都内・飯田橋にある「若者しごとホットライン」で電話相談に対応するアドバイザー。(提供:東京しごと財団)

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7月の開設から1カ月で400件を超える相談を受けた「若者しごとホットライン」。就職が決まっていく友だちを横目に見ながら、また、期待をかけて見守る家族に囲まれながら、日に日に自信を喪失していく若者たち。そんな彼らを救う手立ては、「失敗や挫折を価値ある経験と認識させ、自己否定から自信を回復させることだ」と、東京しごと財団のホットライン・アドバイザーは言う。

 「負け組」を連想させるニートやフリーターと呼ばれる若者だが、優秀な者も決して少なくない。「まじめな性格のため、すべてを自分で背負い、無能力だと思い込み、落ち込んでしまうのです」とアドバイザーは分析する。また、両親から大きな期待をかけられるために、聞こえの良い企業ばかりを狙って、不採用という結果を繰り返す者も多い。

 「中には、ひと言も話さずに電話を切ってしまう人さえいるのです」とアドバイザーは、電話をかけてくる若者が抱えている悩みの深刻さを語る。「20社くらい面接を受けても受からないのです」。やっと開いた若者の口から漏れる救いを求める声に、自信喪失と自己否定が痛いほど感じられるという。

 ホットラインでのカウンセリング時間は一人当たり約15分。電話をかけてくる多くの若者は夜型の生活にトップリはまっている。「世間体が悪いから」といった家族からの希望や自分の気持ちを反映させてか、昼間外に出ないため社会との接点が少なく、結果的に閉じこもり傾向になっている。夜型の生活を昼型に変えるだけで、就職に向かって一歩踏み出せるとアドバイザーは語る。さらに、若者が「しごとセンター」に足を運ぶことが、就職への道を歩き出した証しだと指摘する。

 重い腰を持ち上げて「しごとセンター」にやってきた彼らは、自己分析から就職活動を始める。しかし、「悲しかったこと」「楽しかったこと」「失敗・挫折の体験」「誉められたこと」などを書き出す作業ですら、心を閉ざした若者の筆はなかなか進まない。中学時代まで遡り、成功体験を引き出し、長所を思い出させる。また、就職に関する失敗・挫折などの辛い体験を「将来に活かせる価値ある経験をしたね」とプラス思考に変えさせる。そうしたカウンセリングで、目からうろこが落ちたように自信を取り戻す若者、感極まって涙をこぼす人さえいるという。

 「何をしたいか」という質問に答えるのは一般の人でも難しいため、就職で悩む若者には、「何がしたくないか」「何が嫌いか」などと「やりたくないこと」をリストアップしていく方法を採る。厳しいノルマが課せられるといった営業職に対するイメージを強く抱く人には、営業職も様々で、仕事の面白さを伝えたりすることで、それぞれの若者の適性と可能性を広げていく。

 東京しごと財団の職員は「若者の早期離職率が高く就職が難しいのは、企業にも責任があると思います。『使える人材だけ残して後は捨てる』といった考えを改め、社内で人材を育てようという企業が多くなってほしい」と語った。【了】

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