7月11日、小沢一郎氏らによる政党「国民の生活が第一」が結党され、選挙前の権力闘争は一段落した。そんななか、5日に公表された「維新八策」の最新版が財務省を震撼させている。霞が関某省のキャリア官僚、K氏が内幕を教えてくれた。

「財務省が特に恐れているのは、特別会計の見直しです。帳簿の方式を、財務体質を隠しやすい現行の単式簿記からオープンな複式簿記に変えることも改革に含まれるのではと警戒感を強めています。複式簿記になれば隠し財産をプールしにくくなるし、ムダがどこにあるのかもバレやすくなる。歳入庁の創設も、先月に財務省が条文を書き換えて骨抜きにし、民主、自民、公明の3党が合意の形で事実上の廃案にしたばかり。激しい抵抗は必至でしょう」

財務省にとって、歳入庁創設のどこがそんなにイヤなのか。

「歳入庁とは、財務省傘下の国税庁が持つ徴税機能を分離させるものです。財務省にとって国税庁は絶対に持っておきたい最強の武器です。国税庁は権力者に対してでも調査権を行使できる。財務省に逆らうヤツには国税調査を入れて、1円でもゴマかしが発覚すれば摘発できるのです」(K氏)

だから、財務省には誰も逆らえない。

「逆に言うことを聞けば、予算のバラマキなどの恩恵もある。このアメとムチの両輪が財務省の巨大な権力の源なのです」(K氏)

だが、大阪維新の会を潰したいのは財務省だけではない。自民党の某議員公設秘書、S氏も証言する。

「財務省を怖がるのは、財産を持っている“既得権益者”全員です。われわれのような貧乏人は恐れる理由がありませんからね(笑)。庶民や若者の側に軸足を置いた政策が中心の『維新八策』は、そうした“既得権益者”たちにとって不利な内容が多い。つまり、財務省と利害が一致するのです。例えば、『維新八策』にある資産課税の強化は資産家が全員イヤがる。生活保護受給者の医療費を一部自己負担させる案も、医療機関の利益が減るので日本医師会がイヤがる。教育バウチャー制度は学校間で競争を生もうという改革ですが、無能な教師にとっては死活問題なので日教組がイヤがる。さらに維新の会は総じて国民の自立を促す路線ですから、競争せずに職や身分を守りたい労働者を抱える労働組合もイヤがるのです」

これら維新の政策をイヤがる面々を連携させて、財務省は永田町をも動かすのだという。

「大資産家は地方議員の後援会をやっている場合も多い。その地方議員たちにはカネに汚い連中も多く、国税庁が少し調査すれば言いなりです。国会議員の選挙運動では、この地方議員たちが大活躍するから、彼らの世話になっている国会議員たちは選挙が近づく今の時期は特に彼らを無視できないのです。日教組や日本医師会ら“既得権益者団体”も財務省を敵に回して得などない。むしろ、日教組は民主党・輿石幹事長の出身母体だし、労働組合は民主党の支持母体。日本医師会は自民党も民主党も無視できない団体。元から維新の会は共通の敵なのです。財務省はこうやって地方や団体へも影響力を行使して、底から突き上げる形で永田町の大多数をコントロールするんですよ」(S氏)

狭まる財務省と既得権益者たちの包囲網に、橋下・大阪市長と維新の会はどう出るのか?

(取材・文/菅沼 慶)