宮原知子、坂本花織【写真:Getty Images】

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女子フリー前日練習、金メダル争いのザギトワ&メドベは万全

 平昌五輪のフィギュアスケート女子フリーは23日、百花繚乱の美しきスケーターたちが自慢のプログラムを披露し合い、五輪メダル獲得に向けて競い合いを繰り広げる。運命の日を迎える前日の22日、メインリンクでは公式練習が行われた。

 最終グループに残った6人は21日のショートプログラム(SP)で全員が70点台以上をマーク。そのうちのトップ2人のロシア出身の五輪選手(OAR)として出場している15歳のアリーナ・ザギトワと18歳のエフゲニア・メドベージェワは80点台をたたき出した。演技順で先に滑ったメドベージェワは自身が持っていた歴代世界最高得点を更新する81.61点を出した20分後、同門の妹分であるザギトワが歴代世界最高得点を塗り替える82.92点をマークしてみせた。

 驚異的な高得点をそれぞれが出し合い、金メダル争いの行方はザギトワとメドベージェワがに絞られたと言っても過言ではないだろう。2人の点差はわずか1.31点。この日の公式練習をみるかぎりでは、どちらもおそらくほぼジャンプの失敗はしないはずだ。なぜなら、まったく隙がなく、安定感抜群のジャンプを両者ともバンバン跳んでいた。

 世界選手権2連覇中のメドベージェワは、ジャンプ構成で勝るザギトワに負けじと、3回転フリップ―3回転ループの高難度連続ジャンプを跳んでいたほか、3回転の3連続ジャンプや圧倒的なジャンプ技術を練習からジャッジに猛アピールしていた。曲かけのときは3回転ループをのぞく、4本の3回転ジャンプに3回転トーループをつけて連続ジャンプを跳んでみせた。昨年11月に発症した右足中足骨の骨折から1月の欧州選手権で復帰した世界女王は、表現力に磨きを増してきているようで、SP2位からの逆転金メダルに向けて気合のこもった練習をしていた。

坂本は気負いなく自然体…曲かけもほぼノーミス、コーチと映像で修正箇所を確認

 一方、SP首位のザギトワは気負った様子も見せず、練習開始早々から、3回転をポンポン跳んでみせるなど、調子の良さを見せていた。普段からあまり感情を表に出さないという15歳は、若さを存分に生かしたプログラム構成で、7つのジャンプを基礎点で1.1倍がつく後半に組み込んでおり、さらには最高難度の3回転ルッツ―3回転ループを跳んでくる。この日の曲かけでは、その武器の2つ目のループがオーバーターンするミスを見せたが、それ以外は完璧なジャンプを披露していた。

 いずれにしても、このロシアの2選手が金メダルを争い、その戦いに敗れた者が銀メダルを手にする公算が大きいだろう。

 そして、表彰台の最後の一角に立つのは、SP3位のケイトリン・オズモンド(カナダ)、同4位の宮原知子、同5位の坂本花織、同6位のカロリーナ・コストナー(イタリア)の4人での争いになるか。

 一歩リードしているのは、SPで78.87点をマークしたオズモンドだが、フリーは苦手にしている面もあり、失敗することも多い。この日の公式練習でも、ジャンプにやや安定感を欠いていたのが気になった。ただ、フリー本番で勢いのある完璧な演技を見せたら、追いかける日本勢は太刀打ちできない可能性もある。

 日本勢の中で、SPから終始リラックスした表情で練習中も試合中も笑顔をのぞかせ、自然体で大会を楽しんでいる様子が伺える坂本は、フリーの曲かけでもほぼノーミスの演技を見せていた。演技後は、中野コーチらと映像をじっくりとみて修正箇所をチェックする姿もあった。初出場の五輪舞台に気後れした感じもなく、いつもの試合と同じような雰囲気を出しているが、本番で坂本本来の勢いあるダイナミックな演技を披露してみせたら、大逆転劇となる銅メダルをつかみ取れるかもしれない。

宮原はジャンプを制限して集中…得点源の3回転ルッツ―3回転トーループ成功

 また、もう一人忘れてはならないのが、全日本女王の宮原だ。五輪前哨戦の四大陸選手権でジャンプの回転不足をことごとく取られて、大きな課題を突きつけられたが、五輪団体戦でのジャッジの判断を見極め、課題克服にしっかり対応してきた成果を出して、SPではクリーンなプログラムを滑って出来栄え点(GOE)の加点も得るジャンプを跳んでみせた。

 この日の公式練習でも、ジャンプは本数を制限して集中して跳んでいたが、時折、悪いクセの力みが出て、転倒したり回転が足りなかったりするなど、ややジャンプに不安材料が残っていたようだ。それでも、得点源の3回転ルッツ―3回転トーループは成功させており、大きな演技で「蝶々夫人」の世界観をしっかりと表現していた。23日の本番では、力まず、ジャンプを高く、そして思い切って跳んでほしい。そうすれば、回転不足も取られず、ここ最近ミスが続いている3回転サルコーも跳べるはずだからだ。「ミス・パーフェクト」が本領を発揮した暁には、五輪のメダルを手に入れることができる可能性が広がるだけに、何が何でもノーミス演技を見せてもらいたい。

 この日朝の公式練習には、ベテランのコストナーは姿を見せなかったが、表現力を武器にソチ五輪銅メダルに続く、2大会連続のメダル獲得を虎視眈々と狙っているだろう。(辛仁夏 / Synn Yinha)