コムスン事実上の「廃業」 経営トップに「驕り」はなかったのか
訪問介護大手のコムスンが青森県や兵庫県など全国8カ所の介護事業所で、雇っていないホームヘルパーなどを働いているように見せかけて介護事業所の指定を不正に受けていた問題で、厚生労働省は2007年6月6日、コムスンの介護施設の新規開設や更新を認めないよう都道府県に通知した。現在コムスンは全国に2081カ所の事業所を抱えているが、8割にあたる約1600カ所が08年4月以降11年度のあいだに指定が取り消される。新規開設はおろか、これらの事業所の更新(6年ごと)も認めないとなると、これは事実上の「廃業」処分だ。
経営トップは、一世を風靡したディスコの仕掛け人だった
厚生労働省は、「介護を受ける方を直接面倒見るヘルパーがいないにもかかわらず、いるといって指定を受けていたことは利用者本位のサービスが提供できる体制ではないと判断しました。きわめて重い処分だと考えています」と話している。
コムスンを利用している会員は6万5248人(07年2月末時点)。親会社のグッドウィル・グループ(GWG)は6月6日付のニュースリリースで、「利用者の説明、他事業者への紹介等を徹底します」としている。
コムソンは「ハロー コムスン」のキャッチフレーズのテレビCMと24時間訪問介護サービスを売りものに急成長した。人材派遣会社の「グッドウィル」とともに、GWGの売上げの多くを稼ぐ中核企業だ。
そのトップを務める折口雅博氏は、1994年ごろに一世を風靡した東京・芝浦の巨大ディスコの「ジュリアナ東京」や六本木「ヴェルファーレ」の仕掛け人だった。その後、華やかな世界から実業界へ転身し、95年にグッドウィルを設立。04年には経団連理事に就任し、紺綬褒章を受章している。
「コムスンの誓い」が泣いている
社名の「グッドウィル」は、米国では「善意」の意。
コムスンの企業理念であり、テレビCMでも流れる「コムスンの誓い」は、
――私たちは一人でも多くの高齢者の尊厳と自主を守り、お客様第一主義に徹します。
私たちは、明るい笑顔、愛する心、感謝の気持ちを大切にします。
私たちは、常にサービスマインドを心がけ、真心を込めて介護を行います。
私たちは、責任をもってお客様のプライバシーを守ります。――
と素晴らしい「言葉」を掲げている。
にもかかわらず、かつては強引なリストラを断行して現場の介護ヘルパーともめたり、最近は「事業所に電話してもいつも留守だった」などの苦情が各自治体に寄せられるなど、コムスンをめぐる評判はよくなかった。また折口氏自身、GWGの株式上場で得た資金で東京・田園調布に豪邸を建てたり、高級外車を乗り回したりと、「ジュリアナ」時代のド派手なプライベートの話題も盛りだくさんだった。
多くのマスコミで介護・福祉事業を手がける意義を熱く語る姿とは、あまりにかけ離れた経営トップの生活ぶり、人物像に、「コムスンの誓い」も泣いている。