「どけよババァ!」 乗客がはいた機内暴言の数々
航空機内で携帯電話の使用をやめず、注意をした女性客室乗務員に「どけよババァ!」などと暴言を吐いた神奈川県平塚市の暴力団組員の男(34)に対し、警視庁東京空港署は2007年6月13日までに逮捕状を取った。04年1月の改正航空法施行後、携帯電話の機内迷惑行為で初の逮捕になるようだが、機内での客室乗務員と男のやり取り、まるでマンガのようだった。
「警察でも何でも呼んで逮捕すればいい」
事件があったのは07年3月10日。午後2時出発予定の羽田発宮崎行き全日空機。スポーツ紙をはじめとする各報道をまとめると、機内でこんなやり取りがあったという。
男は出発予定の15分前になっても携帯電話の使用をやめなかった。女性客室乗務員が「出発時間ですので携帯電話をお切りください」と注意するが、なかなか使用をやめなかった。再び女性客室乗務員が、「携帯電話を切るまで出発できない」と言うと、
「切ってるところだよ。電源を切るのに時間がかかるんだ」
と声を荒げた。
男はなんと5台の携帯電話を持っていた。
出発5分前になって、ようやくケータイの電源が切れた事を客室乗務員が確認。航空機は駐機場から滑走路へ移動を始める。しかし、出発時間の午後2時。突然、電源を切ったはずのケータイが鳴った。客室乗務員があわてて男に駆け寄ると、
「自動で電源が立ち上がってしまう携帯なんだよ!」
と大声で怒鳴った。男は再び電源を切ろうとしたが、注意されたことで逆切れ。
「切ってるだろ!どけよババァ!!」
と声を荒げた。さらに
「お前らふざけんなよ」「うるせーな」
などと威嚇し暴言を連発した。
搭乗客が客室乗務員の注意に従わず「航空機の安全を阻害」した場合、機長権限で「禁止命令書」が出せる。それでも乗客が違反行為をやめない場合は、乗客に降りるよう命じたり、警察の出動を要請でき、50万円以下の罰金が科せられる。それを客室乗務員が説明しても、
「そんな法律は知らない!」と威嚇をやめないため、とうとう男の前で機長が出した「命令書」を読み上げた。すると男は「警察でも何でも呼んで逮捕すればいい」と開き直った。男は警視庁東京空港署員に引き渡され、旅客機は出発が30分遅れてしまった。
航空機内での乗客による迷惑行為の件数、さらに04年の改正航空法に基づき、機長が「禁止命令書」を出した件数は、朝日新聞(07年3月28日付け)によると、「04年が403件(うち命令21件)、05年368件(同20件)、06年383件(同24件)と高止まりしている」だそうだ。
それまで表に出なかったのが顕在化した
全日空にJ-CASTニュースが取材すると、トラブルが多いのは喫煙、ケータイ、座席シートに関するものだという。酒に酔って客室乗務員の体に触ったり、卑猥な言葉を口にしたりする「セクハラ」も多いのだと言う。読売新聞の07年2月7日付けによると、06年1月に座席でケータイを使用していた乗客を注意したところ、「乗客は激怒して航空機から降りることを希望。客室乗務員と付近の乗客に大声で暴言を浴びせながら飛行機を立ち去った」トラブル事例があったという。
06年6月には、離陸前にリュックサックを放置していた乗客に収納するよう頼んだところ、指示に従わなかった。「禁止命令書」を交付すると、
「この乗客はふて腐れ、大声で禁止命令書を読み上げながら航空機を降りたという」
また、07年6月14日のTBS系報道バラエティー「朝ズバッ!」では、みのもんたさんが、
「飛行機に乗ったとたんにステテコ姿になった人がいた。理由は『ズボンがシワシワになる』だって」
というエピソードを紹介している。
航空機内のトラブルがこれほど目立ってきたのはどうしてなのか。全日空広報は、
「報道では『マナーが急に悪くなった』、というものもありますが、04年の改正航空法以降、法律の後ろ盾ができたため、注意しやすくなり、それまで表に出なかったのが顕在化したものともいえます」
と説明する。昔からマナーの悪い客はいて、苦労させられてきたということのようだ。警視庁東京空港署の担当者は、「あくまで私的な見解」としながら、
「権利意識が強くなっている。高い航空運賃を払ってなぜ、あれこれ指図されなければならないのか、という感じだろう。しかし、一人の不届き者のために大勢の人が迷惑を受け、航空機ならば200人〜300人の命にかかわる問題にもなる。それで50万円以下の罰金というのは、あまりにも罰が軽い」
と話している。
■J-CASTニュースとは?
従来のマスコミとは違うユニークな視点で、ビジネスやメディアに関するさまざまな記事を発信しています。読者投稿のコメント欄も充実!
会社内の「人間関係」をテーマにした「会社ウォッチ」も10月オープン!