フランス、ブラジルという欧州と南米の強豪国と戦ったザックジャパン。フランスに1−0で勝利し、余勢を駆って「もしかしたら……」という期待を抱いたものの、ブラジル戦はずるずると失点を重ね、終わってみれば0−4という大差で完敗。対照的な両結果を見ると、果たしてザックジャパンは強いのか、弱いのか、よく分からなくなってしまう。そこで、現地で取材をしていた専門家たちに意見を聞いてみた。

まずは強豪相手に1勝1敗という結果について、スポーツライターの杉山茂樹氏は「親善試合の評価は相手の事情を考えてする必要がある」と語る。

「フランスはスペイン戦前の調整モード。しかも、(当時世界王者だった同国にトルシエジャパンが0−5の惨敗を喫した)11年前に比べるとだいぶ力が落ちている。アウェーで勝ったことは評価できますが、そのあたりを割り引いて考える必要がある。一方、ブラジルも2割ほどメンバーを落としていましたが、けっこうまともに戦ってきました。日本はそういう南米の強豪との戦いに慣れていないから面食らったということもあるでしょう。ただ、今のブラジルにあそこまでやられるチームは欧州の中堅国にはない。レベル的に2ランクぐらいの差がありましたね」

杉山氏は厳しい評価を下すが、試合の内容に目を向ければ、日本の戦いは評価できるとする声も多い。サッカーライターの浅田真樹氏はそのひとりだ。

「勝敗は別にして、これまで日本がやってきたスタイルで強いチームと戦い、まったく歯が立たないというわけではなかった。ブラジル戦にしても、時間帯によっては中盤でボールを落ち着いてつなげていたし、腰が引けたところはなかった。この2試合で今の日本の長所も見えました。例えば、センターバックのふたり(吉田、今野)がある程度ボールを持てるというのは、これまでの代表と決定的に違います」

サッカーライターの了戒(りょうかい)美子氏も「ブラジル戦の大敗を過度に悲観する必要はない」と語る。

「大敗はしましたが、少なくとも立ち上がりはよかった。要は、その戦いをどれだけ続けられるかだと思います。そして、1点を奪われてもベタに引かず、点を取りにいく姿勢を保てたのもよかった。この状態でどれだけ耐えられるかが課題です。強い相手に90分間、五分で組み合うのは不可能。あとは頭の使いようじゃないですか」

今の日本は決して弱いわけではない。だが、強豪相手では時間帯や試合展開によってみんなでがっちり守るやり方もまだまだ必要なのだ。

■週刊プレイボーイ45号「ザックジャパンは強いのか、弱いのか!?」より