ニューヨークのマイケル・ブルームバーグ市長は、もちろん、大統領選への立候補を真剣に考えているわけではないが、もしかしたら、共和党や民主党の2大政党に属さない独立候補として出馬し、勝利した最初の大統領という歴史を作ることにまだ、夢を持っているかもしれない。

  ブルームバーグ市長は8月21日の記者会見で、市長が今週、アイルランドを訪問することと大統領選への出馬の意欲と関係があるのかどうかについて、これを否定していた。ただ、同市長は、ジョン・F・ケネディ大統領とロナルド・レーガン大統領がアイルランド系であることを指摘して、「一方が民主党、他方が共和党だけど、両氏とも偉大な大統領だ。ところで、私の承知している限りではアイルランド系で、独立候補として当選した大統領はいない。まあ、アイルランド系じゃなくてもそうだけど」と意味深な発言を続けた。ただ、ブルームバーグ氏はアイルランド系でもなければ、独立候補の市長でもない。共和党員のユダヤ人で、先祖は東欧からの移民なのだが・・。

  記者たちが威儀を正し、さあこれからが面白い話が聞けると耳をそばだてたとき、市長は大統領にまつわる話から突然、アイルランド訪問の目的に話題を変えた。「ファイティング69連隊」として名高い、アイルランド系市民が19世紀に創設したニューヨーク第69歩兵連隊の歴史的な功績を顕彰するために同市長は海を渡るのだとか、ひとくさり説明が終わると、ようやく、市長は再び大統領選の話題に戻った。記者団がユダヤ人初の大統領への意欲について、ブルームバーグ市長に水を向けたのだ。

  しかし、同市長もなかなかのくせ者で、「1964年の大統領選挙に共和党のバリー・ゴールドウォーター候補が出馬したとき、誰かがこんな風に言ったよ。『なるほどね。彼が民主党のジョンソン大統領に勝利すれば、最初のユダヤ人の大統領は、(キリスト教一宗派である)米聖公会教徒の大統領ということになる』ってね。とても含蓄に富んだ言葉だとう思うよ」と述べて、記者の質問をはぐらかす。ジョンソン大統領に敗れたゴールドウォーター氏の父親はユダヤ人で、ユダヤ教徒だったが、本人は成人後に聖公会に改宗している。

  続けて、同市長は、「市長を8年間(2002年就任)務めた後は、できたら財団の運営をしたい。そうすることを楽しみにしている。今の2期目を終えたら1週間休暇をとりたいね」と述べ、記者たちを煙に巻いていた。(2006年8月21日)【了】

■サラ・クグラー記者
AP通信記者。11月7日の米中間選挙の投票日に向け、民主党のクリントン上院議員(ニューヨーク州)や共和党のルドルフ・ジュリアーニ前ニューヨーク市長、同党のジョージ・パタキ現ニューヨーク州知事などを中心にAPブログを執筆している。

Copyright 2006 livedoor. All rights reserved. This material may not be published, broadcast, rewritten or redistributed. AP contributed to this report.