ホリエモン情熱ファンド

── 前々回に05年のニッポン放送争奪戦後にLD株を売って140億円得たと言っていたが、そのうち70億円は「ホリエモン情熱ファンド」に出資したということだった。

 はい。

── ファンドに出資するということは、一般的には自分が儲(もう)けるためではないか。

 ホリエモン情熱ファンドは、LDでは出資できないような海の物とも山の物とも分からない物に出資しようと思っていた。だから、儲けようとしていたというのは違いますね。

── 自分の利益を考えたのでは。

 それはまったく関係がない。ホリエモン情熱ファンドに出資したときの気持ちとしては、まったくない。世の中に役立つための投資ですよ。

── 出資比率で、70億円以外はどうなっていたのか。

 それは1円しか入ってなくてシビれましたね。保釈されて出てきて、1円なんだよと聞かされて、騙(だま)しやがったな、と。(LDFには)1000万円とか出資していると言われていたんで、ビックリしたんですけど。

── 05年7月7日のLDF取締役会で出資が決まっている。その議事録に1円とある。

 ウワー、確認していない。僕は1000万円とか1億円だと思っていた。

── 70億円と1円だったのか。

 そうなんですよ。シビれました。

── 銀行口座を見ると、あなたから70億円。LDFから1円。

 そうですか。

── 業務執行組合員はLDFか。

 そうだと思います。

── 報酬で、管理費は。

 はい、月600万円。国際事業部に300万円。ファイナンス事業部に300万円だったんだと思う。

── 05年7月7日のLDF取締役会ではどうなっていたのか。
 
 出ていないかも。保釈されたら、1円でシビれた。

── あなたのスケジュールには、「LDFミーティング」とある。

 先にやられちゃったこともある。

── あなたの記憶では600万円なのか。

 はい。

── 成功報酬は。

 成功すると思っていなかったので、考えていなかった。

── 自分の利益はまったく考えずにファンドに出資したと。

 はい。

── 誰のためにやっていたのか。

 会社のため。

── だったら、成功報酬を入れないといけないのでは。

 すぐに成功するとは思っていない。必要もねえのに売らせやがって、いろんな人が来て運用させてくださいとうっとうしいんですよね。

── 運用益は誰が受け取るのか。
 
 私だと思うが、出ないと思う。

── 振り込んだお金はどう使われたのか。

 航空機の購入と宇宙カプセルの展示費用。そんなところが大きい。

── 航空機の購入はいくらか。
 
 何十億か。

── 宇宙関連は計20億円くらいか。

 そうかもしれない。

── 会社にとっての利益は。

 管理収入。

── 飛行機は27−28億では。

 そうかも知ません。

── なんという飛行機か。
 
 ガルフストリームG4(機種名)。宇宙事業への布石です。宇宙カプセルで旅行する顧客を輸送するための。

── 実際には飛行機は何に使っていたか。

 仕事ですね。出張とか。100パーセント仕事のためというわけではないが、ほとんどは。

── 女性を連れて、旅行をしたこともありますね。

 女性を連れていたっていいじゃないですか。

── LD株を売った金でファンドを作って、女性を乗せたり、自分の夢のために使っていたのでは。

 それはちょっとうがった見方ではないですかね。

── 誰が運用していたのか。

 国際事業部。ちなみに運用手続き人に貸した場合も国際事業部に落ちるようにしてある。

── なぜLDFに落ちないのか。

 LDFは何もやっていないから。

── 要するに、あなたはLD株が上がったら売って、ファンドに投資したことにして、実際の運用は部下にさせて、自分の関心がある分野や欲望のために使っていたのではないか。
 まったく違いますね。それは心がねじ曲がっている証拠ですよ。悔い改めた方がいい。

(小坂裁判長)(余計な)発言は控えて。

── (藤野検察官に戻る)ホリエモン情熱ファンドの株式投資を決めるのは。

 私が決めていました。

── どこに投資したのか。

 テレビ東京。あと、アイ・エス・ビー。もう1個、プラスチックのカードを作っている会社。

── なぜテレビ東京に投資したのか。

 資金運用のため。儲ける儲けないに関わらず、余剰資金を運用するのは当たり前ではないか。

── テレビ東京は、だれかに勧められて買ったのか。

 それはないですね。

── だれに指示したのか。

 Nさん? 中村さん? ちょっと分からないなあ。

── 05年7月12日に、あなたから中村(長也)さんへのメールで、「テレ東の株式4.9パーセントを取得しようと思う」とある。あなたはこれまでの公判で、中村さんとは関係が薄いと言っていたが。

