有馬賢二監督

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昨シーズンから新設されたJ3リーグに、J1からJ3までのすべてを経験している人物がいる。現役時代から黒く日焼けした顔が変わらない、横浜スポーツ&カルチャークラブの有馬賢二監督だ。

1995年、柏に入団し1998年、札幌に移籍。その後J2の横浜FCで1999年から2002年までプレーした。2014年からは監督に立場を変え、チームを率いている。去年は天皇杯2回戦で川崎フロンターレと対戦。先制しながら後半アディショナルタイムに追いつかれ、延長で力尽きた。

それぞれのリーグについて、有馬監督は違いがあるという。

「J1は自分たちで組み立ててサッカーをしてくる。だから川崎と戦ったとき、何とか四つに組む場面も作ることができた。だけどJ2では走り勝ったり、カウンターを狙ったりして勝とうというチームが多くなる。より勝負にこだわるようになります」

「それに対してJ3はJ2以上にハングリー。そしてJ2よりも個人の力がもっと前に出てきます」

その理由は何か。プロリーグに所属しながらプロではないことが関係している。

「たとえば今年も大卒の選手が何人も入ってきますが、彼らの年俸はゼロ。給料はありません(※)。だから働かなければいけない。今日も午前中に練習をして、みんな仕事へ行きました。彼らは何とかJ3のピッチの上で輝いて、上を目指したいと思っています」

「だけど目立ちたいからといってチームのためにプレーしない選手は試合に出せません。だから苦しくても、まずチームのために働いて、そこから上を目指さなければいけない」

「そんな環境ですから、選手はタフだし、リーグに『熱』があります。上を目指すチームもあれば、まずクラブの存続を考えなければいけないチームもある。その環境は違っているけれど、どこも選手たちは『熱』を持っています」

「もしJ3が無かったら、彼らは上を目指すチャンスが与えられなかった。だからこういう場があることには感謝しています。みんな上に行く可能性はあると信じている。それをどう輝かせるか、チーム全員でやっているのがJ3なんです」

はたして今年は何人が輝けるのか。日本にハングリーな環境がないというのは間違いだ。

※J1では選手契約を結んでいる選手が15人以上必要なのに対し、J3は3人以上と大幅に緩和されている。

【日本蹴球合同会社/森雅史】