市中に出回る製品の約9割が中国製と言われている北朝鮮。

そんな現状に危機感を抱いた金正恩党委員長は、2015年の新年の辞で、「すべての工場、企業所が輸入病(何でもかんでも輸入に頼る傾向)をなくし原料、資材、設備の国産化を実現するための闘争を力強く繰り広げ、党の掲げた典型単位に学び自らの姿を一新させねばなりません」と、輸入依存から抜け出すことを強く訴えている。

それに呼応して、国内の各メディアも「輸入病打破キャンペーン」を繰り広げた。ところが、状況は改善するどころか、むしろ悪化し、国内産業に悪影響を与えている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

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咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は「自力更生、国産品愛用は美辞麗句に過ぎない」とし、外貨稼ぎ機関が無差別に商品を輸入していることを嘆いた。

金正恩政権成立後、雨後の竹の子のようにできた外貨稼ぎ機関は、中国から食料品や生活必需品を輸入するようになった。それが、まだ脆弱な北朝鮮国内の家内制手工業を圧迫しているというのだ。

北朝鮮ではこの間、多くの人が自宅で家具、自転車のタイヤ、タバコ、食品などを製造して販売していた。また、農民は個人耕作地で葉タバコ、ニンニク、キュウリ、トウガラシなどの商品作物を栽培、市場で販売して現金収入を得ていた。

ところが、外貨稼ぎ機関がありとあらゆる商品を中国から輸入するようになったことで、中国製品との競争に負けているというのだ。

外貨稼ぎ機関が国際社会の経済制裁により輸出ができなくなり、苦境に立たされたことが原因だ。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、対北朝鮮制裁が強化されたことで、輸出ができなくなった南江(ナムガン)貿易、大聖(テソン)貿易、大興(テフン)貿易、綾羅(ルンラ)貿易など各外貨稼ぎ機関は、中国から輸入した食料品を北朝鮮国内で外貨で販売し、利益を上げている。

トロピカルフルーツ、豚肉などの贅沢品、嗜好品ならまだしも、国内でも生産している白菜、大根、トウガラシの粉まで輸入するようになった。そのせいで国内産業が圧迫されているのだが、目先の外貨収入にとらわれた外貨稼ぎ機関は、産業の保護、育成などは全く考えないのだ。

情報筋は、「農産物を買い取るべきは中国からではなく国内の農民からだ。中国から輸入すべきは食糧問題の解決に役立つトウモロコシだ」として、無分別な輸入で国内産業が萎縮していることを嘆いた。

むちゃくちゃな輸入をする一方で、ご禁制の品を中国に密輸出することで活路を見出そうとしている者たちもいる。

中国の貿易商によると、外貨事情が苦しくなった軍や司法機関、グルになった密輸業者は、制裁で禁じられた海産物の密輸に乗り出している。

乾燥ナマコは1キロ150〜200ドル(約1万7000円〜2万2600円)、乾燥カエルは1キロ200元(約3640円)で輸出している。

また、両江道の情報筋によると、密輸品としては単価の高いアヘンが人気で、1キロ3000元(約5万1900円)で取引されている。1回の密輸で5キロから10キロが取引されるが、量も額も個人の手には負えないとして、国の機関の介入を示唆した。

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