タレント・猫ひろし(本名:滝崎邦明)が、カンボジア国籍を取得し、同国のロンドン五輪男子マラソン代表に選ばれたと思われた矢先、状況が一転。五輪出場が認められない可能性が出てきた。

IAAF(国際陸上競技連盟)が、出場資格に疑問を投げかけ、カンボジアの陸上競技連盟などに説明を求めているというのだ。

今年から、選手の国籍変更に関して新たな規定を設けたIAAFは、国籍取得後1年が経過していない場合について、「連続した1年の居住実績」もしくは「国際陸連理事会による特例承認」が必要としている。

さらに、カンボジア陸連による「特例承認」にも、IAAFサイドは「重大かつ意義深い理由がなければならない」と述べており、承認のハードルは限りなく高いと言えそうだ。

カンボジア陸連の対応に注目が集まる中、14日、日本を代表する陸上選手の一人・為末大は自身のツイッター(@daijapan)で興味深い発言を行っている。
「猫さんの五輪出場が危ぶまれている。国際陸連がルールを今年から厳格化させてそれに抵触する可能性があるそうだ。猫さんが国籍を変えて五輪出場しようとしている事自体についての、倫理的な是非論はさておいて、たぶん国際的な陸上選手の大半の反応は、え、それをアウトにしちゃうの?だと思う。」

「国籍を売る行為というのはここ10年で増えてきた。主にはアフリカ等の貧困国のトップアスリートが、中東の国から金銭を受け取り、国籍を変えるパターンが多い。100mのアジア記録は日本人が持っていたけど、ナイジェリアからカタールに国籍を変えた選手が今は記録を持っている。」

「国際GPで選手と話していると、いくらでオファーされたとか、10年間毎月いくら入る契約とか、そういう話がごろごろしている。具体的な数字を聞いて、さすがオイルマネーだと仰天した事もある。だから倫理的な是非はともかく、陸上選手はこの手の話にはもう慣れてしまっている。」

「猫さんに関して国際的な陸上界からの意見は、どうでもいいがほとんどだろう。猫さんがいてもいなくてもほとんどの選手の順位は変わらないから。そんな事より、国際陸連が動いた事で他の世界トップランカーの出場が認められるのかどうかが焦点。やっぱりこの辺りはみんな倫理よりも現実を見てる」

「猫さんの場合の特殊性は1、先進国から途上国へ 2、トップ選手ではない の二点だと思う。先進国のタレントが途上国の枠を取り五輪を売名行為に使っている。国際的に問題があるのはこの辺りじゃないか。他にも実力的に並ぶ選手がいるし。あからさまな金の匂いがしないから余計に倫理的な問題に見える」

「日本でこれだけ騒がれるのは、日本人をやめて五輪に出場しようとしている人がいるという事、がかなり刺激的なんだと思う。日本では、特に五輪が近くなると殺気立った人達が出てきて、なんだか出兵する一等兵の気分になる。正直危ないなと感じる事もある。」
立て続けにツイートした為末。一部では、猫ひろしの五輪代表辞退を求める声もあるが、国政に絡んだ報酬や、政治的な理由のため、帰化をする選手は増加の一途をたどり、もはや一元的に語れる問題ではなくなっている現状、選手の視点から率直な見解を述べた。