6節のインテル戦を4-1でモノにし、勝点を15まで伸ばしたフィオレンティーナ。99年2月14日以来、実に5704日ぶりのセリエA首位に浮上した。(C)Alberto LINGRIA

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 セリエA6節最大の注目カード、9月27日のインテル対フィオレンティーナ戦は、アウェーのフィオレンティーナが前半23分までに3ゴールを叩き込み、それまで開幕5連勝で首位に立っていたインテルを4-1で粉砕。これで5勝1敗としたヴィオラ(フィオレンティーナの愛称)が、首位に立った。
 
 フィオレンティーナがセリエAの首位に立ったのは、名将ジョバンニ・トラパットーニ監督の下、ガブリエル・バティストゥータ、エジムンド、マヌエル・ルイ・コスタらを擁して、シーズン後半までスクデット争いを演じた99年2月以来、約15年ぶりのこと。2002年の破産・消滅の後、現オーナーのデッラ・ヴァッレ兄弟によって新たに発足した「ACFフィオレンティーナ」にとっては、初めての首位である。
 
 しかし、今から1か月あまり前の開幕時点では、ヴィオラがここまでの躍進を果たすとは、誰ひとり期待も想像もしていなかったに違いない。なにしろ夏のカルチョメルカート(移籍市場)は散々な状況で、クラブ首脳陣はサポーターからの厳しい批判に晒されていたほどだったのだから。
 
 ヴィンチェンツォ・モンテッラ前監督が契約延長をめぐるトラブルで退任したのにはじまり、モハメド・サラーが残留(チェルシーからのレンタル延長)を拒否してローマに、契約書にサインする直前だったセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチがラツィオにそれぞれ“逃亡”。さらに、右ウイングのレギュラー候補筆頭だったホアキン・サンチェスまでが、開幕目前に古巣ベティスへの復帰を強引に要求して勝ち取るなど、契約延長を拒否してフリーエージェンドでユベントスに移籍したGKネトを含めると、何と5人に“逃げられる”という困難に直面した。
 
 新任のパウロ・ソウザ監督はメジャーリーグでの実績が皆無なうえ、主な新戦力は国際的には無名に近いニコラ・カリニッチ、他クラブからの“お下がり”感が強いマリオ・スアレスやヤクブ・ブワシュチコフスキ、ダビデ・アストーリなどインパクトに欠けた。サポーターへのアピールという点では、明らかに物足りなかった。
 
 実際、メルカート終了後最初のホームゲームだった3節のジェノア戦では、ティフォージ(熱狂的サポーター)が陣取るゴール裏に「貧乏人のメルカート」という首脳陣批判の横断幕が張り出されたほどだ。
 しかし、フィオレンティーナは、明確な戦術的アイデンティティーを持ったモダンでインテンシティーの高いサッカーで、開幕からポジティブな結果を積み重ねていった。
 
 開幕戦でミランに2-0と完勝し、続くアウェーのトリノ戦では先制しながら後半に3点を喫して逆転負けに終わったが、その後はわずか1失点で4連勝。4-1と大勝したインテル戦は、チームの現時点における完成度の高さ、そしてさらなるポテンシャルをはっきりと示す内容だった。
 
 モンテッラが率いた昨シーズンまでのフィオレンティーナは、ボールポゼッションに基盤を置くリズムがやや遅めでテクニカルなスタイルが特徴だった。
 
 ボールを失うと比較的早いタイミングで自陣にリトリートし、そこから組織的なプレッシングで奪回を目指すという守備コンセプトを持っていたのだ。
 
 しかしP・ソウザ新監督は、攻撃の局面におけるポゼッション志向を保ちながらも、ネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)では、即時奪回を目指す敵陣でのハイプレス、そして守備の局面でも積極的に前に出る超攻撃的プレッシングを導入。90分間を通してハイペースを保つインテンシティーの高いスタイルへとチームを進化させたのだ。
 
 指揮官P・ソウザは、母国ポルトガルで生まれたコーチングメソッドである「戦術的ピリオダイゼーション」を採り入れている。