コンビニ大手のファミリーマートが苦戦しています。既存店客数は3月〜6月ともに減少、既存店日商は3月こそ前年を上回ったものの、4月〜6月で前年を割りました。そんなファミマが、打開策として模索しているのが「異業種とのコラボ店」です。あのドン・キホーテから、フィットネス、コインランドリー、ついには書店ともコラボした店を続々と増やしています。フリー・エディター&ライターでビジネス分野のジャーナリストとして活躍中の長浜淳之介さんが、こうしたコンビニのコラボ店の出店加速の動きについて、現地への取材を重ねながら詳しく分析しています。

ファミリーマートが加速する、異業種店とのコラボレーションは成功するのか?

ファミリーマートの異業種とのコラボ店の出店が加速している。

同社の広報担当者によれば、今年2月14日にオープンしたフィットネスジム併設店では、「フィットネス会員が当初計画していた2倍のペースで増えている」(ユニー・ファミリーマートホールディングス広報室・篠崎直人氏)とのこと。今年6月にオープンした、ドン・キホーテとの融合店3店でも「売上が通常の店の1.5倍に伸びた」と、予想を上回る反響に手ごたえを感じているようだ。 同社が次々と進めている異業種コラボ店の今を取材した。

ドンキとファミマという「異色コラボ」の手応え

ドン・キホーテとのコラボ店は6月1日、東京都立川市に「ファミリーマート立川南通り店」、東京都目黒区に「ファミリーマート大鳥神社前店」、同月29日東京都世田谷区に「ファミリーマート鎌田三丁目店」をそれぞれオープンした。

これは、ユニー・ファミリーマートHDと、ドンキホーテHDが昨年11月に締結した資本・業務提携に基づいて、直営の共同実験店舗を運営するものだ。

まずは、ユニーの総合スーパー「アピタ」及び「ピアゴ」の6店舗を、コラボ業態「MEGAドンキ・ホーテUNY」に改装。横浜市神奈川区、名古屋市港区などにあるこれらの店の3〜4月の売上が前年の2倍を超える成果を上げた。

そこでコンビニにも、ドン・キホーテのワクワクする売場づくりのノウハウを導入。ネットでは体感できない「お買い物の楽しさ」を追求するという趣旨だ。コラボ3店にはドン・キホーテが推奨する日用品、加工食品等約2800種類を導入した。立地を変えて、顧客の反応を見極めているところだ。

47坪の「ファミリーマート立川南通り店」の場合、取扱商品数は約5000種類で通常の1.7倍。そのうちドン・キホーテの商品は約2800種類だ。

実際に店を訪れてみると、ドン・キホーテとのコラボ店だからと、遠方から目指して来る人が多く、通常のコンビニでは置いていない激安商品をまとめ買いする顧客が目立った。1人あたりの購入量が多いので、売上が増えている。店の中を一通り見て回るので、顧客の滞在時間も長くなっている。おにぎりとお茶だけ買って帰る人のほうが少ない。

陳列の仕方は天井のほうまで棚をつくって商品を高く積み上げたり、通路にわざとはみ出して什器を置いたりと、ドンキ流演出を導入。

商品も、扇風機、携帯アクセサリー各種、精力剤、ホッピーやバイスサワーなど立ち飲み屋にありそうなお酒、人生ゲーム、ペロペロキャンディー、うまい棒各種、老舗カレーショップのレトルトカレー各種など、一般のコンビニではまず置いていない商品がたくさん置いてあってついつい手に取ってしまう。

立川駅南口はファミリーマートの店が多く、「ファミリーマート立川南通り店」から半径500メートル圏内に8店もの店がある。また、すぐ斜め前には「ローソンストア100」があり、棚の高いところまで商品を並べ100円均一で激安販売している。

自社競合を避け、安さで「ローソンストア100」に売り負けないようにする目的としては、ドン・キホーテとのコラボ店への転換は有効な対策と見受けられた。

ファミマとフィットネスが融合した「Fit&Go」の革新性

フィットネス併設店は、東京都大田区の東急池上線長原駅の近くに「Fit&Go 大田長原店」をオープン。同社としては初のフィットネス事業で、直営の店である。フィットネス利用者は30代、40代の男性が多く、コンビニのコアな利用者と年齢層が重なることから、フィットネスとコンビニを複合した店舗を開発した。

店の立地は、駅の改札から徒歩2、3分ほどと近く、私鉄沿線らしい小さな商店街の一角で、背後に住宅街が広がっていることから選ばれた。長原駅の2016年の乗降客数は1日1万5944人で、池上線15駅あるうちの10番目と決して大きい駅ではなく、地域に密着した施設を目指している。

