浦和は興梠やR・シルバ(8番)の個人能力を生かしていた印象だ。(C)SOCCER DIGEST

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[J1リーグ24節]清水1-2浦和/8月27日(日)/アイスタ
 
 前半を1-0で折り返したところまでは、かなり清水の思惑通りに進んでいた。しかし、後半は浦和が徐々に底力を発揮し、清水は耐え切れなくなって2失点。浦和が逆転で3連勝を飾ったゲームは、打ち合いの末に3-3で引き分けた前半戦(5月20日/12節)とは、かなり内容や印象の異なる試合だった。
 
 その意味では、堀孝史監督の下で浦和がどのように変化したか、確認しやすいゲームでもある。今回は、その部分を清水側の視点から探っていこう。
 
 まず全体的な印象として清水の選手たちが感じたのは、浦和の戦い方が手堅くなったことだった。
 
「以前は、攻撃でサイドチェンジが多かったり、クサビからスルーパスとか、クサビからフリックというのが目立ちましたが、そのあたりは少し減ったと思います。そんなにリスクを冒して攻める感じでもなかったし、(ボールを失った時の)守備への切り替えのところは相当意識しているなと感じました」(竹内涼)
 
「前半戦で戦った時と比べて、リスク管理のところや守備に戻る速さは変わってましたね。前はリスク管理があまりできてなかったので、うちも3点取れましたけど、監督が代わってそこが改善されているのかなと感じました」(金子翔太)
 
 立ち上がりで目立ったのは、浦和が裏へのボールで揺さぶりをかけたこと。興梠慎三の動き出しの良さを生かしてスペースを狙い、それによって17分までに清水のセンターバックコンビに1枚ずつイエローカードを与えた。
 
 その後、清水は裏への対応を改善したが、最終ラインを高く保ちにくくなったことは否めない。このあたりは定石といえば定石だが、リスクを抑えながら主導権を握っていくためには有効だ。
 
 30分にCKから清水の注文通りに先制点を奪われたのは、浦和にとって計算外だったが、リードされたからといって無理して攻めにいく姿勢は見られなかった。丁寧にポゼッションしながら、機を見て縦パスを入れたり、サイドに対角線のボールを送ったりして押し込み、ジワジワとプレッシャーをかけていく。その際も、槙野智章や遠藤航が前線まで上がることは少なく、リスク管理は確実に維持して、清水のチャンスを潰していた。
 後半に入って、そのジワジワが徐々に効き始めてくる。
 
「浦和のフォーメーションで右に左に振られたなか、今日はみんなよく走っていたと思うし、それによって守れていたと思います。でも、だんだん体力を奪われて走れなくなってくると、押し込まれる時間が増えてきました」と清水のGK六反勇治は語る。
 
 そうなると生きてくるのは、浦和の個の力だ。ラファエル・シルバのドリブルや、興梠、武藤雄樹らの動き出しを、清水の選手たちが捕まえ切れなくなってきて、ゴールに迫られる場面が増えてくる。さらに、清水の中盤にスペースができて、浦和の持ち味であるワンタッチパスを多用した攻撃も増えていった。
 
 そして64分にCKの二次攻撃から遠藤が決めて同点。さらに70分には興梠とR・シルバの力で逆転ゴールを奪った。清水としては、全体が連動して我慢強く守れていた試合だったが、最終的に耐えきれなくなったという印象だった。
 
 ここまでは浦和の手堅さを強調したような文章になってしまったが、攻撃面での浦和の良さは残っている。清水の前線からの守備を担う金子も、「ひとつのコースを切っても、違うところから攻めて来るし、そのへんはうまいですね」と狙いを絞れなかったことを悔しがった。それがボール支配率で大きく上回れた一因でもある。
 
 浦和の攻撃面での変化としてこの試合で感じとれたのは、人数をかけてリスクを負った攻撃が減ったあたりだが、前線の個の力は上手く生かしていた。それが清水に対しては有効だったということだろう。
 
 ただ、今季初の3連敗となった清水にとっても、過去2試合に比べれば前向きな要素は多い戦いだった。角田の起用や、枝村匠馬とミッチェル・デュークの左右を入れ替えたことがプラスに作用し、内容は大きく改善。守備の隙も少なくなった。白崎凌兵が怪我から復帰したことも明るい材料で、9月中にはチアゴ・アウベスや鄭大世の復帰も期待されている。
 
 2週間後の甲府戦に向けて、どれだけ勝ちきれる力を整えられるかに注目したい。
 
取材・文:前島芳雄(スポーツライター)