どちらもこの試合に勝つと決勝トーナメント進出が決定、負けるとグループ敗退の可能性が出てくるという事で、マンUにとっては緊迫した状況でのアウェイ戦だったが、蓋を開けてみれば何と5-0の大勝という意外な結果に終わってしまった。

もっとも、それはマンUが良かったと言うよりはレバークーゼンの自滅という面が大きかった。前半20分までのレバークーゼンは、攻撃に転じると素早くサイドへとボールを展開し、SBのオーバーラップを絡めて分厚いサイド攻撃を仕掛け、スピードに難があるリオ・ファーディナンドがCBに入ったマンUはラインをなかなか押し上げられず、トップ下で先発した香川と1トップのルーニーが孤立してほとんどボールに触れなかった。

ところが、前半22分に中盤でボールを奪った香川からギグス、ルーニーと展開し、マークを2人引き連れて飛び込んだ香川の裏にフリーで走りこんだバレンシアがクロスに合わせてワンチャンスで先制点を挙げると、30分には香川が倒されていたルーニーのFKがオウンゴールとなるなど、マンUがあっという間に2点を取ってしまった事で、レバークーゼンのゲームプランが完全に崩壊してしまった。

もともとは組織だったプレスと言うよりは、しっかり守ってから前線の3人が素早く攻めるサッカーが得意なレバークーゼンは、2点のビハインドを負ったことで中盤が前がかりにならざるを得なくなり、その割にはDFが1対1でのマークをルーズにしているので香川が中央でパスを楽に受けられ、そこからギグスとのコンビで自由にサイドへと展開することが出来、それからは最終盤までほとんどレバークーゼンにチャンスらしいチャンスを作らせなかった。

ただ、日本人としてやや残念だったのは香川が縁の下の力持ちになり過ぎていた事。両チームトップの12.5kmを走って常時相手のパスコースを切って自分は味方のパスコースを作り、チームメイトの上がりが遅い時にはボールをキープしつつファールをもらい、DFラインが低いのとキャリックが居なくてなかなか縦パスをもらえない中で、トップ下と言うよりはほとんどCHのゲームメイカーとしてアシストやゴールの前段階での貢献が目立った。てか、チームの走行距離3位がギグスおじさんの11kmなんだから周りが走らなすぎだけど(苦笑)。

そんな中でも香川は2度ほどフリーでシュートを打てるチャンスはあったのだが、1つは上手くヒットしなくてボテボテになり、もう1つはクロスのトラップが流れてGKにキャッチされたりと、気負いと力みがあったのか肝心なところでのミスが出てしまった。本人的にもとにかく得点が欲しかったようで、終盤のカウンターで前線まで走り込み、クロスが届かなかった時には相当ガックリした表情だったのが印象的だった。

おそらく、これがプレミアだとボールキープ時のファールは取ってもらえないだろうし、もっとラインを上げて中盤のフォローを増やし、周りが素早い攻守の切り替えでパスコースを作ってくれないと香川がトップ下で安定したプレイをするのは難しいだろうから、これでレギュラーは安泰だと思うのは早計である。左サイドでもどこでも起用された時は攻守にハードワークして、勝利に貢献できる選手として監督の信頼を積み上げるしか無いだろう。