染谷俊之 2.5次元舞台で輝きを放つ男の意外な素顔
「2.5次元の世界には欠かせない存在」。年明け1月5日より上演となる舞台『カードファイト!! ヴァンガード』〜バーチャル・ステージ〜の資料での、染谷俊之の紹介文である。まさにこの言葉通りミュージカル『テニスの王子様』、舞台『BASARA 第2章』、『薄桜鬼』に『弱虫ペダル』と人気シリーズに身を投じ、見た目も中身も個性的なキャラクターたちを見事に体現してきた。今年だけで出演した舞台は6本!さらに主演映画も立て続けに公開されるなど、活躍の場を広げ続ける人気俳優の素顔に迫る!
撮影/平岩亨 ヘア&メーク/藤沢輝守
取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
――2.5次元の舞台は様々な題材を扱っていますが、もともとカードゲームである「カードファイト!! ヴァンガード」の舞台化には驚きました。
僕もカードゲームとして存在は知ってましたが、舞台化を知らされたときは「どうやって?」という驚きがありました。カードゲームの舞台化っておそらく初めてですが、台本を読んで「なるほど、こうやるのか!」と衝撃を受けました。
――染谷さんが演じるのは、実力者たちが集う組織「フーファイター」の総帥として君臨する雀ヶ森レンですね。
ビジュアルのインパクトがすごいですよ。赤髪ロングで、肩が張っていて、ロングコートにスカートのようなものを履いてます…という説明では掴みにくいと思いますが(笑)、とにかくすごい格好になってます。
――これまでも個性的なキャラクターを演じ、様々な衣裳を着てきましたが…
今回はその中でも、インパクト強いです。最初は正直、ちょっと恥ずかしかったですね(笑)。まだ着慣れていないのですが、衣裳に着られるのではなく、しっかりと着こなしたいと思います。
――2015年はずっと舞台の稽古と公演の繰り返しで、そのあいだを縫って映画の撮影もあって、かなりお忙しかったのでは?
充実した毎日を送らせてもらいました。本当にすごく、目まぐるしい日々の連続で、気がついたらもう年末という感じで…。
――『薄桜鬼SSL〜sweet school life〜THE STAGE』(上演中)、年明けの『カードファイト!! ヴァンガード』(1月5日〜)、そして『私のホストちゃん THE FINAL 〜激突!名古屋栄編〜』(1月29日〜)と公演の間が1か月未満の場合もあるんですね。
1か月ガッチリと稽古できれば嬉しいんですが、作品によっては2週間ほどしか稽古場に入れない場合もあります。遅れて参加するからには、迷惑を掛けないようにきちんとセリフを頭に入れておかないといけないので、集中することを心掛けてます。
――いったん、公演が始まってしまうと、かかりきりになってしまい、次の公演のことを考えるのも大変なのでは?
でも、翌日が夜の公演だけなら、早めに帰って次の公演の台本を一通り読んで寝るようにします。昼と夜の2公演の日も、公演の合間に少しでも時間を作るように心がけて…。
――想像以上にハードですね!
いやいや、僕は死ぬこと以外はすべてかすり傷だと思ってるんで大丈夫ですよ。
――いま、サラリとすごいことおっしゃいました!(笑)
まあ、心臓が動いてれば大丈夫だろうと(笑)。
――そこまでの思いで取り組めるのは、やはり舞台が好きだから?何にそこまで惹かれるんでしょう?
一番の魅力は臨場感です。俳優同士のやり取りで生まれるものなので、同じ公演でも毎回、別の作品と言えるくらいお芝居って違ってきます。それは、稽古の段階から言えますね。映像作品は基本、リハーサルをやって本番をやって、それで問題なければおしまいですが、舞台は稽古も含め、何度も繰り返して、いろんなことを試すこともできます。
――なるほど。
舞台上の芝居というのは、登場人物たちの人生の断片であり、お客さんはその人生を客席からのぞき込んでいるのだと思います。でも、それはごく一部にすぎず、舞台の外の人生もちゃんと存在しています。そこをじっくりと作りこむことで、役柄に深みが増していく。そうやって役作りを深く、濃くしていけるのは、舞台ならではの魅力ですね。
――特に2.5次元の作品に臨む上で、他の作品と違うことや特に心掛けていることはありますか
2.5次元だからと言って、特別にアプローチを変えることはありません。ただ、アニメであれゲームであれ、単なる原作の声マネでは、上っ面の芝居になってしまう。繰り返しになりますが、どんな原作であれ、そこに描かれていない部分を濃くしていく作業が大事だと思いますね。
――見えない部分での積み重ねが、確実に芝居に影響や変化を与えている。
例えばテニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)って、主人公のいる青学 をはじめ、いろんな学校が登場しますが、普段から学校ごとの結束力がすごく強いんです。だから千秋楽は卒業のようで泣けてくるし、それを感じてお客さんも泣いちゃう。
――熱が直接、伝わってくる。
あんまり思い出したくないですけど(笑)、2ndシーズンからは、稽古前の準備の段階で合宿に行かされましたからね…鬼しごかれるんですよ(苦笑)。でもその経験で、チームの結束が高まるところはありましたね。
――これだけ次々と2.5次元の舞台への出演を求められることについて、ご本人はどう捉えてますか?