同店は1階がコンビニ、2階がフィットネスとなっている。フィットネスはガラス張りになっているので、外からトレーニングしている様子が見える。そのため開放感があり、女性でも入りやすい雰囲気を演出。男性ばかりでなく、女性にもっと気軽にフィットネスを利用してもらいたい狙いもある。

入会金なし、7900円(税抜)の比較的リーズナブルな価格で24時間365日利用できる。

ジムの中にシャワーやパウダールームも設けてあって、実際に女性の会員が4割と高めになっている。通常のフィットネスでは、女性の比率が2〜3割なのに対して、女性が多く集まってきているのは、「1階がコンビニで、いつも人が入っている安心感があるのではないか。見学に来て、そのまま会員になる人が多い」(篠崎氏)とコンビニとの相乗効果が出ている。

マシンは通常のジムにあるものが一通り揃っていて、体幹、体脂肪燃焼、筋トレ、ストレッチ、有酸素運動といったテーマごとにゾーンが分かれている。

使い方がわかるように、全てアプリが用意されているので、初心者でもスマートホンの画面にアプリを呼び出し、やり方をチェックしながらトレーニングを進めることができるのが大きな特徴。なお専用アプリは、日本唯一のアスリート専門パフォーマンス開発機関ドームアスリートハウスのパフォーマンスディレクターでジェネラルマネージャー・友岡和彦氏の監修を受けている。初心者から上級者まで、幅広い人のトレーニングをナビゲーションしている。

有料で予約制ではあるが、パーソナルトレーナーと1対1でセッションが受けられるサービスもある。

プール、エアロビクスなどのレッスンはなく、マシンに特化した施設となっている。

1階のファミリーマートの店舗では、通常の利用の他に、ジム利用の前後に弁当を買ったり、ドリンクを飲んだりするシーンを想定。イートインを広めに取り、テーブル席も合わせて16席ほどを設けている。

イートインではジムの帰りに立ち寄って、会員たちが交流する風景が見られ、コミュニティづくりの溜まり場として活用されている。

また、プロティン、ロイヤルゼリーなどのサプリの品数を多く揃え、スポーツウエアも販売している。

ファミリーマートでは従来からライザップと提携した糖質コントロールをテーマとした健康食品を販売しているが、こういった商品群もフィットネス併設なら活きてくるだろう。

コインランドリーとのコラボ店も

コインランドリーとの複合店も、洗濯物を洗っている間に買物ができて時間の有効活用になると、新しく提案している。仕上がるまでの間、イートインでコーヒーを飲んで待ってもらってもいい。

市原辰巳台西二丁目店

今年3月、千葉県市原市に「ファミマランドリー市原辰巳台西二丁目店」を既存のファミリーマートの駐車場を改装して出店。コンビニの客足が鈍る雨の日に、顧客数が1.5倍に伸びた。

杉並永福四丁目店

そこで5月には、東京都杉並区にコンビニとの一体型店舗「ファミマランドリー杉並永福四丁目店」をオープン。

洗濯乾燥機3台、洗濯機2台、乾燥機4台を揃え、料金は洗濯乾燥機45分1,000円が基本となっている。

地元の老舗書店とのコラボから産直品を揃える店まで

書店と一体型の店もあり、兵庫県加西市に17年7月にオープンした、地元の老舗書店である西村書店とコラボした店では、200坪を超える店舗に約10万冊の本を揃えている。

24時間営業で、通常のコンビニの商品のほかCDなども買え、イートインやキッズスペースも擁している。ちなみにこのコラボ店は、地域に3店ある西村書店の店舗で本店にあたる。

このほか、通常のコンビニでは置いていない、医薬品、生鮮食品、産直品などを買うことができる地域のニーズに応えた店も、コラボによって続々とオープンしている。

例を挙げると、ドラッグストアーとの一体型店舗「ファミリーマート+薬ヒグチ淡路町店」(東京都千代田区)、スーパーとの一体型店舗「ファミリーマート+サンプラザ南国下末松店」(高知県南国市)、JA全農の生活事業であるAコープとの一体型店舗「ファミリーマート+JA遠中サービス」(静岡県周智郡森町)などがある。

一方で、2014年7月にオープンした東池袋4丁目店でのフジオフードシステム「まいどおおきに食堂」とのコラボ店は、コラボが解消されて別の場所に移転している。

コンビニと外食が一体化した、というよりもコンビニの中に飲食店があるユニークな「東池袋四丁目食堂」はイートインの進化形として注目されたが、その跡地にはイオン系のミニ食品スーパー「まいばすけっと」が今年4月にオープンした。

