編集部が選んだ新潟県ベストゲームTOP5

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 2015年新潟県高校野球は10月12日に行われた「第133回北信越地区高等学校野球大会」2回戦で、新潟県の第1代表・日本文理は、長野県代表の佐久長聖に善戦むなしく惜敗。これにより、2015年の新潟県の高校野球公式戦は全て終了し、来春に向けて各校、力を蓄える長い冬に突入した。

 今回、2015年の春、夏、秋の大会で、編集部が実際に取材した30以上もの試合の中から、ベストゲームを5つ選び、ランキング形式でご紹介。なぜその試合を選んだのか、解説を読めば、その試合の熱気が蘇ってくるはず!

5位:秋季新潟県大会準決勝 村上桜ヶ丘vs東京学館新潟

東京学館新潟バッテリー

緊迫した投手戦!均衡を破った村上桜ヶ丘のクリーンアップ

 ノーシードから勝ち上がってきた東京学館新潟と、名将・松田 忍率いる公立の雄・村上桜ヶ丘による秋季県大会準決勝。勝てば、北信越大会出場が決定する大事な一戦は、東京学館新潟・山田 佳偉(2年)、村上桜ヶ丘・山田 天斗(2年)の両エースが力投し、5回まで0対0と緊迫した展開。そんな均衡を破ったのは、村上桜ヶ丘のクリーンナップだった。

 前チームから4番を張る主砲・西野 護(2年)をケガで欠きながらも、3番・長谷川 誉(2年)が先制タイムリーを放つと、西野の代わりに4番に入った須貝 裕次郎(2年)、さらに5番・石栗 飛雄馬(2年)もヒットでつなぐなど、見事な集中打でこの回一挙4得点。投げては、山田 天斗−稻垣 健太(2年)が完封リレー。主砲を欠きながら、補って余りあるクリーンナップのここぞの集中打が見事だった。(試合レポート)

4位:第97回新潟大会4回戦 北越vs新発田農

最後までマウンドを守る!エースのプライドとベンチの思いが一つに

 昨秋の大会3位の北越と、春の大会で上越と激戦の末延長で惜敗した新発田農による4回戦屈指の好カード。1点を争う好ゲームのハイライトは、新発田農1点ビハインドで迎えた7回表。ここまで100球近く投げてきた新発田農エース・西山 塁(3年)は、この回もマウンドに上がるが、投球練習中にバランスを崩すなど、明らかに様子がおかしい。

「西山〜大丈夫か?ダメなら審判に言え!」新発田農・近 昌芳監督がベンチから声を掛けるが、西山は右手でそれを制し、投球練習を続ける。この回、気迫のピッチングで北越打線を三者凡退に抑えるが、続く8回は県内屈指の強力打線につかまり2失点、9回にも1失点。だが新発田農のベンチは動かない。9回、西山は最後の打者をショートゴロに打ち取り味方の反撃を待つが、その裏も0点に抑えられ試合終了。

 炎天下の中、フラフラになりながら124球を投げ切ったエースの力投に、打線が報いることができなかったが、ベンチ、ナイン、そしてエースの思いが1つになった見事なゲームだった。(試合レポート)

[page_break:3位:第97回新潟大会準決勝 日本文理vs新潟 / 2位:第97回新潟大会準決勝 中越vs小出]3位:第97回新潟大会準決勝 日本文理vs新潟

日本文理・星 兼太選手

善戦する進学校の夢を打ち砕く、県内No.1打者の一振り

 8回裏、新潟・エースの諸橋 慶多(3年)が投じた93球目。甘く抜けた変化球。一瞬時が止まったような感覚。グッとこらえ、引きつけて強振一閃。県内No.1の強打者・星 兼太(3年)の放った打球は鋭いライナーでライトスタンドに突き刺さった。膠着した試合を決定づける貴重な勝ち越し本塁打。

 試合前、連投を重ねる新潟・エースの諸橋が、強力日本文理打線相手にどこまで抑えられるかがポイントと言われていたが、下馬評では日本文理が圧倒的有利。だがそんな周囲の声を諸橋は自らのピッチングで払拭した。

 ストレートを低めに集め、スライダーを効果的に使い、強力日本文理打線に的を絞らせない。バックも、好守備で諸橋を盛り立て、1対1のまま終盤を迎えた。新潟ベンチ・スタンドの応援団は大盛り上がり、判官贔屓の客席も「何かが起こるのではないか…」とジャイアントキリング(大番狂わせ)を期待した。