どうなんでしょうねぇ(笑)。ありがたいことです。ただ、僕自身はなぜなのかよく分かんないです。先ほども言いましたが、オリジナル舞台でも2.5次元作品でも、むしろ、変わらないようにしているので…。ホント、何でなんでしょう?(笑)
――そもそも、芸能界に飛び込んだきっかけは?
僕は、どんなことでも見るよりもやりたいという気持ちが強いんです。決して目立ちたがり屋ではないんですが…。中学のときに映画『ウォーター・ボーイズ』を見たんですよ。
――妻夫木聡さん主演の青春映画ですね。
もともと、学校自体がすごく好きで、男子で集まってバカやるのとか大好きで(笑)。映画であの青春物語を目の当たりにしたとき、「面白い」という感想以前に「何でおれはそっち側、スクリーンの中にいないんだ?」と思ったんです、なぜか(笑)。
――出る側の人間になりたいと?
でも、当時は行動力も勇気もありませんでした。その後、高校、大学と進んで、学校が好きなら教師になろうと思ってました。当時、うちの事務所の社長がブティックを経営してまして、たまたまうちの母がそこに買い物に行ったんです。そこで社長と知り合って「ウチの子はどうですか?」と勝手に息子を売り込みまして…(笑)。
――お母さまの方は行動力も勇気もあったんですね(笑)。
それで事務所に所属し、大学に通いながらちょっとだけ芸能活動をしてました。一番の夢は教師になることだったので、本当に趣味程度のつもりで…。
――具体的にはどんな活動を?
ドラマや映画のエキストラとかが多かったですね。でもそのときも、軽い気持ちと言いつつ、メインキャストの俳優さんたちを見ながら、やっぱり「何でおれはあっちじゃないんだ?」と思ってましたね(笑)。
――おれにもセリフをよこせ!という気持ち?(笑)
寒い日の撮影だと、メインキャストの方たちはベンチコート着て、近くにストーブが置かれてるけど、僕らは寒空の下、突っ立ったまま。そこで、なにくそ根性が芽生え始めてきましたね。
――やはり、心のどこかに俳優になりたいという火種が…
あったんでしょうね(笑)。そこから、だんだんと仕事が増えてきたんですが、そうなると大学との両立が難しくなってきて…。教職を取るには教育実習に行かないといけないんですが、その段階でドラマ出演が決まって、スケジュールが重なってたんです。
――教職を取るか?俳優を取るか?究極の選択ですね。
そこで人生は一度きりだからと芸能界を選びました。
――俳優として生きていこうと覚悟を決めた?
いや、その段階ではそこまで深くはなかったです。正確には「一度きりの人生だから、ちょっと芸能界をやってみようか」と(笑)。「一生この道で…」というほどの覚悟はまだなかったですね。
撮影/平岩亨 ヘア&メーク/藤沢輝守
取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.
“死ぬこと以外はすべて“かすり傷”
――2.5次元の舞台は様々な題材を扱っていますが、もともとカードゲームである「カードファイト!! ヴァンガード」の舞台化には驚きました。
僕もカードゲームとして存在は知ってましたが、舞台化を知らされたときは「どうやって?」という驚きがありました。カードゲームの舞台化っておそらく初めてですが、台本を読んで「なるほど、こうやるのか!」と衝撃を受けました。
――染谷さんが演じるのは、実力者たちが集う組織「フーファイター」の総帥として君臨する雀ヶ森レンですね。
ビジュアルのインパクトがすごいですよ。赤髪ロングで、肩が張っていて、ロングコートにスカートのようなものを履いてます…という説明では掴みにくいと思いますが(笑)、とにかくすごい格好になってます。
――これまでも個性的なキャラクターを演じ、様々な衣裳を着てきましたが…
今回はその中でも、インパクト強いです。最初は正直、ちょっと恥ずかしかったですね(笑)。まだ着慣れていないのですが、衣裳に着られるのではなく、しっかりと着こなしたいと思います。
――2015年はずっと舞台の稽古と公演の繰り返しで、そのあいだを縫って映画の撮影もあって、かなりお忙しかったのでは?
充実した毎日を送らせてもらいました。本当にすごく、目まぐるしい日々の連続で、気がついたらもう年末という感じで…。
――『薄桜鬼SSL〜sweet school life〜THE STAGE』(上演中)、年明けの『カードファイト!! ヴァンガード』(1月5日〜)、そして『私のホストちゃん THE FINAL 〜激突!名古屋栄編〜』(1月29日〜)と公演の間が1か月未満の場合もあるんですね。
1か月ガッチリと稽古できれば嬉しいんですが、作品によっては2週間ほどしか稽古場に入れない場合もあります。遅れて参加するからには、迷惑を掛けないようにきちんとセリフを頭に入れておかないといけないので、集中することを心掛けてます。
――いったん、公演が始まってしまうと、かかりきりになってしまい、次の公演のことを考えるのも大変なのでは?