また、第一興商とコラボした「ファミリーマート+カラオケDAM」は、14年4月に蒲田駅前南口店をオープン。その後、千葉県松戸市の松戸栄町西四丁目店、大分県別府市の別府浜町店と2店を加えて計3店を営業しているが、当初の3年間で30店に増やす計画には全く届いていない。

コンビニで買った飲食物をカラオケに持ち込むことができる店になっていて、カラオケ店員が調理をしなくて済み、かつコンビニの売り上げも取れる合理的な提案だったが、実際に運営してみると一体化して多店舗展開するほどのメリットはなかった模様だ。

実験的なコラボ企画に果敢に挑み、外食とのコラボのように上手くいかないようなら止めて、別の組み合わせを探す。そういったトライ&エラーから一体型の最適解が見つかるだろう。

ファミマ以外のチェーンとの温度差

他業種とのコラボ店は、他のチェーンではファミリーマートほどには熱心でないように見受けられる。差別化の方法論で大手3社の違いが出ている。

ローソンは異業種の買収にむしろ熱心だ。2010年12月にCDや書籍のHMVジャパン、14年8月にシネコンのユナイテッド・シネマ、14年10月に高級スーパーの成城石井をそれぞれ傘下に収めて、グループ化によりシナジー効果を狙っている。

また、美と健康に焦点を当てた「ナチュラルローソン」、100円均一「ローソンストア100」と、地域特性に合わせた姉妹ブランドを開発して、立地によって使い分けている点でも路線の違いが見える。

ただし、ドラッグストアとのコラボ店舗には執心で、業界2位のツルハと業務提携して、店舗を出し始めているが、17年12月18日の日本経済新聞の報道によると、仙台市若林区と東京都杉並区に出店している店舗が軌道に乗ったため、今後3年間で関東に100店を出店する計画という。

ローソンは2003年より調剤薬局併設型を開発し、10年8月により本格的に取り組むため調剤薬局のクオール薬局と提携して、東京都港区に「ナチュラルローソン城山トラストタワー店」を出店。その後、35店ほどにまで増えている。

美と健康は、ローソンが取り組むテーマの1つで、ドラッグストアーや調剤薬局との併設型店舗は、結果的にファミリーマートと被っているが、位置づけが異なっている。

一方でセブンイレブンは、17年4月にセイノーホールディングと提携して高齢者など買物に出掛けるのが困難な人を対象に宅配サービスの強化を打ち出した。

また、シェア自転車に熱心で、17年2月にドコモ・バイクシェアと組んで「bike share」、17年11月にソフトバンクグループと組んで「HELLO CYCLING」を展開しており、首都圏から順次拡大中だ。

セブンイレブンの場合は、異業種との一体型店舗をつくるよりも、既存の店の機能強化、集客力向上のために、コラボを行っている。

苦戦するコンビニ業界がつかんだ「成長ビジネス」とのコラボ

コンビニの店舗数は全国で56000店を超えており、そろそろ飽和点に達するのではないかと言われている。ファミリーマートの今期に入ってからの既存店日商は3月こそ1.2%増と前年を上回ったが、4月〜6月で前年を割っており、苦戦している。既存店客数は3月〜6月ともに減っている。

「レジャー白書2017」によるとフィットネスクラブ市場は、過去最高の4480億円(前年比2.1%増)と好調で既存店の売上も堅調という。

ドンキホーテホールディングスの17年6月期の売上高は8287億9800万円(前年同期比9.1%増)となっており、今年はそれをも上回る過去最高の業績となる見込みだ。

厚生労働省の発表によれば、全国のコインランドリーの数は1996年の9206店が2014年には1万6693店に達している。そろそろ2万店を超えると推計される成長ビジネスだ。

ファミリーマートはフィットネス、ドン・キホーテ、コインランドリーなどといった成長ビジネスとコラボすることで、競合他社ばかりでなく自社のカニバリズムを避けて既存店の売上を増やそうとしている。

「様々な一体型店舗の効果を検証し、広げられるものは全国に広げたい」(前出・篠崎氏)としており、一店一店の中身を磨き、質の追求で難局を打破する目標を立てている。

全国どの店も似ていたコンビニが、チェーンの独自性、さらには一店一店の個性を主張し始めている。ファミリーマートの取り組む異業種コラボ店は、そうした流れの先端に位置づけられよう。

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