献花に訪れたアーレフ(旧オウム真理教)荒木広報部長=東京・霞ヶ関駅(撮影:常井健一)

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12人が亡くなり、5500人以上の負傷者を出したオウム真理教による地下鉄サリン事件からちょうど10年の20日、駅職員2人が死亡した東京メトロ霞ヶ関駅(千代田区)で慰霊式が行われ、遺族や関係者らが黙とうをささげた。

地下鉄職員が黙とう、部屋には感謝状

 事件当時、都内の地下鉄を運営していた帝都高速度交通営団は昨年4月、東京地下鉄株式会社(東京メトロ)として新たな一歩を踏み出した。
 
 霞ケ関駅の日比谷線事務室では事件が発生した午前8時、藤原明博首席助役(51)が号令、東京地下鉄の職員25人が30秒間黙とうした。その部屋の片隅には、2人の駅員の勇気を称(たた)える感謝状が並んで飾られていた。

 その後、霞ヶ関駅務区の西川昭区長と同職員らは同駅・千代田線内の献花台に花を手向けて、犠牲者の冥福を祈った。また、小泉純一郎首相や、事件当時に帝都高速度交通営団(営団、現・東京地下鉄)・霞ヶ関駅務区長だった野尻辰秀さん(53・現東京メトロ管財部長)も訪れた。

遺志を継いだ我が子へ「事故のないように。主人が安心しますから」

 霞ヶ関駅員だった夫の菱沼恒夫さん(当時51)を事件で失った菱沼美智子さん(61)が献花に訪れたのは午前11時ごろ。地下鉄サリン事件について「毎年この日が来ると、『あの日さえなければ自分の人生が変わらなかったはず』と思う」と、目に涙を浮かべながら話した。

 発生から10年経ったことについて、菱沼さんは「突然人生が変わったものだから、主人の死を受け止めることがなかなかできなかった。時の流れで、やっと自分の人生を前向きに生きていこうという気持ちが沸いてきた」と述べた。菱沼さんの息子は現在東京地下鉄の職員として、亡き父と同じ職場に勤務している。「主人のためにも、事故のないように勤めてもらいたい。主人が安心しますから」と我が子への想いを語った。

オウムも献花、「教団の本質は、宗教心」

 事件を起こしたオウム真理教(アーレフに改称)からは午前9時50分に、荒木浩・広報部長が献花に訪れた。報道陣の前に現れるのは1年ぶり。荒木部長は「被害者の方々に少しでも気持ちを届けようと、伝える言葉をずっと探してきた。だが、見つからないまま、ここに来てしまった」と述べた。

 また、地下鉄サリン後の教団について荒木部長は「10年前の教団が犯した、教えの解釈の歪みや『実践の逸脱』から、遠のくための努力をみんなでしてきた」と振り返り、「被害者への補償を今後も続けていく。教団の本質は、宗教心だということを理解していただけるように努力したい」とうつむきがちに小声で語った。

 地下鉄サリン事件から10年・・・。ニューヨーク同時多発テロ後の警備対策強化も加わって、地下鉄内ホームのゴミ箱は全面撤去されたままだ。【了】

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