 言いましたよ。時期的に関係が薄いと言った。今回の事件と1年ぐらい違うから。

── 規模の小さい会社を買って、プロ野球やニッポン放送で有名になったあなたは、あなたの名前が株主名簿に出て、株価を上げようとしたのでは。

 株主名簿で僕の名前が出て、よい影響があるとは思いましたけれどね。

── LDでは、取締役個人が決済できる範囲はいくらまでか。

 よく分からない。取締役は業務管理をするわけだから。取締役会と執行役員はあるが、取締役にはない。

── 執行役員は。

 当時は10万円か50万円。

── それ以上は個人決済できないのか。

 取締役会で決議するか、あとは社長が1000万円まで。

── ところで、取締役会は多数決だから、あなたの提案が取締役会で却下されたことは。

 ありますね。イーバンクやめよう。ニッポン放送続けよう。

── テレビの深夜番組のスポンサーにもなっていますね。

 ありますね。「ミニスカポリス」(強い調子で)。

── 取締役会で却下されたのでは。
 
 取締役会で却下されたけど、社長決済で。

貸し株料授受の有無

── クラサワコミュニケーションズの買収に関して、あなたは貸し株そのものについて知らないと言っていたが。

 貸し株という言葉は知っていたし、株を貸すんだな、とは分かったが、当時、貸し株の詳しい仕組みは分からなかった。

── 貸し株をしたのは間違いないですよね。

 契約書にサインしたのは事実。貸し株そのもので利益を得ようと思ったことはない。

── 貸し株と言うのは、あなたからほかのだれかに貸すぐらいのことは分かていたか。

 株を貸すという現象が分からない。現金なら向こうにいくが、株を貸しても名義は僕のままなのか、口座にそのままあるのか、よく分からなかった。貸すという行為がどのようなプロセスで行われるのか分からなかった。

── (クラサワの完全子会社化をリリースした)03年11月当時に知っていたことは。

 貸し株ということが存在して、僕が貸し株を頼まれることがある。貸すというおこないが具体的にどういうプロセスか分かっていない。貸してくれと言うのだから、何かいいことがあるのだと思いますが。

── お金を貸して利息をもらうことや、物を貸して貸し賃を得るということは世の中で広く行われていますよね。

 そうですね。

── 株を貸しても、利益が出ると思っていなかったのか。

 当時の僕はそんなに価値がある物だと思っていなかった。当時、LD株に抱いていたイメージは二束三文。

── 貸し株料という物があることは知っていたか。

 そんなに価値のある物だと思っていなかったから、そんな発想が浮かんでこなかった。

── 03年8月20日は株式10分割の効力発生日ですね。

 覚えていないが、その前後にやった。効力発生って子株が出ることか。03年であったことは確か。

── 03年8月20日に10分割の効力が発生している。少し前の7月にエッヂ(LDの前身)株を、ある証券会社に1万株貸してくれと言われていないか。

 1万株か分からないが、貸し株はしました。

── 6月11日のに証券会社の担当者からあなたに「先日、私の方からお願いいたしました貸し株の件を、なにとぞご検討いただきたいと思いまして、メールさせていただきました」というメールが送られている。

 メールは覚えていないが、頼まれたことは覚えている。

── 実際に貸し株が実行されるまで、担当者と何度も何度もメールをやり取りしている。

 覚えていない。

── 証券会社の担当者は6月12日午後12時39分に「社長に今回お願いしているのは、お持ちの株の売却ではなく、2カ月間お貸しいただきたいということです。当然、お借りしている期間分の金利はお支払いいたします」とメールを送っている。

 そういうメールがあるなら、やり取りはあるかも。

── 10分後の12時49分には、あなたは「あのあといろいろ考えてみたのですが、貸し株がわたし個人と会社にどんなメリットがあるのか分からりません。確かに権利落ち後に株価は乱高下いたしますが、その後は適正水準に落ち着きます。金利といっても、大した額じゃないですよね。具体的にはいくらぐらいですか」と書いて返信している。

 記憶にないが。

── 金利については、午後4時21分に担当者が返信している。「5万円(仮)×2万株(分割後)×6%(年率)×12分の2=1000万円。1000万円くらいを考えています」。その部分にインラインで「なるほど」と。

 記憶にない。

── 6月17日には「具体的には、私に渡る貸し株料の10の位が会社に渡ればいいと思っています」と打っている。

 要は、みずほが貸し株貸し株とうるさいので、どうしても貸し株してほしければ、会社に仕事をちょうだいよ、という趣旨でしょう。ホント、貸し株料って興味がないんですよ。これも貸し株料もらっていないでしょ、少なくとも私個人は(強い調子で)。

── 7月3日に契約し、7月8日、9日に計1万株のエッヂ株がみずほ証券に貸し出されたんですね。

 はい。1万株か覚えていないが、みずほに移行した。

── 9日午前11時34分に担当者からあなたに対して「この度はお忙しい中、まことにありがとうございました。貸し株料を社長様の口座に振り込みたいので、銀行口座名教えてください」というメールがきている。そして午後4時54分には、銀行名、支店名、口座番号をメールで送信している。覚えていないか。

 覚えていません。

── 貸し株は予定通り返却されているのですが、03年7月10日付であなたの講座に貸し株料が入金されていないか。

 されていないと思いますけど。うーん、記憶にないですね。

── 入金はあると思うが。以上です。

【了】

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