提供:週刊実話

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 --膨大な予算や奇抜なデザインで批判が殺到した新国立競技場問題は、どう見ますか。

 「オリンピックを招致した以上、しっかりとやればいい。総理が福島の原発は完全に制御されているというウソまで言って招致した以上、成功させなくちゃいけない。しかし、新競技場にべらぼうなお金がかかり、完成後も維持費に莫大なコストがかかるという考え方は間違っている。きらびやかさはいらない。そもそも、オリンピックは世界が戦争をせず仲良くするためのスポーツの祭典であって、その原点に戻ることです。私が自民党の政調会長や大臣時代は、こうしたドタバタ劇は決して起こらなかった。今回の問題を見ていると、自民党の政治家も官僚も、整理して物事を推進していくパワーが極端に弱っている」

 --このままいけば、2009年に民主党政権が誕生したようなことが、来年の参院選で起こらないとも限らない。

 「今日の自民党の暴走を許している元凶は、民主党にあります。この前の衆院選挙の自民党の大勝も、国民は自民党が良くて自民党に投票したのではない。民主党がダメだから自民党に投票せざるを得なかった。さきほども言ったように、国民は反原発、反消費税ですが、それでも選挙では自民党に投票してしまう。追い込まれているのは実は民主党で、これでは'09年のようなことは起きません。民主党はね、ブレーンストーミングのようなことで満足していてもダメなんです。安保法制法案では、民主党議員が決起できるかどうかが鍵。衆参国会議員が全員辞職する覚悟で臨まなければならない」

 --仮に民主党の衆院議員と参院議員が全員辞職すると何が起きるのか。

 「安保法制法案は採決できない。議長が、そうした異常事態で採決することを許さないでしょう。そして民主党の職を賭した決起は国民に本気度として伝わり、この国の政治の在り方を変えることになりますよ」

 --今回の集団的自衛権のための安保法制法案の元になっているのは、中国の台頭、つまり対中問題が根底にあると思います。安倍政権の対中政策をどう見ますか。

 「中国と日本の経済と文化の親密度は極めて大きく、高い。それを、尖閣という岩山一つの取り合いで互いに引くに引けずに戦争などとなれば、日中どちらも大変な損失を被ることになり、実に馬鹿げている。領土を拡げる拡げないなどという発想は帝国主義時代の発想で、軍事力行使などあってはならないし、あるはずがない。米中関係も密接で、日本は対中においてはアメリカの競争相手でもある。日本が対中で都合が悪くなれば、アメリカは得をするわけです。その関係の中で、起こさなくてもいい脅威をもって、戦争で国際紛争を解決しないという国是を変える法律を作るのは、まったくの狂気の沙汰。民主党もさることながら、このままいけば自民党の未来はない。安倍総理も哀れな末路となりかねませんよ。晋三よ、国滅ぼしたもうことなかれ、と強く進言したい」

亀井静香=かめい・しずか
1936年広島県出身。衆院議員(無所属)。東大卒業後、警察庁入庁。'79年、政界転出。'05年、国民新党結成。運輸、建設各大臣、自民党政調会長等を歴任。現在、死刑廃止を推進する議員連盟会長を務める