「育児休業が取りやすい会社」ランキング・トップ10

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子育て支援に本腰を入れている会社かどうか、育児休業の取得者数から読み取る (写真:チータン / PIXTA)

子育て支援に力を入れている企業はどこなのか――。

募集情報や説明会、エントリーなどが始まる、3月1日の採用活動の解禁が近づいてきた。就活生にとっては、これまで参加してきたインターンシップや自己分析に加え、志望業種をいくつか定めて、企業に関する情報を少しでも多くインプットしておきたいところだ。

特に自分が重視したいデータは、時間のある今のうちに、じっくり調べておきたい。たとえば、女子学生が注目する指標の1つといわれている、「育児休業」に関するデータ。将来、育児休業が取得できる職場かどうかは、就職先選びの重要ポイントになっている。

データで子育てに配慮する会社か読み取る


そこで今回、『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2018年版のデータを使い、2016年度に育児休業取得者が多かった企業をランキング形式でまとめた。女性の取得状況を中心に、大手企業の取り組みを紹介する。

ランキングには育児休業取得者の比較対象として、30代従業員数(全体の合計人数および女性の人数)も掲載した。取得者と対比する参考数値として使っていただきたい。ただし、持ち株会社の人数や傘下企業の合計値など、基準が異なるケースもあることを断っておきたい。

ランキングを見ていこう。取得者が最も多かったのは、三菱UFJフィナンシャル・グループの2640人で、うち女性取得は2085人にのぼっている。人数は三菱東京UFJ銀行や三菱UFJ信託銀行などとの合算取得者となっている。

同社は産休が産前26週間、産後8週間となっている。法定の産前6週間より20週も多く、出産予定日の半年前から休める計算になる。また、安心して職場に戻れるように、対象者全員の休職前・復職後の研修、部店長との面談も実施。休職中の過ごし方・復職後の働き方を考える機会を提供している。

さらに、「早期復職託児補助制度」によって高額になりがちな保育費用を補助し、早期の復職者の支援も行う。男性も短期間の取得率100%を目標に設定して取り組みを進めている。

2位は日本生命保険の1997人(うち女性1681人)。最長の育児休業期間は2年6カ月となっている。一般的に対象者が多いと考えられる30代女性社員は1万2854人で、育児休業取得者がすべてこの世代として計算すると、比率は13.1%。8人に1人が育児休業で職場を離れている計算になる。

日本生命の男性育休取得率は4年連続100%!

このように入れ替わりが多いと、スムーズな職場復帰ができなければ、職場全体の戦力は落ちてしまう。そこで短時間勤務やフレックスタイム、育児サービス費用の補助、病児保育機関との業務提携など、幅広い支援制度を用意し、育児と仕事の両立を応援している。

同社の取得率は、女性だけでなく、男性も100%だ。「男性職員の育児休業を7日程度取得」を目標に掲げ、2013年504人、2014年264人、2015年340人、2016年316人と4年連続で男性100%取得を達成した。育児休業開始から7日間の休業期間に対応する賃金を支給したり、男性の育児参加を促すことを目的とした「イクメンハンドブック」を作成したりと、さまざまな取り組みを行っている。

3位は日本電信電話(NTT東日本・西日本など主要グループ8社のデータ)で1749人。うち女性は1677人。育児休業は生後満3歳まで可能。さらに、産休・育休中に自宅から社内のサーバーへアクセスできるなど、会社との一体感が継続できるよう配慮している。休職前後に、上司やダイバーシティ推進室との面談やキャリア形成研修も実施して、スムーズな職場復帰を後押ししている。

また、育児のための短時間勤務制度や、始終業時刻の繰り上げ・繰り下げは小学校3年生の年度末まで利用可能にするなど、家庭とのバランスを取りながら勤務できる体制を築いている。

4位は第一生命保険ホールディングスで、取得者数は1261人(うち女性が1152 人)。取得率も93.3 %と高い。妊娠中および、出産後1年以内の女性社員が体調不良や健康診査などの通院が必要な場合、1カ月につき5日の「マタニティ休暇」を認めている。さらに、小学校就学前までの子どもが負傷・病気の場合、1年度内に12日まで取得可能。男性職員向けに、配偶者のサポートや子育てトレーニングのための育児休業取得を推奨する、「パパトレーニング育児休業」といった取り組みも進めている。

5位はみずほフィナンシャルグループの1237人(女性967人)。上司による休業前・休業中・復職前・復職後面談の実施や、自宅で学習可能なeラーニング講座の提供などを実施。また、都内2施設での事業所内保育所の運営や保育料補助などを行っており、早期の職場復帰を支える制度も充実させている。

男性の取得率は非開示がほとんど

以下、6位三井住友フィナンシャルグループ1183人(女性851人)、7位明治安田生命保険1070人(同941人)、8位日立製作所1016人(未回答でCSR報告書等からの情報、同664人)、9位東京海上ホールディングス994人(同829人)、10位JR西日本888人(同723人)と続く。

この上位10社のうち、銀行・生保といった金融機関は7社。女性従業員が多い職場ということもあるが、中堅の貴重な働き手として「子育てママ」が不可欠な存在になっているようだ。

さて、「人数」だけでなく、「取得率」のランキングが見たいという人もいるかもしれない。ただ現状では、取得率の開示が多数派とは言えない。今回の上位でも、取得率は未回答のケースも多い。特に、男性の取得率を把握している企業はあまりなく、男女計の取得率も多くが非開示だ。一方、女性の場合、回答がある企業は、100%というケースが多い。そのためランキングにすると100%が200社以上並ぶという結果になってしまう。

このように取得率をランキングにしにくいという事情がある。が、そうしたなかでも男性取得率の開示は少しずつ増えているので、あと何年かすると、取得率のランキングをきちんと作成できるようになるかもしれない。

こうしたデータをインプットして、説明会など会社からの話を聞けば、理解がより進みやすくなるだろう。時間があるうちに、できるだけ情報収集しておけば、就職活動もうまく進められる。このように『CSR企業総覧』を便利なツールとして活用してほしい。