段階として、記録する可能性も出てきた。
火と文明
フレンズは「料理」を知らない。
ジャパリパークでは、動物(フレンズになる前)の個体に合わせた、栄養のある「ジャパリまん」が作られており、それを食べることで肉食獣は草食獣を、草食獣は草を食べずに済んでいる。
ミミズクたちが要求したのは、複数の食品を使った料理。
かばんは虫眼鏡で火をつける方法を、本で調べて知った。
ところが、ミミズクたちとサーバルは、小さな炎に近寄ることすらできない。
火を扱うことができるのは人間だけ。
ちなみに2人が乗っているバスは電気式。充電は太陽電池で行っており、3話のカフェもオール電化。作中では徹底して火に関わるものを使っていない。
オープニングでは「暗いところ」「寒いところ」が出て来る。
もしミミズクたちがかばんに渡した小さな箱が、火に関係するアレなら。
明るくて暖かい火を使える「ヒト」を描く、前段階かもしれない。
8話は、ペンギンアイドルPPP(ぺぱぷ)のライブ回。アイドルオタクのマーゲイが登場。
アイドル……芸術・芸能の話か。
あるいは宗教の話かも。
(たまごまご)