 そして迎えた8回裏、そんな球場の雰囲気を断ったのは、星だった。この打席まで外野フライ3つと諸橋に抑えられていたが、値千金の一打でチームの窮地を見事に救った。1対3というスコア以上に白熱した好ゲームだった。(試合レポート)

2位:第97回新潟大会準決勝 中越vs小出

王者中越相手に堂々たる戦いぶり!白熱した一進一退の攻防

 ノーシードながら、糸魚川、上越、新潟商、村上桜ヶ丘という強豪を倒し、44年ぶりにベスト4に進出した小出。対戦するのは、前年秋の新チームから公式戦で1試合も負けていない絶対王者・中越。

 前年秋に対戦し、0対1で惜敗を喫した小出はリベンジを誓い、この試合に臨んだ。小出の先発はベスト4入りの立役者、エース・庭山 希(3年)。庭山は立ち上がりを攻められ、先制を許す。その後は強力中越打線を抑えるが、5回に追加点を許し、リードを3点に広げられる。だが、ここで小出は脅威の粘りを見せる。6回に1点を返すと、7回にも4番・和田 康平(3年)のタイムリーで1点差。さらに中越のまずい守備もあり、同点に追いつく。

 だが、炎天下の中、連投で1人投げ続け、この日も100球を越えた庭山の体力は限界だった。キレのいいストレートはなりを潜め、変化球は高めにぬけ出す。強力中越打線は見逃さなかった。この回、打者一巡の猛攻で一挙7点。同点から一気にコールドゲームになってしまった。

 試合後、スタンドへ頭を下げる小出ナイン。絶対的王者相手に一歩も譲らない小出の見事な戦いぶりに、スタンドを訪れた観客は惜しみない拍手を送った。(試合レポート)

[page_break:1位:秋季新潟県大会4回戦 上越vs日本文理]1位:春季新潟県大会4回戦 上越vs日本文理

上越・飯塚 亜希彦投手

前年秋のリベンジ達成!上越・飯塚、成長を証明

 この試合の8カ月前、新チームになって初の公式戦となる秋季大会1回戦で、日本文理は1人の投手に苦しめられた。

 強力日本文理打線の前に立ちはだかったのは、上越高校エース・飯塚 亜希彦(3年)。2014年夏の大会では、第3シードの新潟産大附のエース・前川 哲(現新潟アルビレックスBC)に投げ勝つなど、新チームでの活躍を予感させるものがあった、この世代屈指の好投手だ。勝てばベスト8入り、北信越大会が近づくというこの試合、序盤から飯塚のピッチングは冴え渡った。キレのあるストレートを両サイド低めに制球し、日本文理打線に全く的を絞らせない。7回まで99球、2安打という完璧なピッチング。

 だが8回、1つの死球をきっかけに集中打を浴び、まさかの4失点。2対4で上越は敗れた。この敗戦を機に、上越ナインは臥薪嘗胆の気持ちを持って冬場厳しい練習に明け暮れた。

 そしてリベンジの機会は意外に早く訪れる。春季大会4回戦、上越は初回から打線が爆発。日本文理先発の山口 尚輝(3年)を攻め、打者一巡の猛攻で一挙5得点。序盤から上越有利に試合を運ぶが、この試合の最大のハイライトは何と言っても、3回表二死二塁で3番・星 兼太(3年)を迎えた場面だろう。ストレートで押す飯塚と、ファールで粘る星。迎えた5球目、飯塚の投じたボールを、星はとらえられず、バットが空を切った。チェンジ・オブ・ペース。

「日本文理の強打者をイメージして冬の間練習した」というブレーキの効いたチェンジアップでこのピンチを三振に切って取った。その後も得点を許しながら、要所を締めるピッチングで9回5失点完投。前年秋のリベンジを果たした。

 この試合実に13ものアウトがフライだったのは、飯塚の球威に差し込まれたためといえるだろう。まさに、前年秋からの成長を証明した見事なピッチングだった。(試合レポート)

  高校野球には、全てのゲームにその試合に臨むまでの背景がある。試合の中では、球児の純粋な思いがあり、監督コーチの駆け引きがあり、保護者・OBら関わる人々のさまざまな思いが交錯し、ドラマが生まれる。それらが多くの人々の心を打つのは、全員が一生懸命だからだろう。全てのドラマを追うことは物理的に不可能だが、これからも自分の目で見た新潟県の高校球児による筋書きのないドラマを、少しでも多くの人々に伝えられるように精進したい。

(文・編集部)

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