冷まして飲めばがんにならない、わけではない

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世界保健機関(WHO)の研究部門である国際がん研究機関(IARC)は、これまで発がんリスクがあるとされていた「コーヒー」にはリスクはほとんどなく、代わりに「マテ茶」や「65℃以上の飲み物」にリスクがあったと発表した。

IARCは人のがん発症リスクを高める環境要因を特定、評価するために、WHOが各国のがん研究専門機関と共同でフランスに設置しているワーキンググループ。人を対象に、発がん物質の暴露の影響を研究した論文を調査し、リスクの高さに応じて「グループ1(発がん性あり)」から「グループ4(発がん性なし)」に分類しているが、これが発がん性や発症率の高さを意味しているわけではない。

コーヒーは、1991年にIARCが「グループ2B(おそらく発がん性あり)」であると分類したが、その後の疫学研究や追跡調査から、リスクを認めるほどのエビデンスが確認されず、当時の調査結果には矛盾やバイアスがあったとし、グループ4に分類された。

新たにリスクありとされたのは、南米でよく飲まれている「マテ茶」と「65℃以上の温かい飲み物」で、IARCの発表では、どちらもマウスやラットを使った限定的な実験で、食道がんとの関係が示唆されている。

コーヒーのリスクも、温度によって異なっていたことを見落としていたとしており、温かい飲み物は、温度が上がるほどリスクが上昇するとされている。マテ茶は温度に関係なく、リスクが上昇するという。

ただし、一連の発表に対し、米国立衛生研究所などの研究機関は「火傷をさけるためにホットドリンクを冷ますのはともかく、食道がん発症リスクを下げたいのであれば、喫煙や飲酒をやめるべき」とコメントしている。

発表は2016年6月14日にされ、同日、英医学誌「Lancet」の腫瘍分野専門誌「Lancet Oncology」オンライン版にも掲載された。

参考文献
Carcinogenicity of drinking coffee, mate, and very hot beverages.
DOI: 10.1016/S1470-2045(16)30239-X PMID:27318851

(Aging Style)