大阪市内の阪神電鉄本社ビル。(資料写真:常井健一)

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阪急ホールディングス<9042>と阪神電気鉄道<9043>は29日、大阪市と兵庫県尼崎市でそれぞれ定時株主総会を開き、両社の経営統合を含む全議案を賛成多数で承認した。10月1日付けで「阪急阪神ホールディングス」が発足。戦後初となる大手私鉄同士の統合が実現し、連結売上高で業界3位の私鉄グループが誕生する。

 117年前の創業地・阪神尼崎駅近くにあるホールを会場に、上場会社として最後となった阪神の総会には、昨年より4人多い770人の株主が来場、所要時間は約2時間15分だった。質疑には10人の株主が立ち、村上ファンドや阪急との交渉の経緯説明を求める意見や、阪神が運営するホテルや娯楽施設などでの株主優待制度や阪神タイガース球団の存続について、経営統合後の方針転換を不安がる声が続出。その一方で、世代をまたいで阪神電車と親しんできた思い出を語る株主や、経営陣にエールを送る姿もあった。

 引責含みで相談役に退く西川恭爾社長は、阪急の統合が中長期的に企業価値を高めると繰り返し強調し、「日本一の鉄道会社になるように頑張る」と株主に訴えた。また、村上ファンドによる株買い占めで、4万人強いた個人株主が3万人を割るまで激減したことを明かし、「想像をはるかに超えたが、安定株主確保への考え方に教訓を得た」と語った。2005年10月以来、月1回のペースで行ってきたという村上氏との交渉については「株主価値向上と言って様々な提案があったが、うまい話にはとてもならないようなものばかりだった」と振り返った。

 坂井信也次期社長は、統合までに今年度の業績見通し、年度末までに中期計画をそれぞれ発表し、統合効果を示すことを表明。統合後の取締役構成が阪急の12人に対し、阪神が6人と少数になることを懸念する意見には、「あくまでも対等の精神で行く。落ち度があるからといって、控えめになることはない」と断言した。

 一方、大阪・梅田の本社近くで行った阪急の株主総会は、来場した3400人の株主からはTOB価格930円の妥当性や業績悪化について批判が相次ぎ、大荒れ模様。所要時間は、昨年より1時間長い3時間45分に及んだ。「ついこないだまで300、400円だった阪神株を、そのとき買わずに、何で今ごろ900円以上で買うんだ」 と声を荒げる株主に対し、角和夫社長は阪神株の買い付け価格の妥当性を強調 し、「村上世彰氏が逮捕されようが、阪神の企業価値は変わらない」と訴えた。

 阪神の総会では質疑に先立ち、縄田和良専務が、阪急・阪神両社の統合について事前に受けた株主からの質問に回答した。その要旨は次の通り。

── なぜ阪急と経営統合するのか。村上ファンドから逃れるためではないのか。

従来推し進めてきた鉄道事業と不動産事業、スポーツ・レジャー事業を一体的な経営を継続し、競争力を高めるためには、同様の事業、同じエリアで取り組む阪急との経営統合が最善と判断した。村上ファンド問題は、きっかけではあるが、逃れるために決断したものではない。

── 阪神の保有資産切り売りやタイガース球団の名称変更・売却で買収時の多額の借入金返済に充てるのでは。

「阪急阪神ホールディングス」でグループが一丸となって財政健全化など企業価値向上に努め、資産の有効活用により一層取り組む。タイガース、阪神百貨店など当社が培ってきたブランドを相互に尊重することを合意しているので、名称変更・売却はありえない。

── 株主優待制度は続けてくれるのか。

株主利益を考慮のうえ、検討を続けていく。現在の阪急株主数は阪神より大変多く、新会社の収支への影響や阪急の制度との共生などを慎重に検討していく。

── 阪急のTOB価格は高すぎる。法令違反になった村上ファンドを利するだけなので、村上被告の逮捕時に、TOBを中止すべきだった。

買い付け価格は第3者機関が算定した適正なもの。株主の皆様にとって不合理な価格ではないと判断している。逮捕された事実によるTOBの中止は、証券取引法では認められなかった。

【了】

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