でも、翌日が夜の公演だけなら、早めに帰って次の公演の台本を一通り読んで寝るようにします。昼と夜の2公演の日も、公演の合間に少しでも時間を作るように心がけて…。
――想像以上にハードですね!
いやいや、僕は死ぬこと以外はすべてかすり傷だと思ってるんで大丈夫ですよ。
――いま、サラリとすごいことおっしゃいました!(笑)
まあ、心臓が動いてれば大丈夫だろうと(笑)。
超ハード「テニミュ」合宿がもたらしたもの
――そこまでの思いで取り組めるのは、やはり舞台が好きだから?何にそこまで惹かれるんでしょう?
一番の魅力は臨場感です。俳優同士のやり取りで生まれるものなので、同じ公演でも毎回、別の作品と言えるくらいお芝居って違ってきます。それは、稽古の段階から言えますね。映像作品は基本、リハーサルをやって本番をやって、それで問題なければおしまいですが、舞台は稽古も含め、何度も繰り返して、いろんなことを試すこともできます。
――なるほど。
舞台上の芝居というのは、登場人物たちの人生の断片であり、お客さんはその人生を客席からのぞき込んでいるのだと思います。でも、それはごく一部にすぎず、舞台の外の人生もちゃんと存在しています。そこをじっくりと作りこむことで、役柄に深みが増していく。そうやって役作りを深く、濃くしていけるのは、舞台ならではの魅力ですね。
――特に2.5次元の作品に臨む上で、他の作品と違うことや特に心掛けていることはありますか
2.5次元だからと言って、特別にアプローチを変えることはありません。ただ、アニメであれゲームであれ、単なる原作の声マネでは、上っ面の芝居になってしまう。繰り返しになりますが、どんな原作であれ、そこに描かれていない部分を濃くしていく作業が大事だと思いますね。
――見えない部分での積み重ねが、確実に芝居に影響や変化を与えている。
例えばテニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)って、主人公のいる
――熱が直接、伝わってくる。
あんまり思い出したくないですけど(笑)、2ndシーズンからは、稽古前の準備の段階で合宿に行かされましたからね…鬼しごかれるんですよ(苦笑)。でもその経験で、チームの結束が高まるところはありましたね。
――これだけ次々と2.5次元の舞台への出演を求められることについて、ご本人はどう捉えてますか?
どうなんでしょうねぇ(笑)。ありがたいことです。ただ、僕自身はなぜなのかよく分かんないです。先ほども言いましたが、オリジナル舞台でも2.5次元作品でも、むしろ、変わらないようにしているので…。ホント、何でなんでしょう?(笑)
教師か?俳優か?人生の選択
――そもそも、芸能界に飛び込んだきっかけは?
僕は、どんなことでも見るよりもやりたいという気持ちが強いんです。決して目立ちたがり屋ではないんですが…。中学のときに映画『ウォーター・ボーイズ』を見たんですよ。
――妻夫木聡さん主演の青春映画ですね。
もともと、学校自体がすごく好きで、男子で集まってバカやるのとか大好きで(笑)。映画であの青春物語を目の当たりにしたとき、「面白い」という感想以前に「何でおれはそっち側、スクリーンの中にいないんだ?」と思ったんです、なぜか(笑)。
――出る側の人間になりたいと?
でも、当時は行動力も勇気もありませんでした。その後、高校、大学と進んで、学校が好きなら教師になろうと思ってました。当時、うちの事務所の社長がブティックを経営してまして、たまたまうちの母がそこに買い物に行ったんです。そこで社長と知り合って「ウチの子はどうですか?」と勝手に息子を売り込みまして…(笑)。
――お母さまの方は行動力も勇気もあったんですね(笑)。
それで事務所に所属し、大学に通いながらちょっとだけ芸能活動をしてました。一番の夢は教師になることだったので、本当に趣味程度のつもりで…。
――具体的にはどんな活動を?
ドラマや映画のエキストラとかが多かったですね。でもそのときも、軽い気持ちと言いつつ、メインキャストの俳優さんたちを見ながら、やっぱり「何でおれはあっちじゃないんだ?」と思ってましたね(笑)。
――おれにもセリフをよこせ!という気持ち?(笑)
寒い日の撮影だと、メインキャストの方たちはベンチコート着て、近くにストーブが置かれてるけど、僕らは寒空の下、突っ立ったまま。そこで、なにくそ根性が芽生え始めてきましたね。
――やはり、心のどこかに俳優になりたいという火種が…
あったんでしょうね(笑)。そこから、だんだんと仕事が増えてきたんですが、そうなると大学との両立が難しくなってきて…。教職を取るには教育実習に行かないといけないんですが、その段階でドラマ出演が決まって、スケジュールが重なってたんです。
――教職を取るか?俳優を取るか?究極の選択ですね。
そこで人生は一度きりだからと芸能界を選びました。
――俳優として生きていこうと覚悟を決めた?
いや、その段階ではそこまで深くはなかったです。正確には「一度きりの人生だから、ちょっと芸能界をやってみようか」と(笑)。「一生この道で…」というほどの覚悟はまだなかったですね。