地球観測衛星Aquaに搭載された大気サウンダ(AIRS)が撮像したハリケーン (c)  NASA/JPL-Caltech

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 米航空宇宙局(NASA)は29日、気候変動による熱帯海洋の温暖化により、今世紀末までに台風のような暴風雨の頻度が上昇する可能性があるという報告を行なった。

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■日本も運営する地球観測衛星のデータを使用

 研究を実施したのは、NASAジェット推進研究所のハルトムート・アーマン氏らによって構成されるグループだ。研究グループは、日米ブラジルの3カ国が共同運営する地球観測衛星Aquaに搭載された大気サウンダ(AIRS)を活用した。地球の水循環や地球環境変動等を研究するのが目的であるAIRSは、平均海表面温度と暴風雨の発生との関係を調査するために、熱帯海洋のデータを取得しているという。

 AIRSが取得した15年分のデータを分析した結果、研究グループは1時間当たり最低25キロ平方メートルの領域で少なくとも3ミリメートルの雨をもたらす暴風雨が、約28度以上の海表面で発生することが判明した。海表面の温度が1度上昇するごとに、暴風雨は21%も増加することも同時に明らかになった。

■地球温暖化と暴風雨との定量的関係が初めて明らかに

 現在、年間に大気中の二酸化炭素が1%ずつ増加しているという気象モデルが採用されている。これによると、熱帯海洋の表面温度は今世紀末までに2.8度上昇すると予想される。研究グループは、このデータに基づき、暴風雨の頻度が60%上昇するという予測を導き出した。

 「暴風雨が温暖な環境下で発生することは共通認識であり、一般的には、1年で最も暖かい時期に発生する。我々のデータは、暴風雨がどのくらい増加するかを定量的に示した最初の試みだろう」とアーマン氏は語る。

 「このまま地球温暖化が解消されなければ、暴風雨がもたらす洪水や災害が増大し、最終的に農作物に被害をもたらすだろう」と同氏は警告する。

 研究の詳細は、米地球科学誌Geophysical Research Lettersにて2018年12月に掲載されている。