幼少時代、イタズラをして怒られるたびに「あんたは隅田川に流れてたところを拾ってきた子なんだからね! 言うこときかないとまた川に流すよ!」と言われて育ってきました。今聞けば「バカ言ってんじゃないよ・・・」と思うようなセリフですが、当時は純粋な子どもだったので、本気で怯えたものです。

 しかし、このような話は現実にないとも限らないのです。イタリアでは毎年400人もの新生児が、ゴミ箱や公衆トイレに捨てられているのだとか。しかもその数が年々増えているというから、事態は深刻。そして寒さで凍死してしまう赤ちゃんが出ないようにと、北イタリアのパドバには「命のゆりかご」という「捨て子窓口」が設置されたというのだ。

 「捨て子窓口」と言われてもいまいちピンとこない。これは「命の活動」という人工妊娠中絶に反対する団体が寄付したもので、パドバのオニサンティ通り70番地の角に設置されているそう。窓口は「OPAI-SEEF」という非営利団体が運営する、シングルマザーのための保護施設につながっているのだとか。金属製のフタを開けると、「OPAI-SEEF」の事務所で警報が鳴り、24時間待機のソーシャルワーカーに知らせてくれるらしい。赤ちゃんが窓口に入れられると、箱の中の保温システムが作動すると同時に、近くの救急サービスに通報される仕組みになっている。

 外見はすごく事務的な夜間金庫のようだが、中身は温かさと愛に満ちているというわけだ。「捨て子の窓口を作っちゃうなんて、イタリアってなんて親切な国なのかしら!」と思うが、よく考えてみて! こんなシステムを作らなきゃいけない状況って異常じゃないですか!? 捨て子が多いというのは、宗教上の問題もあるのかもしれないけど(国民の約97%が、中絶を許さないカトリック)、それにしてもお腹を痛めて産み落とした我が子を街中に捨てるなんて、おかしい!

 イタリア批判をつらつら語ってしまったが、ちょっと待って・・・日本にも新生児の捨て子っているんでしょうか? 平成14年の「養護問題発生理由別児童数」という厚生労働省の資料を見てみると、棄児(捨て子)が約490人もいた。イタリアよりも多いじゃないか! しかも全国児童養護施設協議会の方のお話によると、あくまでもこれは厚生労働省が把握している人数であり、未確認のケースもあるので、実際にはもっといるだろうとのこと。日本でも捨て子窓口を・・・なんていう話が持ち上がらないよう、親としての責任をきちんと果たしてもらいたいものですね。(遠藤麻衣/verb)