どこか懐かしさを感じさせる90年代の東京の様子を記録した動画がYouTubeに多数投稿されている。投稿しているのはフォトジャーナリストのサクソンさんだ。


今や東京では見ることのない有人改札(サクソンさん撮影)

今あるものが変わってしまう前に

1984年から東京に住んでいるサクソンさんは、2008年頃から動画の投稿を始めた。それらの動画は主に1990年から93年の間に撮影されたもので、東京の様々な駅や街並みが記録されている。定期的に新たな動画がアップロードされており、そのほかの年代に撮影されたものも含めると1000本を超える膨大な数だ。

これらは新宿と渋谷で撮影された動画だ。一見すると現在とそう変わりはないように見えるが、駅の施設に目を向けると、ホームドアが無く、改札も有人だったりと、かつての駅の姿を垣間見ることが出来る。

当時と現在の日本の違いについて、サクソンさんは

「一見するとあまり景色に変化がない場所でも、そこを歩く人々は以前とは全然違うので、雰囲気が大きく変わったと思う」

と、かつて頻繁に足を運んだ渋谷を久しぶりに訪れた時の経験を交えて語った。

現在ではスマホを使い気軽に動画撮影できるが、カメラ付携帯電話すら発売されていない当時、日常の風景を撮影するサクソンさんは珍しい存在だったかもしれない。

「今ではみんなが当たり前に撮影するようになったけど、90年代当時は一般的じゃなかった。
当時、東京の街はものすごい速さで変化していて、みんながひたすらに新しいものを求めているように見えた。だから、今あるこの風景も長くは残らないんじゃないかと思い、手元に撮影機材もあったから、日常の景色を記録することにしたんだ」
「90年代当時、自分が住む場所が不可逆的に変わってしまう前に、それを記録する必要があると感じた」

と、記録のきっかけについて語った。

他にも、こちらの動画では、現在以上に人が詰め込みながら走る電車を見ることが出来る。

既に満員の電車に、更に1両分の人間を詰め込んでいるかのような光景だ。満員電車は現在も健在だが、それでも以前よりは解消されたようだ。

現在の東京も、大きな建物が新たに建設されたり、逆に壊されたりなどで、街並みは日々変わっている。当たり前として受け止めていた景色もいつ変わるかは分からない。少し立ち止まって、手に持った機械で自分の好きな街並みを写真や映像として記録しておくことで、その時の雰囲気や気持ちを未来に向けて保存できるかもしれない。