連ドラ初主演となった夏菜(23)のみずみずしい演技はむしろ好評だった。しかし、およそ朝ドラとは思えない物語の展開に視聴者はドン引きしたのである。

 3月30日に最終回を迎えたNHKの連続テレビ小説「純と愛」が波紋を広げている。テレビドラマ研究家の古崎康成氏はこう苦言を呈した。

「朝ドラというのは、多くの人にとって時計代わりでのんびりとした気分で見る習慣がある。ところが、そうした視聴者の気持ちを波立たせる作りでしたね」

 ストーリー自体は、かつて祖父が経営していたホテルの再生を目指し、ヒロインが苦難に立ち向かっていくという前向きなものだが、放送中からネット上でも、

〈純と愛だけはマジでゲロが出るほどつまらない〉

〈うっかり回してコレだと凄く嫌な気分になる〉

 と非難の嵐だった。

 それもそのはずで、ただただヒロインを襲う理不尽な不幸の連続なのだ。勤めていたホテルが買収されて失職し、別のホテルに再就職しても客の寝タバコで焼失。並行して母の認知症発症や父の水死があれば、夫も病に倒れて目覚めないという具合だった。

「脚本を担当した遊川和彦さんは『女王の教室』や『家政婦のミタ』(ともに日本テレビ系)などのヒット作を手がけましたが、視聴者を不快にさせてドラマに引っ張り込む手法を取るんです。最初から『アンチ朝ドラ』と宣言されていたので心配していたのですが、残念ながら懸念していたとおりになってしまいました」(前出・古崎氏)

 結果、平均視聴率は、好調だった前作「梅ちゃん先生」から3.6%も下げて、17.1%と低迷した。

 前出・古崎氏が続ける。

「伏線を張るだけ張って回収できなかったことで、今回は全体がひどいものになってしまいましたね」

 例えば、若村麻由美演じる義母は当初、ヒロインをかたくなに敵視していたにもかかわらず、後半には心変わりした理由もわからないまま、単なる善意の人として登場するのである。

「余貴美子扮する簡易ホテルの女将は、この人が紹介状を書けばどんな一流ホテルでも内定をもらえるという謎の人物でしたが、最後までその理由はわからないまま。一時が万事、こんな調子で、主人公と両親、夫の4人以外は、人生が見えてこない登場人物ばかりでした」(前出・古崎氏)

 叩けばホコリだらけのようだが、最終回もハッピーエンドとはならない不可解なエンディングだった。

「夫は寝たきりのままで、夏菜が口づけをしても目を覚まさず、中途半端に両手がピクピクと動くだけでした」(テレビ誌記者)

 あげくの果てに、

「愛くん(夫の名前)、信じるって『人が言う』って書くんだよね」

 で始まる夏菜のポエムを4分間も延々と披露するのだ。取りつかれたような目で海に向かって叫び続ける様子は、朝には似つかわしくないほど鬼気迫っていた。

 とはいえ、夏菜自身は評価を落としていない。芸能評論家の三杉武氏が言う。

「一時期、バラエティ番組『ピカルの定理』(フジテレビ系)でレギュラーを張り、遊川作品に出演という流れをたどる彼女は、実はとんねるずの番組で下積みを経験し、『魔女の条件』(TBS系)で女優として地位を築いた松嶋菜々子の系譜なんです」

 第2の松嶋と呼ばれるようになった時、「純と愛」はお宝作品となるか。