ドライブレコーダーで、「実は録画できていなかった」というトラブルが増加しています。その多くの原因は、記録媒体であるSDカード類にまつわるもの。高機能化でますますデータ容量が大きくなるなか、SDカード類の取り扱いに注意すべきかもしれません。

「録画できていない」そのワケは

 ドライブレコーダーの出荷台数は2017年度上半期に約85万台でしたが、下半期には一気に約182万台まで増加、2018年度上半期も約165万台で推移しています。急激な増加の背景には、2017年10月ころ、東名高速で同年6月に発生した「あおり運転」による死亡事故関連のニュースが大々的に報道され、ドライブレコーダーによる事故の記録映像がテレビなどで繰り返し放映されたことがあるかもしれません。


ドライブレコーダーのイメージ(画像:Asawin Klabma/123RF)。

 カー用品店「オートバックス」を展開するオートバックスセブンによると、車両の前後にカメラがあるモデルや、1台で全方位撮影といったタイプが増えているほか、「4K」動画対応など画素数も向上、さらには駐車中も録画する駐車監視機能や安全運転支援機能が付いたものなど、高機能化が進んでいるといいます。2018年12月の売上では、売れ筋ベスト5のうち3つが「前後カメラ」タイプだそうです。

 性能や機能の進化にともない、データ容量も増大しているとのこと。記録媒体であるSDカードやマイクロSDカードにも、注意を払ったほうがいいかもしれません。

 というのも、ドライブレコーダーには以前から、SDカードなどのエラーにより「必要なときの映像が記録されていなかった」といった相談が国民生活センターに多く寄せられており、2018年8月には同センターが注意を呼び掛け、メーカーなどにその対策を求めているのです。

 同センターは、ドライブレコーダーは運転中の映像を常時録画することから、ほかのSDカード使用機器と比べて「SDカードへ情報を書き込む回数は特別多くなります。そのため、SDカードを定期的にフォーマットする(記録内容を消去する)などのメンテナンスが必要であるほか、消耗品であることから定期的に新しいものと交換する必要があります」としており、トラブルの相談を寄せた人の約6割が、そのことを知らずにフォーマットや交換を実施していなかったと報告しています。

「フォーマット不要」モデルでもフォーマット必要?

 オートバックスセブンによると、定期的に「フォーマットしましょう」といったアラートを出す機種もあれば、特殊な記録型式を採用してカードへの負荷を少なくすることで、「定期的なフォーマットは不要」とうたっているモデルもあるとのこと。一方、ドライブレコーダーの業界団体であるドライブレコーダー協議会によると、フォーマットに関するアナウンスがないモデルもあり、稼働していても、本体がカードを認識せずに録画できていないケースもあるといいます。

 国民生活センターの報告によると、フォーマットの目安についても「1、2週間に1度」「定期的に」「月2回程度」など、各モデルの取扱説明書で表現が異なります。前出の「フォーマット不要」をうたう機種など、フォーマットに関する記載が取扱説明書にないものもあるといいます。また、交換に関する記載も、「不具合が発生した場合は」「定期的に」「3か月から1年ごと」「6か月を目安」「2〜3年を目安」など様々です。


前後カメラモデルの例。JVCケンウッド「DRV-MR740」(画像:JVCケンウッド)。

 結局のところ、SDカード類はどのように取り扱えばよいのでしょうか。ドライブレコーダー協議会は次のように話します。

「SDカード類の性能や信頼性には大きく幅があるため一概には言えませんが、安心して使う上では、最低でも1か月に1度はフォーマット、1年で交換すべきです。『フォーマット不要』モデルも、通常よりカードを長く使えるものの、定期的にフォーマットや交換が必要でしょう」(ドライブレコーダー協議会)

 同協議会によると、SDカード類は「書き込み可能回数」が決まっており、これがすなわちカードの「寿命」とのこと。「たとえば前後カメラモデルであれば2台のカメラ映像を書き込んでいくため、単純に考えて書き込み回数も2倍です。高機能化にともない、カードへの負荷はますます大きくなっています」と話します。

SDカードそのものの選択も重要

 オートバックスセブンによると、ドライブレコーダーは機種によって、SDカード類の書き込み速度など、推奨スペックや記録容量が指定されているそうです。国民生活センターの報告では、「録画できていない」といった相談を寄せた1割以上の人が、その機種に合っていないカードを使用している可能性があるといいます。


全方位撮影モデルの記録映像例。カーメイト「ダクション360」(画像:カーメイト)。

「SDカードならば、現在はおおむねスピードクラス10(データ転送速度最低10MB/秒)、容量32GBまたは64GBのものがメインでしょう。容量256GBのカードなどもありますが、容量が高ければ高いほどいいわけではなく、本体が古いと対応していない場合もあります」(オートバックスセブン)

 なお、主に耐久温度の幅を広げ、耐久性や信頼性から「ドライブレコーダー向け」をうたっているSDカード類もありますが、ドライブレコーダー協議会によると、これらは一般的なSDカードと記録チップなどが異なり、値段が高くなる傾向があるそうです。

【写真】ドラレコに適したSDカード、ココに注目


記録の書き込みを繰り返すドライブレコーダーでは、書き込み速度が比較的速いSDスピードクラス10が推奨される傾向。写真はエレコムがドライブレコーダー向けとしているMF-CASDU11A(左)とMF-CAMRU11A(画像:エレコム)。