大手コンビニ3社のPB商品

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 ローソンのPB(プライベートブランド)商品「悪魔のおにぎり」「バスチー」の売れ行きが絶好調です。コンビニでは、食品を中心にPB商品が売り場の多くを占めるようになり、SNS上でもたびたび話題になります。店舗数が飽和状態と言われ、競争が激化する中、PB商品はコンビニにとって救いの神となるのでしょうか。コンビニ業界のPB商品の販売状況や各社の戦略について、流通アナリストの渡辺広明さんに聞きました。

NB商品のコンビニ限定バージョンが増加

Q.そもそも、コンビニがPB商品の開発を強化する理由は。

渡辺さん「2つあります。一つは、以前に比べ、コンビニ各社でたばこの売り上げが伸長しているからです。売り上げのうち、たばこが占める割合が25%前後にまで拡大しています。コンビニ各社では、各商品の利益率を約30%と想定して販売しますが、たばこの実際の利益率は10.8%と言われており、たばこの占める割合が増えれば増えるほど利益率が低下していきます。そこで、利益の低下を食い止めるためにPB商品の開発を強化しています。

メーカーのNB(ナショナルブランド)商品の利益率が30〜35%と言われているのに対し、PB商品は50%前後。同じような商品であれば、PB商品の方が確実に利益が取れます。また、コンビニ各社は小売業界の中では圧倒的な店舗数を誇るので、良質なPB商品が開発できます」

Q.もう一つの理由は。

渡辺さん「メーカーにとっても、売り上げを確保できるメリットがあるためです。PB商品は基本的にコンビニが買い取ってくれるので安定的に売り上げが見込めます。また、工場の稼働率も上げることができます。さらに、PB商品を開発することで、世話になったコンビニ側が他のNB商品も一緒に買い取ってくれます。そこで両社の利害が一致するわけです」

Q.PB商品にも、さまざまな種類がありますね。

渡辺さん「コンビニのPB商品には3つのタイプがあります。(1)コンビニが単独で開発した商品(2)メーカーのNB商品を店舗限定商品に仕上げた『NPB(ナショナルプライベートブランド)』商品、(3)メーカーとコンビニが共同開発した『ダブルチョップ』商品です。

最近は、NPB商品とダブルチョップ商品が増えています。例えば、NPB商品は、ローソンでのみ販売されている『ボス コーヒーファーム』シリーズ、セブン&アイグループ各社で販売中の『キリン一番搾り 清澄み』などです。なお、商品の見分け方ですが、コンビニのブランド名のみ表記されている場合はPB商品、メーカーのブランド名のみ表記されている場合はNPB商品、コンビニとメーカー名が商品の表面に一緒に表記されている場合は、ダブルチョップ商品に該当します」

Q.なぜ、NPB商品やダブルチョップ商品が増えているのでしょうか。

渡辺さん「通常のPB商品では、他社との差別化が難しくなっているためです。例えば、コンビニ各社で販売されているスナック菓子のPB商品を見ると、各社とも似たり寄ったりの印象で、指名買いしたい商品はそれほど多くないと思います。そこで、さらなる差別化を図るため、メーカーの人気商品とコラボした店舗の限定商品などを発売するようになりました。大手コンビニ3社は全国に各社1万4000店舗以上あり、購買力があるので、メーカー側が断ることはほとんどありません」

ヒット商品を連発するローソンの秘密

Q.PB商品の開発期間は。また、商品に携わる人の数は。

渡辺さん「商品によって異なりますが、半年から1年で開発するケースが多いと思います。『こういうものが作りたい』とバイヤーが提案することもあれば、『こういうものが流行しているのでどうか』と、メーカーから提案する場合もあります。商品開発に携わる人は、各社とも100人程度だと思います。ローソンだけは、地域限定商品の開発に力を入れており、各地域でバイヤーを充実させています」

Q.ローソンは新商品が次々とヒットしていますね。

渡辺さん「大手3社の中でも群を抜いて面白いですね。ローソンで商品を探すときは宝探しのように楽しめます。なぜ、話題性のある商品が次々と誕生するかというと、グループ内でさまざまなタイプの店舗やサービスを抱えていて得意分野が多く、新たな発想が生まれやすいためです。ローソングループでは、子会社が運営するチケット販売サービス『ローソンチケット』の影響で、昔からエンタメを中心とした話題に強く、商品開発には遊び心を持って取り組む傾向があります。

また、安価な商品が特徴の『ローソンストア100』、健康志向の商品を取りそろえた『ナチュラルローソン』、さらに2014年に傘下にした高級スーパーの成城石井があるため、他社に比べ、商品を試せる場があります。これまで培った知見を生かすことで、各店舗のターゲットに合った商品開発ができるだけでなく、店舗の垣根を越え、さらに幅広い客層に売れるものを作るなど、柔らかい発想を持って商品開発に取り組むことも可能です。

『面白い奴が面白い商品を作る』というのが商品開発の本質ですが、ローソングループにはそうした人材が育つだけの下地があると思います」

Q.その他のコンビニの得意分野は。

渡辺さん「セブン-イレブンは弁当や冷凍食品など、中食(弁当や総菜、調理・加工された食品を指す)が強いです。職人のように、徹底的にこだわり抜いて製造しています。弁当がおいしいのは、かつてセブン&アイ・ホールディングスの会長を務めた鈴木敏文さんの影響が大きいと思います。商品開発時に、鈴木さん自ら弁当を味見していましたが、鈴木さんの舌と一般消費者の舌の感覚が合っていたからこそ、おいしいお弁当が誕生したと思います。

他社のトップは会食が多いそうです。高級な物ばかり食べていたら、庶民受けする商品はなかなか作れませんよね。また、以前のセブン-イレブンではやらなかったような、外部とのコラボ商品も積極的に開発するようになりました。今後もどんな商品が出るのか楽しみです。

ファミリーマートは親会社の伊藤忠商事が繊維に強いことから、衣料系の商品が強いです。無印ブランドの商品の取り扱いをやめ、事業を見直すようになってからは品質がとても向上しています。無印良品を扱っていたときより、利益率が20%ほど上がったと推測しています。コンビニにおけるPB商品は今後、戦国時代を迎えるかもしれません」