レアメタル高騰 大手商社中心に「資源株」注目される

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   金、銀、ウランにニッケル、チタン、セリウムにインジウム・・・。「レアメタル」といわれる希少金属の需要が急伸している。インジウムは液晶ディスプレーや発光ダイオードには欠かせない原料だし、ニッケルは耐食性が高いためメッキに用いられる、ステンレス鋼の原料だ。チタンはロケットやミサイルからゴルフのクラブや眼鏡のつる、中華鍋にまで使われる。旺盛な需要に、新日鉱ホールディングス(HD)や、住友金属鉱山といった資源企業の業績は好調で、大手総合商社も「資源」企業として注目されている。

大手商社が世界中を物色

   もともと資源の乏しい日本は石油をはじめ多くの資源を海外からの輸入に頼っている。その中でもレアメタルは全量を酸化物や塩化物などの化合物、合金、金属の形態で輸入している。希少価値が高いうえに、需要が急速に伸びて価格も上がる。世界中で資源の争奪戦が繰り広げられているのだ。

   2007年9月8日付の週刊ダイヤモンドは「特集 資源株入門」を特集。エネルギー資源に着目した国内外企業の株式動向を追った。それによると、資源高騰の影響を受ける企業のすそ野は広く、資源の権限を有する企業はもちろん、プラントの建設や建機需要の増加、資源を運ぶための輸送・造船需要などに注目し、関連企業を取り上げている。

   資源業界では世界的にマイナーな日本企業にあって、最大の「恩恵」を受けているのが資源の輸入にかかわる大手総合商社だ。同誌の「世界の資源会社利益番付」によると、世界の資源メジャーに混じって第8位に三菱商事(売上高8兆6,237億円、当期利益2,087億円)、第12位に三井物産(同1兆9,569億円、同1,132億円)、第13位に新日鉱ホールディングス(2兆9,814億円、955億円)、第21位住友金属鉱山(6,163億円、619億円)、第23位に伊藤忠商事(2兆8,346億円、571億円)、第25位に住友商事(4,679億円、412億円)が名を連ねる。

三菱商事、住友商事、双日が海外で権益取得

   三菱商事は07年4月、カナダのウラン資源探鉱プロジェクト「ウエスト・マッカーサープロジェクト」に参画すると発表した。その後も、マレーシアの石油・ガス探鉱鉱区の20%の権益を取得したことや、新日本石油と共同で米メキシコ湾に油田を保有する会社を買収、さらにオーストラリアのジャックヒルズ鉄鉱床の資源開発事業にも参画した。

   住友商事は8月28日、豪州タスマニアの、液晶ガラス基板に使用する「シリカ」の原砂鉱区権を取得したと発表。7月には、南アフリカに40億円を投じて鉄鉱石やマンガン、クロム鉱石を発掘する資源会社の権益を追加取得している。

   双日は8月6日、カナダのタングステンを生産する会社・プライマリーメタルズに対して友好的な株式の公開買い付け(TOB)を仕掛けた。「当社は国家備蓄7鉱種(ニッケル、クロム、タングステン、コバルト、モリブデン、マンガン、バナジウム)を中心に権益を取得していきます」(広報部)とし、すでにモリブデンやバナジウム、ニッケル、セロクロムなどのレアメタルの権益をカナダや南アフリカ、フィリピンで取得している。

   JOMOを経営するジャパンエナジーの「石油」と、日鉱金属の「非鉄」、傘下に2つの「資源」をもつ新日鉱HDによると、「携帯電話に液晶テレビ、冷蔵庫に洗濯機と、いまやレアメタルが使われていない家電製品はないですよ。需要が旺盛で、それらが業績を押し上げているのは事実です」と話す。

   レアメタルの最大の対日輸出国は中国だ。中国は資源を国家戦略物資と位置づけて、資源の内需優先策や輸出税の増税などに取り組んでいて、日本のようなレアメタル消費国には不安材料となっている。たとえば、タングステンで中国は全世界のうち90%のシェアを占める。このように、レアメタルは産出国が偏っていることも特徴。希少なうえに偏在性もあり、大手商社は大金を投じ、資源の確保に世界中を奔走する、というわけだ。