2012年アスレチックスは13ゲーム差から逆転優勝

 2016年のパ・リーグの戦いは、北海道日本ハムファイターズが大逆転で4年ぶりのリーグ制覇を成し遂げた。6月24日時点では福岡ソフトバンクホークスに最大11.5ゲーム差を付けられていたが、6月末から7月にかけて球団新記録となる15連勝をマークし、驚異の猛追で逆転優勝を達成した。これからクライマックスシリーズの戦いへと続いていくが、米国では過去にどのようなメークドラマがあったのかを振り返ってみよう。

 2012年のオークランド・アスレチックスは、6月30日時点でアメリカン・リーグ西地区の首位から13ゲーム差をつけられていた。そこから7月は19勝5敗、8月は18勝10敗と驚異的な追い上げを見せるが、シーズン残り10試合でまだ5ゲーム差という状況だった。

 そしてシーズンも残り3試合となり、相手は地区首位のテキサス・レンジャース。その直接対決で首位レンジャースをたたいて、オークランド・アスレチックスはついに首位に立つ。シーズン中で唯一地区首位に立ったのがシーズン最終日となり、劇的な形でレギュラーシーズンの戦いを終えた。

 毎年思うことだが、MLBは本当にうまくスケジュールを決めている。毎年のようにシーズン終盤に熾烈な戦いが繰り広げられ、こんなシナリオがよくできあがるなと感心させられるものだ。

 今シーズンもレギュラーシーズン最終日まで、翌日に「163試合目」となるワンデー・プレーオフが必要な可能性を残していた。結果的に上位チームが勝利したため、「163試合目」は行われずにレギュラーシーズンは無事に終了した。

 このように、最後の最後までもつれたり、大逆転優勝が起こるなどの劇的なシーズンとなった時には、球史に残る、または記憶に残るような名言が生まれやすいものだ。

1973年、メッツが成し遂げた大逆転から生まれた言葉は…

“It ain’t over till its over.”

 直訳すれば、「終わるまで終わらない」になるだろうか。この有名な台詞を残したのは当時ニューヨーク・メッツの監督を務めていたヨギ・ベラだ。

 1973年7月26日、ニューヨーク・メッツは地区首位のシカゴ・カブスから9.5ゲーム差で地区最下位に沈んでいた。だが、そこから驚異的な追い上げを見せて、レギュラーシーズンが終了する前日の試合で逆転地区優勝を決め、プレーオフ進出を果たした。そのまま快進撃は続き、ワールドシリーズ進出まで勝ち進んだ。最後まで何が起こるか分からなかったこのシーズンに、ベラはこの有名な台詞を呟いたのだ。

 今季もワイルドカード枠でプレーオフ進出を果たしたニューヨーク・メッツは、1973年のチーム状況を彷彿させると地元メディアも報じている。43年経過した今、ベラの言葉を実践できるかプレーオフの戦いにも注目だ。

 真剣勝負の中から生まれる有名な台詞は数多く存在する。北海道日本ハムファイターズが西武プリンスドームで優勝を決めた直後に、栗山英樹監督が残した言葉もとても印象的だった。

「ファイターズの選手たちは北海道の誇りです」

 逆転優勝劇という稀に見るシーンでは、その言葉がさらに重みを増す。このようなメークドラマが達成されたとき、どんな言葉が溢れ出てくるかによって我々もその戦いを最大限楽しむことができるのではないだろうか。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」新川諒●文