キムチ+レモン+サッポロ一番=トムヤムラーメン酒飲みに好都合『極ラクめし』

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ヘヴィメタルと料理を掛け合わせた「究極のガッツリヘヴィメタルレシピ本」こと『メタルめし』(DU BOOKS)の著者、料理勉強家ヤスナリオのニューアルバム(新刊本)がリリースされた。その名も『極ラクめし』(グラフィック社)。


昨年(2015年)に、自らが腕を振るう店「高円寺メタルめし」をオープンした著者だが、今回のレシピ本のテーマはメタルではない。

「ひとりめし」「大雑把」「缶詰、コンビニ惣菜、レトルトを使っても」といった言葉が並ぶまえがきを読めば、本書のコンセプトは一目瞭然。要するに、カンタンに作った「すっ極ラクな料理」でも、自分で作るとウマイよね(だから作ろう)、ということだ。本書は、料理ビギナーに向けて書かれた、ヤスナリオ流「自炊のススメ」なのである。

身上は「早い、カンタン、旨い」


『極ラクめし』は、7つの章から成る。

第1章 深夜めし
第2章 ちょい呑みつまみ
第3章 週末気合めし
第4章 速攻5分めし
第5章 寂しくないひとり鍋
第6章 イベントひとりめし
第7章 炊飯器に無理してもらったレシピ

掲載されているレシピは、調理行程が少なく、基本的に短時間でできるものばかり。メタル的に言えば、"サメのように速く”と言ったところか(ACCEPT「Fast As A Shark

また材料も、スーパーやコンビニで容易に手に入る or 家に常備されていることの多いものばかりなので、思い立った時にササッと作ることができる。

キムチ+レモン=トムヤムクン味!?


前作『メタルめし』では、ごはんをつなぎに使ったハンバーグなど、その大胆なレシピに驚かされたものだが(『極ラクめし』にも収録)、その点では、今回もなかなかである。レトルト食品を使って調理行程をざっくり簡略化したり、本当はいろいろな調味料を組みわせて味付けするところを、焼肉のたれで代用してしまったりと、その力技的な料理の数々に「!」となる。焼肉のたれでホイコーローはわかるけど、肉豆腐は正直どうなのよ?とか。

その他、たっぷりの青のりで作ったソースでパスタを和える「のりベーゼ」、ココナッツオイルを混ぜ込み、パクチーの葉を載せた「グリーンカレー風おにぎり」、即席麺「サッポロ一番」にキムチとレモンを加えて作る「トムヤムラーメン」などには、度肝を抜かれた。

特に「トムヤムラーメン」に関しては、理屈はわからないではないが、「いやいや、これでトムヤムクン味にはならないでしょ!」と、どうしても信じられなかったため、じっさいに作ってみることにした。

作り方は簡単。サッポロ一番(塩)を普通に作るのだが、麺を入れる際、一緒にキムチを投入する。最後に付属の粉末スープ・ごまを入れ、くし切りレモンを添え、黒胡椒を振る。

これだけ。で、レモンを絞って食べる。

ん、んん……あれ? 確かにちょっとトムヤムっぽいかも。もちろん、厳密に言えば違うが、言わんとしていることはわかる。確かにトムヤム風だ。旨い、旨い。あと、キムチが入るぶんしょっぱくなるのでは?という懸念があったが、レモンでさっぱりするからか、ちょうどよかった。

酔っ払っていても作れるレシピ集?


すでに書いたように、『極ラクめし』は料理ビギナーに向けて書かれた本である。味付けなども、傾向として若者向けと言っていい。ゆえに、30代後半の、これまでそれなりに料理をしてきた人間(私)には、少々ヤンチャ過ぎる面があることも事実。

しかし、ちょっと視点を変えてみたら、一転してメチャクチャ"使える”本となった。

まずは、本書をパラパラとめくってみてほしい。すると、麺ものレシピがたいへん充実していることに気づくはずだ(30品近くある)。そして、その多くが短時間かつ簡単に作れるものばかり。極端なことを言えば、酔っ払っていたって作ることができる。

そう、本書は、見方を変えれば「酒の〆レシピ」の宝庫なのだ。先ほど紹介した「トムヤムラーメン」なんかは、味的にもドンピシャだし、包丁も使わないから、かなり酩酊していても作ることができそうだ。

個人的に、飲んだ後にぜひ食べたいと思ったのが「フォーうどん」だ。さすがに「トムヤムラーメン」よりは手がかかるが、とはいえ、このくらいは手間のうちに入らないだろう。

作り方は、鶏むね肉、ニラ、小ねぎ、トマト、レモンを切り、あとは順に鍋に投入していくだけ。




これも、死ぬほど酔っ払ってさえいなければ、飲んで帰ったあとでも作れる。酒のあとは、やはりこういうさっぱりクリアな味がいい。温かい鶏スープが胃の腑にじんわり染みて、何ともホッとする。野菜がたくさん摂れるのもいい。レシピでは、味付けは鶏がらスープの素だけだが、好みで塩を少し足してもいいかもしれない。

その他にも、冷凍うどんを使ったレシピが秀逸で、油の代わりにマヨネーズで炒める「ナポリうどん」(要するに、うどんで作るナポリタン)も、コクがあって旨かった。




普段あまりマヨネーズを食べないため、ちょっと抵抗があったが、作ってみたらマヨ感はほぼなかった。また、インスタントコーヒーを入れて深みを出すのは、ルーから作るカレーではおなじみのテクニックだが、ナポリタンでも使えるとは思ってもみなかった。

冷凍うどんは、レンジで解凍して使うか、そのまま入れてしまうので、スパゲッティのように別に茹でる必要がなく、片付けもラクチンである。もっとも酔っていたら、片付けずに寝てしまうかもしれないが……。

そんなわけで、料理ビギナーズのみならず、酒飲みにもちょっと推薦してみたくなるレシピ本なのであった。
(辻本力)