先日マイナーリーグからメジャーリーグ、トロント・ブルージェイズに昇格した川崎宗則。昇格後、初めての出場となった4月15日のツインズ戦では、2安打で逆転勝利に貢献するなど好調な滑り出しを見せたが、メジャー開幕直前の春季キャンプで苦闘する姿をNHK「アスリートの魂」が密着取材し、その模様が4月17日にNHK総合(NHK BS1は4月12日)でオンエアされた。

「メジャーリーグで野球がしたい」という熱い情熱と共に3年目のシーズンに臨んだ川崎。昇格のために試行錯誤したその秘策とは何だったのだろう?

メジャー1年目、2年目と守備での好評価に反して、打率2割前半とメジャーの重い球への対応という課題を克服出来ず、昨年ブルージェイズとの契約更新ができなかった川崎。招待選手という立場で迎えた1月のキャンプは、自ら「マイナー行くか、メジャー行くか、クビになるか分からない」と語る厳しいものだった。

このキャンプで川崎は、本来の守備位置ではないポジションにも挑戦。「目標は最強の補欠」と言うように内野、外野の全てのポジションをこなすためにノックを受け続ける。「レギュラーを獲るために求められることは何でもやる。グラウンドに出ることが勝ち残るのに最も大事なこと」と語る彼がメジャーへ残るための秘策は、複数のポジションをこなすユーティリティー・プレイヤーとしてチームに残ることだ。

そのために10年ぶりとなるサードの守備練習や、打球の速度が落ちやすい天然芝対策として逆手で捕る逆シングルでのグラブ技術、慣れない外野守備にも挑んだ。

長年悩んでいる打撃の課題も明確だ。コーチの指摘を受け、バッティング時に身体の軸がぶれる問題を克服するために入念なチェックを続ける。

一時期はメジャー挑戦を続けるかどうか迷った時期もあったという。それでも「今回も自分が一番やりたかったことを選んだだけ」と今年の挑戦の理由を語る。大リーグに挑み続ける理由は「日本では考えられないプレーをする選手達が数多くいる」というアメリカ野球の選手層の厚さにもあるという。

「嫌になったり心が折れることも1500回以上、野球したくないといっても球場に行ったら野球をする。しょうがいないよ、野球選手なんだから」と笑顔で語る川崎。

番組は3月上旬、トロント・ブルージェイズでのメジャー昇格の話は持ち越しとなったシーンで終わるが、その1カ月後、川崎は悲願のメジャーでの出場を果たした。複数の守備位置をこなす万能内野手というアイデアが功を奏した形だが、今後も故障明けのホセ・レイエス遊撃手が復帰間近など、レギュラー25人の枠は決して安泰とは言えないものだ。「最強の補欠」の挑戦は、まだまだ続く。