岩手県盛岡市のリンゴ農場で摘果作業を行うニート。(提供:NPO「育て上げ」ネット)

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ニートを対象にした電話相談に、問い合わせするのは本人よりも親──。NPO「育て上げ」ネットへの年間約300件の問い合わせのうち、約9割が保護者からの相談だった。

 事務所に直接訪れる割合も、保護者が圧倒的に多い。同NPOによると、親のみの訪問が約7割、本人と親との同伴が約2割、本人のみが1割という。

 「どうしたらいいのかわからない」というニートの親の声には悲痛な響きが感じられるという。昼夜逆転の生活の中、ほとんど友人付き合いがなく、母親との会話が継続されていることがせめてもの救いという例が多い。相談を受ける同NPOの古賀和香子さんは「相談の対象となるニートの約8割が、不安を和らげるために薬などを利用している」と話す。そんな若者たちを見る母親からは「私の育て方が間違っていたのでしょうか」という声も。ストレスはニート本人だけのものでなく、影響は家族にも及ぶ。

 古賀さんによると、職場で上司の説明不足や感情による不条理な叱責もあるのが現実で、まじめで内向的な若者ほど自分の責任として背負い込んでしまうという。その積み重ねで若者たちは失敗への恐怖心を募らせる。また、「働かなければ」「親に申し訳ない」という気持ちがニート本人を苦しめるが、一旦、恐怖心を感じると、どうしても最初の一歩が踏み出せなくなる。

 「とにかく何かを始めさせ、間違っても良いということを知らせるのが大切です」。古賀さんは両親たちにこう伝える。同NPOが企画する清掃活動や近隣農家の手伝いなどのプログラムに参加し、若者たちは小さな成功体験を積む。そして、自信を回復する。さらに、「プログラムに参加した若者たちは、誉められることで見違えるほど変化する」と古賀さんは話す。

 プログラムから帰宅したニートの若者たちを、ささいなことでも家族が誉めることの重要性を、古賀さんは感じている。「職場や家庭で足りないのは、若者たちを誉める習慣なのです」。【了】

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