高齢化社会の新たな「インフラ」へ? 地方で活躍する「移動販売車」たち
[Jステーション-広島ホームテレビ]2017年2月15日放送の広島HOMEテレビ「Jステーション」で、地域に密着した買い物支援サービスが紹介されました。
買い物支援ともう1つの使命
日常の買い物が困難な状況に置かれている、60歳以上のいわゆる買い物弱者は国内におよそ700万人以上いると言われています。
そんななか人気なのが移動販売車。県内の島や山あいの町で活躍中の移動販売車に密着しました。
瀬戸内海の、ほぼ中央に位置する大崎上島町。
島の中を軽快に走る軽トラックは、JA広島ゆたかが運営する移動販売車JAおとどけたい。
公式サイトより
荷台には総菜や刺身などの食料品から洗剤やティッシュといった日用品までおよそ300種類の商品が積み込まれています。
JAおとどけたいがスタートしたのは3年前。
当時町内の高齢化率は45.6%で、車や免許を持たない高齢者が多い中、小売店などが次々と閉店していったそうです。
JA広島ゆたか経済部・柏田恒佳部長は「待っている商売より出て行く商売の方がいいんじゃないかいうこと、特に女性の方は品物を見て買い物したいという意見がかなりありまして」この移動販売のきっかけを話されていました。
買い物客の中には、家から出ること自体が目的になっている人もいます。
この3年間で利用者数・売り上げ額 約1.5倍アップとのこと。
移動販売が好調な要因の一つに、販売を担当するのが元JA職員でお客と顔なじみということもあげられます。
JA廣島ゆたかは今年4月にさらに一台導入予定で、大崎上島町を3台体制で巡回予定だそうです。
実は移動販売車には、買い物支援サービス以外にも大切な使命があるといいます。
JA広島ゆたか経済部の柏田さんは「少しでもお役に立てればということで、見守りというのも念頭に入れて今やっておるんです」とのこと。
一人暮らしの高齢者の安否確認も、役割のひとつとなっているとのことです。
"より近くて便利"をお届け、家まで声かけも...
県北の安芸太田町、ここでも移動販売車が人気です。
運営しているのは、コンビニエンスストアのセブンーイレブンジャパン。
セブン-イレブンジャパン北広島地区の石川雄三マネージャーは、「安芸太田町につきましては高齢化の比率が45%を越える状況の中で、お買い物にお困りの方に対しより近くて便利といったことで(2年前に)移動販売を開始しております」と話されていました。
セブンあんしんお届け便・広島戸河内インター店の原田晃太郎さんは、買い物袋を玄関口まで運んだり常連さんの姿がいつもの場所になければ家まで声をかけにいったりもします。
セブンあんしんお届け便のまわるルートは日替わりですが、唯一平日のお昼の休憩時間にあわせ、毎日地元の加計高校を訪れます。
加計高校の森田昴嗣先生によると、「食堂が無くてですね、売店で時々パン販売とかもあったんですけど、それもまちまちだったんで」とのこと。
その話がセブンイレブンへ伝わり、移動販売を提案されたことから導入を決めたそうです。
地域社会との共生をかかげ、国内での移動販売サービスをはじめたセブン-イレブンジャパン。
石川マネージャーは「地域に密着したサービスといったことで、1人ひとりのお客様のご要望を聞きながら高校などきめ細かく対応していきたい」と言われていました。
島で大活躍の移動販売車、災害時にも大きな役割が どこに誰が住んでいるのか?
大崎下島にある呉市豊浜町、最近ここにも移動販売車が登場しました。
実は大崎上島町での移動販売が好調なのをうけ、JA広島ゆたかは去年12月下旬豊浜町と隣の豊町にも導入、移動販売のエリアを拡大したのです。
二つの町の高齢化率はそれぞれ65%以上、また急傾斜地が多い地域なので移動販売車の需要は多いにあるとふんだからだそうです。
車をとめる地点の間隔は、わずか100mしかなくても巡回をするとのこと。
JAおとどけたい末田光昇さんは「この坂は年輩にとりましては上がりにくいので、来てほしいという要望がありましたら少しでも側に行って販売する」と言われていました。
地域をくまなくまわる移動販売車。
流通の専門家は、そのノウハウは災害時にも社会インフラとして大いに役立つとみています。
県立広島大学経営情報学部経営学科の粟島浩二教授は、「どこにどんな人が何人世帯住んでいるとか、避難の経路だとか災害時における被災者のみなさんの救済ということに情報が共有化できる」と言われていました。
これからますます問題となって行くであろう高齢化社会に、この取り組みが新しい道を示してくれるようで、期待できますね。(ライター・石田こよみ)