金正恩氏

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北朝鮮から逃れて韓国入りする脱北者の数が減少している。その一方で、女性の割合が圧倒的に多くなっていることが明らかになった。北朝鮮の女性にとって、金正恩体制が生きづらい社会であることを示すものと言える。

虐待から逃げ出す女性

韓国の統一省は12日、今年1月から6月末までに韓国入りした脱北者が593人だったと発表した。前年同期の数字は749人であり、20.8%の減少となる。

過去には、2011年の2,706人から2012年の1,502人と急減したことがあった。その後、2015年の1,276人から2016年の1,414人と増加したが、今年に入ってまた減少傾向が表れている。

脱北者が減少した大きな原因は、金正恩党委員長が脱北行為を非常に警戒していることにある。しかしそれでも、脱北行為を完全に防ぐことはできない。

ただし、統一省の数字からは北朝鮮当局の措置に、ある効果が出ていることがわかる。また、アジアプレスによると、北朝鮮当局は、朝中国境の豆満江と鴨緑江沿いに既に設置していた鉄条網に高圧電流を流し始めたという。現地住民たちは「もう中国への越境は不可能だ」と嘆いているとのことだ。

今後しばらくは、脱北者数は減ることが予想される。その一方で、韓国入りした脱北者に占める女性の割合は増加している。今年1月から3月末までに韓国入りした脱北者278人のうち、女性は232人と83パーセントだったが、6月末までの割合となると85パーセントにもなる。

女性の割合が増加している背景には、北朝鮮社会で女性が深刻な人権侵害を受けている事実がある。北朝鮮は表向きは男女平等を謳っているが、たとえば朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内では、セクハラや性的暴力が常態化している。

(参考記事:北朝鮮女性を苦しめる「マダラス」と呼ばれる性上納行為

北朝鮮の権力者たちは「喜び組」に象徴されるように、女性を慰み者にするなどやりたい放題だ。この問題が深刻なのは、そもそも「人権」の概念すら教えられていない彼女らは、人権侵害に遭っても告発する言葉も手段もないことだ。

こうした社会から女性が逃げ出そうとするのは、至極当たり前のことだろう。また、男性に比べると女性たちは脱北に踏み切りやすいようだが、脱北したからといって彼女らの未来が明るいとも言えない現実もある。

人身売買で「転売」も

米国務省が先月27日に発表した世界各国の人身売買に関する2017年版の年次報告書によると、北朝鮮は、中国、イラン、ロシア、シリアなどとともに4段階の最低ランクに位置づけられた。

実は、脱北した女性のなかには、中国の男性に売られているケースが多い。人身売買の被害に遭った脱北女性の中には、単に「要らなくなった」という理由だけ「転売」される例も頻繁に起きている。

北朝鮮の女性らが脱北する原因をつくっているのは金正恩体制である。一方、人身売買においては、北朝鮮と中国のブローカーが暗躍している。つまり中朝は共犯関係とも言える。

北朝鮮と中国の二つの国において、人権を侵害されている脱北女性たちの現実はより広く知られるべき問題だ。