大宮へ移動するEF55形電気機関車「ムーミン」(2015年1月23日、恵 知仁撮影)。

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1月23日深夜、「ムーミン」と呼ばれる古く希少な電気機関車が埼玉県の大宮へ移動。同地の鉄道博物館へ収蔵される可能性が高まっています。この79歳の「ムーミン」は機銃掃射の痕を持つなど、その十分な資格がある「歴史の証人」だからです。

「ムーミン」、夜の埼玉を走る

 2015年1月23日(金)の深夜、「ムーミン」と呼ばれる1両しかない電気機関車が、群馬県高崎市にある車両基地から埼玉県の大宮まで運ばれました。

 EF55形電気機関車は、いまから79年も前の1936(昭和11)年に3両だけ製造された歴史的な希少車両で、現存しているのは今回運ばれたEF55形1号機(以下EF55 1)、ただ1両のみです。

 このEF55形電気機関車は先頭形状がアニメキャラクターの「ムーミン」に似ているため、いつしか鉄道ファンにそのような愛称で呼ばれるようになりました。ほかに「カバ」「靴のお化け」などと呼ばれることもありますが、どれも国鉄、JRが決めた正式な愛称というわけではありません。

 このEF55 1は現在自走できないことから、EF64形38号機という電気機関車にけん引される形で大宮へ移動しています。

「ムーミン」はリニューアルされる鉄道博物館へ?

 今回、EF55 1が大宮へ運ばれたことについて、JR東日本から公式のアナウンスはありません。

 ただ大宮駅近くにあるJR東日本グループの鉄道博物館(鉄博)では、2017年10月に開館10周年を迎えること、JR東日本が設立30周年を迎えることから全面リニューアルと新館の建設が計画されており、展示面積は約14800平米と現在の約1.5倍になる予定です。展示車両も追加され、EF55 1についての言及はないものの初代山形新幹線400系、東北新幹線「はやぶさ」などのE5系が登場すると発表されています。

 また2009年には産経新聞社がこのEF55 1について、鉄道博物館での永久展示を含めた保存場所の検討が行われている、と伝えています。

「ムーミン」が鉄道博物館入りしてもおかしくない十分な理由

 このEF55 1は1936(昭和11)年に日立製作所で製造されたのち、東海道本線で特別急行「つばめ」「はと」といった当時の日本における花形列車をけん引。そして3両だけ誕生したEF55形は1960年代にすべて廃車されますが、この1号機だけは保存されました。

 その後、この機関車に対する注目が高かったことから1986(昭和61)年に復活し、群馬県高崎市を拠点に上越線などを走行。大勢の乗客を楽しませたものの、2009(平成21)年にさよなら運転を実施。事実上引退していました。

 このEF55 1は太平洋戦争中に機銃掃射を受けたことがあり、その痕が残っています。また現在となってはレトロな雰囲気を感じさせる特徴的な前面形状は、昭和初期にそうした「流線形」が世界的に流行ったという事実をいまに伝えています。

 人気が高く実績もあり、歴史の証人でもある79歳の「ムーミン」ことEF55 1。鉄道博物館で今後、その歴史が語り継がれる理由は十分にありそうです。