2018年のW杯がロシア、2022年がカタールで開催されることに決まり、2022年招致を目指していた日本は負けた。
 
W杯が来ないのは、残念ではある。が、なるようになっただけ、というのが正直なところだね。W杯招致合戦というのは、政治力勝負の舞台だ。招致活動をしたスタッフにはねぎらいの言葉をかけたいが、今回の日本の招致活動と、他国との差を見れば、負けるのは当然だったといわざるを得ないね。
 
そもそも、犬飼前サッカー協会会長は、2016年に東京五輪が来なかったら、W杯招致もやめるつもりでいた。ところがクーデター的に政権交代が起こり、急な方針転換で今回の招致活動を行ったのだ。スタートを切った人がいないのだから、準備もチームワークもどこかちぐはぐだった感は否めない。
 
看過できないのは、韓国にも負けたことだ。2回目の投票で落選した日本に対し、韓国は3回目まで進んだ。やはり、チョン・モンジュンのような人間がFIFA内部(副会長)にいる、いないの差は大きい。この事実を、日本協会がどう受け止めるか。田嶋副会長は来年1月のFIFA理事選挙に立候補しているけど、勝てる見込みは少ないよ。そうなるとますますパイプが細くなってしまう。日本サッカーの政治力は弱まるばかりで、W杯招致よりそっちの方が心配だ。これから厳しい時代に突入するだろうね。
 
さて、勝ったロシアとカタールについて。両国は当然オイルマネーをふんだんに使い、ものすごいロビー活動と、ビジネスとして旨みのある計画をプレゼンした。2002年のときは日本も多額のお金を積んだのだから、それに関しては文句をいえる立場ではない。
 
日本はソニーの会長が出てきて未来的な3D観戦を訴えたけど、冷房完備のスタジアムをボコボコと建設するという大計画をぶち上げたカタールに比べて、あまりに弱かった。スタジアム建設およびそれに付随するインフラの整備事業の規模を考えると、後者のほうが圧倒的に魅力的だ。
 
さらに、ロシアとカタールの猛烈なアピールに乗るにあたり、サッカーの普及=マーケットの拡大を基本姿勢とするFIFAにとって、どちらも初開催であること、さらに旧共産圏としても、中東としても「初」というのは、世界を納得させるための根拠になりえた。つまり大義名分の説明もつくのだ。
 
近年、オイルマネーを背景にした中東勢のサッカー界への進出は、選手を買い漁るのを手始めに、プレミアリーグのチーム買収に乗り出したりと、恐ろしいほどの勢いだ。今回の招致成功はその流れのある種の到達点といってもいい。2022年のW杯時には、バーレーンとの間に橋をかけて、自然と共同開催に近い形になるという話もある。カタール一国だけではなく、中東という地域が、今後のFIFAにとって極めて重要なマーケットになっていくだろうね。
 
いよいよW杯招致の結果が出るというその日、日本は朝から晩まで、酔っ払った歌舞伎役者が殴られた関連ニュースで一色だった。W杯招致がこの日に決まるというのを、どれだけの日本人が知っていたか。W杯よりも芸能人の一スキャンダルに目がいく現実を考えれば、招致できなかった悔しさなど沸いてこないよ。(了)