欧州各国リーグは終わりを告げたが、ユーロ2008予選は佳境に入る。6月2日に対フェロー諸島戦、6日に対リトアニア戦を控える世界王者イタリアだが、代表招集を固辞し続けているFWトッティ(ローマ)に続いて、CBネスタ(ミラン)が代表辞退を発表した。

 ラツィオ下部組織育ちのネスタは、94年にわずか17歳でセリエAデビューを果たすと2年半後にはA代表デビューを飾った。守備の国の期待を一身に背負いながら、世界最高レベルのCBとして長年プレーしてきた。だがクラブと代表での栄光のキャリアは、その引き換えに疲労と消耗をもたらし、移動や合宿を繰り返す生活は家族や大事な人たちとの時間を奪ってきた。

 ネスタはこの30日に、長く恋人だったガブリエッラ・パンニョッツィ嬢と晴れて結婚式を挙げる。当初、今回の代表辞退は挙式のためと見られていたが、このまま代表引退するとの公算が強くなった。ネスタは先日、CLを制したばかりのミランと2011年まで契約を延長した。31歳になりキャリアの最後を見据え、高いレベルでのプレーをキープするために代表かクラブか、二者択一を自らに問うた決断なのだろう。それは、ミランのゴール前で隣にいる偉大なキャプテン、マルディーニがかつて下した苦渋のそれと同じにちがいない。

 ネスタの決断に伊代表監督ドナドニは「彼はまだ若いし、十分にやれると思っている。残念でならないが、誰に対しても代表への扉を閉ざすつもりはない」と複雑な心境を語る。W杯優勝国のベンチを引き継いだ者としてドナドニの苦悩は続く。

弓削高志